SSブログ

ダイエット飲料と2型糖尿病との関連性について [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
ダイエット飲料による糖尿病の増加.jpg
今月のEuropean Journal of Nutrition誌に掲載された、
カロリーはゼロの人工甘味飲料による、
2型糖尿病の発症リスクについての、
日本の研究者による論文です。

正直あまり精度の高い研究ではないのですが、
医療系のサイトなどに、
かなり重要な知見のように紹介されていたので、
一応お金を出してダウンロードして読んでみました。

結論的には、
読まなくても良かったかな、
というような内容でした。

清涼飲料水をよく飲む人は、
糖尿病になり易い、
というような報告はこれまでに多く存在します。

普通に考えても、
コーラやサイダーなどをがぶ飲みするような人は、
糖質を過剰に摂ることになりますから、
栄養バランスは崩れて体重は増え、
体質によっては糖尿病になり易いということは、
自明の理のようにも思えます。

ただ、
たとえば同じカロリーを摂っていても、
それが清涼飲料水由来かそうでないかで、
糖尿病のなり易さに違いがあるかどうか、
というような点になると、
疫学的にはそれほど明瞭な差は出ていないようです。

最近では人工甘味料を用いて、
甘さは感じてもカロリーはゼロか、
それに近いという飲み物が多く発売され、
「ダイエット飲料」のような言われ方をすることもあります。

それでは、
ゼロカロリーの水やお茶と、
ゼロカロリーのダイエット甘味飲料とは
全く同一に考えても良いのでしょうか?

この点については、
以前もブログで触れたことがありますが、
現時点で明確な結論が出ていません。

人工甘味料が甘みの受容体に結合し、
その刺激でインスリンの分泌が促される、
という報告が幾つかあり、
これによりダイエット飲料を使用すると、
高インスリン血症により空腹感が増強され、
それが結果として過食に結び付く、
という考え方もありますし、
高インスリン血症そのものが、
糖尿病の発症に結び付くのでは、
というような仮説もあります。

ただし、
これまでに明確にダイエット飲料が糖尿病の発症に結び付く、
というようなことを証明した、
疫学データは殆どありません。
その傾向が認められる、というものや、
そうした傾向はなかった、
というものなど様々です。

今回の文献においては、
ある企業の健診のデータと、
食生活等へのアンケートのデータとを利用して、
日本人の中年男性における、
清涼飲料水やダイエット飲料の利用習慣と、
その後の糖尿病の発症との関連性を検証しています。

何となくこれだけで、
お分かりの方はお分かりのように、
このデータを元に主に糖尿病関連の、
引用されているだけで4編の論文が発表されていて、
同じデータから、
少しずつ解析の仕方を変えて、
幾つもの結果が発表されているのです。

対象となっているのは、
1つの企業の健診データで、
登録の時点で35歳~55歳の男性社員2037名を、
7年間に渡り経過観察をしています。
登録時点で糖尿病の診断基準を満たす方は除外されていて、
その中で7年間に170名の方が、
糖尿病との診断を受けています。
全体を4つの群に分けたデータでは、
年間1000人当たり、
12~17名程度の方が糖尿病を発症している、
ということになっていますから、
かなり比率的には高いように思います。

この2037名を所謂清涼飲料水の利用回数で区分けして、
その区分毎の糖尿病の発症率を比較すると、
毎日1回は利用している人は、
そうでない人と比較して、
糖尿病の発症率には統計的に有意な差はありませんでした。

一方で人工甘味料を用いたダイエット飲料で、
同じような比較を行なうと、
ダイエット飲料の使用と糖尿病の発症リスクとの間には、
有意な相関があり、
体格や摂取カロリーなどで補正した後も、
殆ど摂らない群と比較して、
1週間に1回以上飲むが1日1回は飲まない群では、
その後の糖尿病の発症リスクが、
相対リスクで有意に1.7倍増加する、
と言う結果が得られました。

つまり、
清涼飲料水の習慣は糖尿病の発症とは無関係であるけれど、
ダイエット飲料の使用は一定の関連性があり、
その使用により糖尿病の発症リスクが、
日本人の中年男性では1.7倍程度増加する、
という結論です。

ただし…

この結果を勿論そのまま鵜呑みにすることは出来ません。

まず、
最もダイエット飲料の使用の多い、
1日1回以上使用群では、
それより少ない群より、
むしろそのリスクは減少しています。
つまり、
用量依存的な傾向はあまりないのです。

リスクの多かった群は、
週に1回は飲むけれど、
毎日は飲まないという人達で、
これは週に1回飲む人もいれば、
6回飲む人もいるのですから、
かなりの幅があり、
実際にこの群の人数が最も多くなっています。

つまり、群間の差が大き過ぎて、
比較するのには無理がある気がします。

そもそもこうした研究で2000人程度の人数というのは、
あまりに少ないという気がしますし、
特定の企業の社員のみである、
と言う点も、
ダイエット飲料と糖尿病との関連性を見る、
という研究としては偏りがあり過ぎるように思います。

逆に言えば、
この人数なので、
上記のようなレベルの雑誌に載っているのです。

こうした検討に一定の信頼性を持たせるには、
この10倍くらいの人数は、
最低限必要なのではないかと思います。

従って、
現時点ではこの結果は、
「ダイエット飲料の飲み過ぎも、
健康を害する可能性がある」
くらいに捉えて頂くのが、
妥当なように思います。

ダイエット飲料の弊害の有無については、
まだ不明だというのがおしなべて真実ではないでしょうか。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(27)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 27

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0