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グルタミンのストレス時の生命予後への効果について [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は石原が整形外科受診のため、
午後の診察は3時半で受付終了とさせて頂きます。
ご迷惑をお掛けしますが、
ご了承下さい。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
グルタミン酸の効果論文.jpg
今月のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
グルタミンと抗酸化剤の、
重症なストレス状態の患者さんに対する、
効果についての論文です。
厳密な試験により、
予想外の結果が出たために注目されているものです。

グルタミンはアミノ酸の1つで、
主に筋肉で合成される、
身体で合成可能なアミノ酸の中では、
最も量の多いものです。

このグルタミンは、
身体において、
ストレスで誘導される蛋白質や抗酸化物質を、
刺激する作用があるとされ、
身体的なストレス状態で減少することから、
ストレス状態で必須の物質ではないか、
という考え方があります。

そのため、
重症感染症などのストレス時に、
不足するグルタミンを補充することにより、
患者さんの予後が改善するのでは、
という推測から、
そうした臨床試験が行われ、
2002年には複数の試験を解析した、
メタアナリシスの結果が論文化され、
一定の効果が得られた、という内容になっています。

しかし、
個々の試験の精度はそれほど高いものではなく、
より厳密な試験で
グルタミンの臨床的な効果を、
確認する必要性が指摘されていました。

今回の研究はその厳密な検証を意図したものです。

患者さんは世界中の40か所の医療施設で、
多臓器不全を来して人工呼吸器による管理を受けていた、
重症の集中治療室の患者さん1223名で、
この患者さんを、
グルタミンを使用する群と、
セレニウム、βカロチン、亜鉛などの抗酸化剤をミックスで使用する群、
グルタミンと抗酸化剤を一緒に使用する群、
偽薬のみを使用する群の4群にくじ引きで分け、
集中治療室入室後24時間以内に投与を開始して、
その後の患者さんの経過を観察しました。

その結果…

抗酸化剤の使用は、
投与開始後4週間後においても半年後においても、
未使用に比較して明瞭な生命予後への影響を、
与えませんでしたが、
グルタミンの使用は、
投与開始後4週で、
既に死亡率の上昇する傾向を示し、
使用後半年では、
絶対リスクで6.5%有意な死亡リスクの上昇を呈しました。

つまり、
重症の患者さんにグルタミンを使用すると、
生命予後は悪化する、
というビックリするような結果です。

今回の試験の厳密性とその例数から考えて、
少なくとも重症の患者さんへのグルタミンの使用は、
現時点では患者さんにメリットはない、
と考えた方が良さそうです。

何故こうした結果になったのかは、
現時点では明瞭ではありませんが、
重症ストレス時のグルタミンの減少は、
一種のストレスへの代償機転で、
それを補正することが却って身体に負担を掛けることになる、
という推定や、
グルタミンの使用のタイミングが、
適切ではなかった可能性などが考えられます。

抗酸化剤やそうした作用の期待される物質の使用は、
如何にも身体にメリットがありそうですが、
ビタミンEも過剰になると却って患者さんの予後に、
悪影響を与える、
というようなデータもあるように、
その使用にはより慎重な姿勢が、
必要であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

(補足)
コメントでご指摘を受け、
グルタミン酸→グルタミンに改めました。
(2013年4月25日午前8時55分修正)
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コメント 2

加藤

こんにちは。
上記の説明はグルタミン酸ではなく、グルタミンではないでしょうか?
グルタミンはサプリで摂ってるので控えめに行こうかと思います。有り難うございます。
by 加藤 (2013-04-25 08:40) 

fujiki

加藤さんへ
ご指摘ありがとうございます。
初歩的なミスで恥ずかしいです。
取り急ぎ直しました。
これからもよろしくお願いします。
by fujiki (2013-04-25 08:56) 

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