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甲状腺結節の数と癌の発症との関連性について [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
甲状腺多発結節と単純結節の差.jpg
今月のThyroid誌に掲載された、
甲状腺の結節の数と、
それが甲状腺癌である確率についての文献です。

小ネタのようなものですが、
身近な話題の割に、
意外にしっかりとしたデータのない分野です。

甲状腺には腺腫様甲状腺腫というものがあり、
これは嚢胞や充実性の結節などが、
甲状腺全体に多発するような病態のことです。

その一方で甲状腺に、
たった1個のしこりが見付かることもあります。

このように、
甲状腺にしこりが1つある場合と、
多数ある場合とで、
甲状腺癌の発症率には、
違いがあるのでしょうか?

実際には2ミリの結節でも、
癌は元から癌である可能性が高い訳です。

しかし、
2ミリの結節がそのまま大きくならず、
そのままの状態であれば、
それは臨床的には癌と診断はされません。

つまり、
この場合の甲状腺癌の発症率というのは、
臨床的な癌が見付かる確率、
という意味合いです。

一般の方は、
しこりが1つあります、
と言われるより、
しこりが幾つもあります、
と言われる方が余計に心配になります。

しかし、
現行のガイドラインは、
結節が1つでも複数でも、
甲状腺癌のリスクには差がないものとして、
経過観察の方針を定めています。

そして、
これまでに発表された疫学データの中にも、
多発性の結節は癌のリスクが高い、
という内容のものがある一方で、
むしろリスクは低い、
とする正反対の内容のものもあります。

そこで上記の文献の著者らは、
これまでの文献をまとめて解析し、
結節の数と甲状腺癌の発症リスクとの関連性を、
メタ解析と呼ばれる手法で検証しました。

その結果…

信頼性のおけるデータは意外に少なく、
多くの研究は何らかのバイアスが掛かっているのですが、
トータルに見ると、
多発結節がある患者さんは、
単発の結節のある患者さんと比較して、
甲状腺癌の発症リスクは2割の減少を示しました。
この傾向はアメリカ以外の地域では、
3割の減少とよりリスクが低い傾向にあり、
ヨードの欠乏との関連性が示唆されました。

つまり、
ヨード欠乏地域では、
多発結節が生じ易いけれど、
臨床的な癌の発症自体は少ないのではないか、
という結果です。

ただ、今回のデータには、
日本のものは含まれていません。

単純に甲状腺の結節の数で、
その癌のリスクを云々することは現時点では出来ませんが、
複数の結節が生じるような病態と、
甲状腺癌の増加が関連している、
ということは考え難く、
現時点では個々の結節の大きさや性質から、
癌のリスクを個別に考えるのが、
妥当なように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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