アメリカにおける尊厳死の現況について [医療のトピック]
こんにちは。
六号通り診療所の石原です。
朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今月のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
アメリカにおける尊厳死の現況についての文献です。
幾つかのメディアで報道もされています。
尊厳死(Death with Dignity)というのは、
死が迫っていることが明確で、
その死を回避する手段が存在しない場合に、
自分の判断で「人間らしい死」を選択する、
というあり方のことです。
具体的には癌が進行して、
余命が数ヵ月という宣告がなされ、
治療法が存在しないような場合に、
延命治療を拒否するなど、
自分の死のあり方を選択することです。
この点でもう一歩踏み込んだ考え方は、
医療者の介助による死(physician-assisted death)
すなわち、
医者が死の手助けをする、
というあり方です。
積極的安楽死という言葉が、
このニュアンスに近いかも知れません。
アメリカでは1994年に、
オレゴン州で尊厳死法が制定され、
2009年にはワシントン州で同様の法律が制定されています。
今のところアメリカで尊厳死法があるのは、
この2つの州のみですが、
今後合衆国全土に拡大する可能性が高い、
と考えられています。
この法律により、
医者が尊厳死の手助けをすることが、
法的に容認されました。
具体的には致死量の薬の処方が認められ、
それを「死の薬」として、
医者が患者さんに処方します。
今回上記の文献でまとめられているのは、
ワシントン州にある外来の癌治療施設で、
余命6ヶ月以内と診断された患者さんで、
医師の介助による尊厳死を望む方に、
致死量の薬剤を飲み薬で処方し、
その使用は患者さん個々の判断に任せる、
という方法を行ない、
2009年~2011年に40名が処方を受け、
そのうちの24名がその使用により死を選んだ、
という報告です。
使用された薬剤はセコバルビタールで、
これはバルビツール酸と呼ばれる、
麻酔剤の一種です。
この目的への州全体としての使用頻度は、
ペントバルビタールの方が、
より多く使用されているようです。
薬剤の服用後平均33分で患者さんは亡くなっています。
処方を受けた40名の患者さんは、
全員亡くなっているのですが、
処方薬を飲むことを選択したのは、
そのうちの24名です。
結果として薬による死を選んだ24名のうち、
13名はホスピスに入所中にその決断をして、
しかし、多くの方は家に戻っての死を選んでいます。
この24名は1つの施設の患者さんですが、
文献に付された表によれば、
1998年から2012年までに、
オレゴン州では935名の患者さんがこうした尊厳死を選び、
ワシントン州でも判明しているだけで、
255名の患者さんがこうした死を選択しています。
(公式なデータはワシントン州では公表されていないようです)
段取りはそれなりに慎重に決められていて、
最終的に薬を使うかどうかの判断も、
本人に委ねられているのですから、
それなりに理屈は通っているのですが、
何となくお尻がムズムズするような、
落ち着かない気分になることも事実です。
日本ではこうした処方は採用はされないと思いますが、
色々な意味で尊厳死や安楽死の問題は、
特殊な方面に進歩した医療と人間性との狭間で、
何らかの法制化は避けられない問題だと思いますので、
アメリカの現状を理解することも、
重要なことのように思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
六号通り診療所の石原です。
朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今月のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
アメリカにおける尊厳死の現況についての文献です。
幾つかのメディアで報道もされています。
尊厳死(Death with Dignity)というのは、
死が迫っていることが明確で、
その死を回避する手段が存在しない場合に、
自分の判断で「人間らしい死」を選択する、
というあり方のことです。
具体的には癌が進行して、
余命が数ヵ月という宣告がなされ、
治療法が存在しないような場合に、
延命治療を拒否するなど、
自分の死のあり方を選択することです。
この点でもう一歩踏み込んだ考え方は、
医療者の介助による死(physician-assisted death)
すなわち、
医者が死の手助けをする、
というあり方です。
積極的安楽死という言葉が、
このニュアンスに近いかも知れません。
アメリカでは1994年に、
オレゴン州で尊厳死法が制定され、
2009年にはワシントン州で同様の法律が制定されています。
今のところアメリカで尊厳死法があるのは、
この2つの州のみですが、
今後合衆国全土に拡大する可能性が高い、
と考えられています。
この法律により、
医者が尊厳死の手助けをすることが、
法的に容認されました。
具体的には致死量の薬の処方が認められ、
それを「死の薬」として、
医者が患者さんに処方します。
今回上記の文献でまとめられているのは、
ワシントン州にある外来の癌治療施設で、
余命6ヶ月以内と診断された患者さんで、
医師の介助による尊厳死を望む方に、
致死量の薬剤を飲み薬で処方し、
その使用は患者さん個々の判断に任せる、
という方法を行ない、
2009年~2011年に40名が処方を受け、
そのうちの24名がその使用により死を選んだ、
という報告です。
使用された薬剤はセコバルビタールで、
これはバルビツール酸と呼ばれる、
麻酔剤の一種です。
この目的への州全体としての使用頻度は、
ペントバルビタールの方が、
より多く使用されているようです。
薬剤の服用後平均33分で患者さんは亡くなっています。
処方を受けた40名の患者さんは、
全員亡くなっているのですが、
処方薬を飲むことを選択したのは、
そのうちの24名です。
結果として薬による死を選んだ24名のうち、
13名はホスピスに入所中にその決断をして、
しかし、多くの方は家に戻っての死を選んでいます。
この24名は1つの施設の患者さんですが、
文献に付された表によれば、
1998年から2012年までに、
オレゴン州では935名の患者さんがこうした尊厳死を選び、
ワシントン州でも判明しているだけで、
255名の患者さんがこうした死を選択しています。
(公式なデータはワシントン州では公表されていないようです)
段取りはそれなりに慎重に決められていて、
最終的に薬を使うかどうかの判断も、
本人に委ねられているのですから、
それなりに理屈は通っているのですが、
何となくお尻がムズムズするような、
落ち着かない気分になることも事実です。
日本ではこうした処方は採用はされないと思いますが、
色々な意味で尊厳死や安楽死の問題は、
特殊な方面に進歩した医療と人間性との狭間で、
何らかの法制化は避けられない問題だと思いますので、
アメリカの現状を理解することも、
重要なことのように思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2013-04-15 08:09
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米国2州での現状は、概略わかりました。
もっとも気になるところは、
どのような理由で、このような「死に方」が認められたのでしょうか。
その点が明らかになれば、自分にとってはどうかと、
踏み込んで考えることができます。
良い悪いの評価ではなく、自分ならどう考えるか、と。
生き死には、畢竟、個人の問題だと考えます。
by 石原 (2013-04-15 09:23)
石原さんへ
コメントありがとうございます。
矢張り延命治療などの医療の変容が、
大きな要因であったのではないかと思います。
法案の経緯については、
多くのサイトなどにも、
考察が書かれているようですので、
ご参照を頂ければと思います。
by fujiki (2013-04-16 08:07)