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肉食は寿命を縮めるのか? [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
肉食と死亡リスク.jpg
今年のBMC Medicine誌に掲載された、
肉食とその弊害についての疫学データの文献です。

動物の肉は人間の蛋白源として、
重要な役割を占めていて、
多くの人が好む食品でもあります。

その一方で菜食主義者という方がいらっしゃるように、
肉食を好まない人もいます。

肉食が特に摂り過ぎた場合、
健康にとって害があるのではないか、
という考え方は以前からあり、
糖尿病や心筋梗塞、一部の癌の発症率を増加させる、
というようなデータが報告されています。

ただ、
そのリスクの上昇は、
概ね軽度なものに留まっていましたし、
肉は蛋白質ばかりではなく、
脂肪も豊富に含まれていますから、
この現象は高脂肪食の弊害として、
考えることも出来るのです。

2009年にアメリカで、
43000人弱の男性と23000人余の女性を、
10年間観察した大規模な疫学データが発表されました。

それによると、
赤身肉(牛肉や羊肉など)を多く食べている人は、
少ない人と比較して、
総死亡のリスクが1.31倍に上昇し、
ソーセージのような加工肉を多く食べている人は、
1.36倍に上昇した、
という結果でした。

癌による死亡リスクや心筋梗塞の死亡リスクについても、
概ね同様の傾向が認められました。

更に昨年のArch Intern Med.誌にも、
ハーバード大学の研究チームによる、
同様の研究が発表されています。
これは男性と女性の2つの疫学研究のデータを、
併せて解析したもので、
トータルな人数は男性が37000人余で、
女性が83000人余です。

1日1回赤身の肉を食べることにより、
総死亡のリスクが1.13倍に上昇し、
ソーセージなどの加工肉を1回食べることにより、
1.2倍に上昇するという、
解析方法は違うので、
同列での比較は難しいのですが、
同様の傾向が認められています。
心筋梗塞や脳卒中の死亡リスクや、
癌の死亡リスクについても、
そのリスク上昇は僅かですが、
同様の傾向は認められています。

ここまではアメリカの結果です。

日本のデータは2012年のEur J Clin Nutr 誌に掲載されています。

これは51000人余の日本人のデータを解析したものですが、
これによると日本人においては、
1日平均で100グラム程度までの肉食での、
死亡リスクの上昇は認められない、
という結果でした。

今回のデータは今度はヨーロッパのもので、
トータルな人数は45万人弱ですから、
間違いなくこれまでで最も規模の大きなものです。

その結果、
赤身の肉を1日平均で160グラム以上多く摂る人は、
殆ど摂らない人と比較して、
総死亡リスクが1.14倍上昇していました。
この赤身肉は加工肉を併せたものですが、
これをソーセージのような加工肉のみで解析すると、
今度は総死亡リスクが1.44倍と、
より高い結果になり、
加工肉を除外した赤身肉では、
総死亡リスクの有意な上昇はありませんでした。

つまり今回のデータでは、
問題のあるのは加工肉であって、
肉そのものではない、
と言う結果になっています。

上記の文献の著者らの推論としては、
加工肉は赤身肉をそのまま使用した場合と比較して、
より動物性の脂肪を多く含んでいることと、
加工により発癌物質が発生し易いことなどが、
リスク上昇に繋がっている可能性が高いのでは、
という記載になっています。
アメリカのデータとの違いについては、
アメリカではより赤身肉の摂取量が多いので、
それによる違いではないか、
という考え方です。

こうしたデータは厳密性には欠けますし、
食生活には文化的な側面もあるので、
即座に公衆衛生的な指導や啓蒙に結び付けたり、
医療の介入に結び付けるのは、
慎重であるべきではないかと思います。

ただ、
おそらくは加工肉の方が、
通常の肉より色々な意味で健康上のリスクに、
繋がり易いことは確かなので、
ソーセージやサラミ、ベーコンなどの食べ過ぎには、
少し気を付けた方が良さそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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