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マリアンナ・ピッツォラート賛 [コロラトゥーラ]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は日曜日で診療所は休診です。

色々と考えることがあり、
これからのことを思うとブルーですが、
仕方がありません。

休みの日は趣味の話題です。

今日はこちら。
ピッツォラート.jpg
イタリアの若手のメゾソプラノ、
マリアンナ・ピッツォラートの初リサイタルが、
先日東京で行なわれました。

これは本当に素晴らしくて、
久しぶりに本物のアジリタを聴いた、
という気がしました。

ピッツォラートはシチリア生まれの若手のメゾで、
日本には2010年に、
ロッシーニの「タンクレディ」のゲストで来日し、
今回が初リサイタルになります。

2010年の藤原歌劇団の公演は聴いていません。

現在の得意なレパートリーは、
ヘンデルやヴィヴァルディのバロックオペラの、
主に当時はカストラーテが歌っていたパートや、
ロッシーニの諸役です。

今回のリサイタルでは、
前半でヘンデルやヴィヴァルディ、
グルックやモーツァルトを歌い、
後半では得意のロッシーニの難アリアを立て続けに披露し、
アンコールでもロッシーニのチェネレントラの大アリアを、
後半はちょっと端折ったと思いますが、
ほぼ全尺で披露する、
という充実したものでした。

ビジュアルはこのプログラムの写真では、
お分かりにならないと思いますが、
予想以上にふくよかで、
舞台でオペラを歌う姿を見るのは、
かなり厳しいかな、
という感じはしました。

ただ、もう少しだけ絞り込めれば、
ルーベンスの女神のような雰囲気はあり、
声は本物で、
歌への情感の入れ方も素晴らしいので、
リサイタルで聴いている分には、
違和感はありません。

17世紀か18世紀に、
演じられたオペラの舞台に、
そのままタイムスリップしたような趣さえありました。
ロッシーニやヘンデルが生きていて、
生で彼女の歌を聴いても、
決して悪い印象は持たないよね、
と信じられる感じがするのです。

現役のメゾの技巧派の名手と言えば、
バルトリやバルチェローナ、
ジュノーなどがいますが、
最近は滅多に来日してはくれません。

そんな訳で、
今回は本当に久しぶりに、
多分10年ぶりくらいに、
本物のアジリタを聴いた、
という思いがありました。

まあ、バルトリ御大などと比較すれば、
まだまだスケール感はないな、
という気はしますし、
ヘンデルのアリアの廻しなどは、
ジュノーの方が早いな、
というようには思いますが、
こうしたベテラン勢がやや誤魔化し歌唱に、
移りつつあることを思うと、
まだ若くおそらく一番声の出る時期にあるピッツォラートには、
技巧を越えた、
のびやかな声そのものの魅力があります。

後半のロッシーニの「セミラーミデ」のアリアで、
2オクターブくらいを一気に駆け登り、
駆け下るようなところがあるのですが、
彼女は低音部も高音部も、
しっかりと前に飛ぶ声が出せるので、
物凄く心地良い、
生理的な快感があります。

こういうところはベテランになると、
もうあまりしっかりは歌わないのです。

普通は胸に落ちてしまう低音が、
しっかり前に飛んで来るのは嬉しくなりますし、
高音はソプラノ並みに出て、
前半は通常は出さない高音を付加していました。

前に飛ぶ声で裏声ではなく、
広い音域を駆け抜けるのが、
クラシックの歌唱の醍醐味なのだと、
改めて思いました。

また是非リサイタルに来て欲しいな、
と思いますし、
もう少しだけ身体を絞り込んで、
ロッシーニやヘンデルの舞台に立つ姿も、
見たいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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コメント 6

Vermeer

こんばんは。

おぉ、お出掛けになったのですね。先生ならではの明快なレポートに、活き活きとしたコンサートの様子が窺えて、楽しませて頂きました。

ルーベンスの女神のような雰囲気⇒
言い得て妙です。

声は本物で、歌への情感の入れ方も素晴らしい⇒
藤原『タンクレディ』は見たのですが、ゼッダ御大の棒の下、やはりロッシーニ・メゾを聞く醍醐味に溢れていました。

現役のメゾの技巧派の名手、バルトリやバルチェローナ、ジュノー⇒
何年か前ドタキャンだったバルトリ、最近は欧米でもあまり動静の効かないジュノーはともかく、バルチェローナは年末のトリノ歌劇場ヴェルディ;レクィエムのソリストとして帯同する様です。

バルトリ御大などと比較すれば⇒
本当に百年に何人かの逸材とは思いますが、あまりにもマニエリスティック過ぎて、以前の様な滑らかさ・新鮮さが減じて、“がなり”が耳につくのが気がかりです。まだ来日はしていないと思いますが、ロシアのJulia Lezhneva という歌手を御存知でしょうか?まだ20代前半の若さですが、素晴らしい声・技巧の持ち主です。
by Vermeer (2013-03-10 20:45) 

fujiki

Vermeer さんへ
コメントありがとうございます。
ジュノーの話題は確かにあまり聞かないですね。
どうされたのでしょうか?
バルトリは法外な値段のリサイタルの時に聴きましたが、
さすがと思いました。
ただ、独特の節回しで、
お手本になるような歌ではないですね。
来日はほぼ絶望的なのが残念です。
バルチェローナの久しぶりの来日は嬉しいのですが、
レクイエムだけというのは、
ちょっと残念な気がします。
Lezhnevaのことは全然知りませんでした。
もし来日の情報がありましたら、
是非教えて下さい。
by fujiki (2013-03-11 08:37) 

Vermeer

度々お邪魔します。彼女は欧州でひっぱりだこの様子なので、残念ながら当分来日はしないでしょう。バロックの珍しいオペラの全曲録音に参加している他、最近Deccaレーベルからメジャー・デビューした所です。有名な“踊れ、喜べ、幸いなる魂よ”K165をメインに、ヴィヴァルディ、ヘンデル、ポルポーラのモテット集(いずれもアレルヤ入り)。若いのに音楽学的にも気概の感じられる選曲。Decca 4785242

ですが最初に刮目したのは一昨年リリースされたロッシーニのアリア集です。輝く真珠の連なりの様なテクニックに目眩を覚えました。一度お聞きになってみて下さい。 Naive V5221
by Vermeer (2013-03-11 19:45) 

fujiki

Vermeer さんへ
そうですか。
残念ですが仕方がないですね。
音は今度是非聴いてみます。
by fujiki (2013-03-12 08:15) 

Vermeer

こんばんは。

まだ随分と先のことですが、2015年2月ヴィヴァルディ 『メッセニアの神託』という珍しい作品(パスティッチョ)の公演に、V.ジュノーやJulia Lezhnevaが来日するかもしれません。アルチーナさんというコアなCTファンの方がブログで速報なさっています。

同月ロンドンのバービカンホールでも上演予定があり、そちらは既にウェブ上でキャストがアナウンスされています。神奈川県立音楽堂は、2006年2月にもファビオ・ビオンディ率いるエウローパ・ガランテでヴィヴァルディ『バヤゼット』を招聘した実績があります。
期待してしまいます。
by Vermeer (2014-02-04 18:47) 

fujiki

Vermeer さんへ
貴重な情報ありがとうございます。
「バヤゼット」は本当に素晴らしかったですね。
オペラではこれまでに生で聴いたベストかも知れません。
ただ、その後の県立音楽堂のバロック公演は、
今一つでした。
本当に楽しみです。
by fujiki (2014-02-05 08:36) 

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