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母乳栄養による貧血の話 [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日は母乳栄養と貧血の話です。

コメント欄でご質問を頂きましたので、
総説的な話をします。

母乳栄養が免疫系の発達など、
色々な面でメリットのあることは、
よく知られている事実です。
WHOも一定時期までの母乳栄養が、
感染症の重症化などを抑制するとして、
推奨しています。

ただ、1つ問題になるのは離乳の時期です。

概ね生後5~6ヶ月での離乳の開始が、
1つの目安として推奨されていて、
その1つの大きな理由が、
鉄欠乏性貧血の予防です。

鉄の足りないことによる貧血、
と言うと、
初潮以降の女性のイメージがありますが、
2歳以下の小児では、
鉄欠乏性貧血の発症は稀ではありません。
この貧血の原因の大きなものが、
離乳の遅れによる鉄の不足です。

新生児には、
その後4~5ヶ月全く鉄分を摂らなくても、
問題ないだけの鉄分のストックがあるとされています。

つまり、充分な鉄分の貯蓄を持って、
お子さんは生まれて来るのです。

母乳には概ね1リットル当たり、
0.5mg程度の鉄分が含まれています。
これは生後6ヶ月の間では、
特に問題のない量ですが、
それを過ぎると、
生まれて来た時の、
鉄分の貯金がなくなるので、
貧血のないように血液を維持するためには、
1日1mg程度の鉄分が必要となる、
と考えられています。

つまり、生後6ヶ月を過ぎて、
母乳のみの栄養を続けていると、
1日当たり0.5mgずつ鉄分が不足した状態が、
続いてしまう、
ということを意味しています。

そして実際に8ヵ月~1歳くらいの間に、
母乳栄養のみの状態を続けた結果、
高度の貧血を起こしたお子さんの事例が、
複数報告されています。

お子さんの貧血は重症にならなければ判別が困難なので、
通常は離乳は5~6ヶ月で開始するのが、
矢張り望ましいと思いますし、
特別の理由でその時期を超え、
母乳栄養のみの状態を継続するとすれば、
何らかの形で鉄分の補充は必要だと思います。
勿論これは断乳ではなく、
離乳の開始という意味合いです。

今日はお子さんの貧血と母乳栄養の話でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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ティンバーランド

はいけんさせていただきました。

by ティンバーランド (2011-11-26 15:01) 

ちばおハム

今日の記事より質問です。
5,6か月過ぎてからの離乳食を開始したとして、経口から0,5mgの鉄分を取ることは可能なのでしょうか。
その開始時期だと重湯程度を一口程度ですが、それでも鉄分の補給が可能なのでしょうか。

by ちばおハム (2011-11-26 16:32) 

fujiki

ちばおハムさんへ
出生直後のヘモグロビンは18くらいあり、
それが6ヶ月には11.5程度まで低下します。
2歳で12くらいに持ち直します。
つまり、一時的には貧血に傾き、
それが徐々に修正されるのだと思います。
母乳を推進される方の意見では、
母乳の鉄の吸収率は非常に高いので、
量が少なくとも帳尻は合う、
という意見もあります。
つまり、この辺はちょっとグレイゾーンなのです。
勿論離乳の初期には、
そこから充分な鉄分の補充は困難だと思いますが、
一時的な貧血の進行は、
正常な成長にも織り込み済みなので、
徐々に修正される形で通常は問題なく、
母乳の鉄分が他のお母さんよ少なかったり、
お子さんの出生時の鉄の備蓄が少なかったりすると、
貧血の進行が高度になり、
顕在化するケースが、
時に存在する、ということなのだと思います。
その担保のために、
5から6ヶ月から離乳を開始した方が、
望ましい、という意味合いだと思います。
by fujiki (2011-11-28 06:17) 

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