アントニーノ・シラグーザ! [オペラ]
こんにちは。
六号通り診療所の石原です。
今日は日曜日で診療所は休診です。
朝からいつものように駒沢公園まで走りに行って、
戻ってから草むしりをして、
ちょっと洗濯をして、
それから今PCに向かっています。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
アントニーノ・シラグーザは、
イタリアの軽い声の高音域を得意とするテノールで、
イタリアはオペラの母国の1つですが、
現在ではテノールの名歌手と言える現役歌手は、
それほど多くはないので、
その中では抜群の美声と技術とを兼ね備え、
誰でも一度その生の歌い姿に接すれば、
何よりもその暖かい人柄の魅力に虜になる、
本当に貴重な存在です。
ご覧のようなスキンヘッドで背も高くはありませんが、
その澄み切った歌声は、
1音でも聞けば特別だということが分かります。
今回はリサイタルと、
藤原歌劇団の「セビリヤの理髪師」へのゲスト出演のため、
2年ぶりに来日中です。
彼は1998年以降何度も来日し、
日本でもその歌声を聴かせてくれています。
僕が聴いた中で最高に良かったのは、
2009年の新国立劇場での、
ロッシーニの「チェネレントラ」の舞台で、
アドリブを交えて自在にコロラトゥーラの技巧を駆使し、
難アリアをアンコールも含めて歌い上げた姿は、
今も目と耳に焼き付いています。
あんな公演は、
もう新国立劇場で実現することはないのだろうな、
と思うと、
切ない気分になりますが、
仕方がありません。
彼はサービス満点でちょっと無理をするタイプなので、
その声の調子には結構ムラがあります。
アジリタの技巧自体は安定しているのですが、
超高音は本当に軽々と出る時もあり、
オヤオヤと思うほど出ない時もあります。
彼の超高音は、
車のギアチェンジのような感じで、
それまでの音階から、
出し方を変える感じなのですが、
そのギアチェンジが鮮やかに決まると、
ちょっとカタルシスのような興奮があります。
ギアチェンジの出来ない時は、
通常のテノールのように、
そのままの出し方で、
完全にファラセットではないのですが、
声帯を絞って音階を上げるような感じになります。
これは正直あまりグッと来ないのです。
今回のリサイタルは、
正直調子は悪そうで、
ギアチェンジはありませんでした。
ただ、非常に心のこもった歌で、
つい最近友人のテノール歌手が交通事故で亡くなったのですが、
その追悼の意味合いが込められたかのような、
「カルーソー」の切々たる響きには、
胸が締め付けられるような感動を覚えました。
今回のシラグーザの来日は、
かなりの強行軍で、
他の来日歌劇場のキャストのドタキャンの影響を受け、
急遽9月24日に当初の予定になかった、
ベリーニの「清教徒」のアルトゥーロ役を歌うことになっています。
元々シラグーザと同じ軽い声の技巧派の世界的なテノール、
フローレスがキャスティングされていたのですが、
身体の不調を理由に直前で降板となったのです。
フローレスは春からもう来日しないだろうな、
とは噂されていたので、
そう驚くような発表ではなく、
体調不良は嘘ではないのでしょうが、
それならおそらく今のシラグーザの方が、
調子は悪いのではないかと思います。
ただ、シラグーザの声に無理が掛かることは間違いがなく、
僕は正直な気持ちを言えば、
無理に出て欲しくはないな、
と思います。
優しい心根で日本人のことを思ってくれている人が、
そのために犠牲になるのは、
非常に不幸なことです。
多くのオペラファンも、
そんなことは望んではいないと思います。
こちらをご覧下さい。
酷いでしょ。
仕方のないこととは言え、
キャンセルの嵐です。
これで払い戻しは一切ないのですから、
オペラというのは凄まじい世界です。
まあ、色々理由はありますし、
交通事故で亡くなられた方は別なのですが、
後は日本の今の風評がその主な理由なのだと思います。
フローレスの理由は、
要するに「咽喉が少し疲れている」という意味です。
15日の安静という記載が多いのは、
その日数だと次の仕事には行く気満々だけれど、
日本にだけは金輪際行けない、
という意味の日数です。
こちらもご覧下さい。
ザハーロワはロシアの名ダンサーで、
一時は人脈もあって、
びっくりするほど多く来日してくれたのですが、
今回はこんな事態です。
ここ数年はドタキャンが多かったので、
そればかりではないのでしょうが、
来年の5月の話で、
東京で踊るだけなのに、
「原発が心配」と言われると、
改めてショックは感じます。
無策で安全を遠のかせる人も、
自分の利害で殊更に世界に向けて、
不安を煽るような発言を繰り返す人も、
バランス感覚を持って、
本当に大事なことは何かを、
本当に今世界に向けて発信するべきことは何なのかを、
改めて考えて欲しいな、
とは切に思うところです。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
六号通り診療所の石原です。
今日は日曜日で診療所は休診です。
朝からいつものように駒沢公園まで走りに行って、
戻ってから草むしりをして、
ちょっと洗濯をして、
それから今PCに向かっています。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
アントニーノ・シラグーザは、
イタリアの軽い声の高音域を得意とするテノールで、
イタリアはオペラの母国の1つですが、
現在ではテノールの名歌手と言える現役歌手は、
それほど多くはないので、
その中では抜群の美声と技術とを兼ね備え、
誰でも一度その生の歌い姿に接すれば、
何よりもその暖かい人柄の魅力に虜になる、
本当に貴重な存在です。
ご覧のようなスキンヘッドで背も高くはありませんが、
その澄み切った歌声は、
1音でも聞けば特別だということが分かります。
今回はリサイタルと、
藤原歌劇団の「セビリヤの理髪師」へのゲスト出演のため、
2年ぶりに来日中です。
彼は1998年以降何度も来日し、
日本でもその歌声を聴かせてくれています。
僕が聴いた中で最高に良かったのは、
2009年の新国立劇場での、
ロッシーニの「チェネレントラ」の舞台で、
アドリブを交えて自在にコロラトゥーラの技巧を駆使し、
難アリアをアンコールも含めて歌い上げた姿は、
今も目と耳に焼き付いています。
あんな公演は、
もう新国立劇場で実現することはないのだろうな、
と思うと、
切ない気分になりますが、
仕方がありません。
彼はサービス満点でちょっと無理をするタイプなので、
その声の調子には結構ムラがあります。
アジリタの技巧自体は安定しているのですが、
超高音は本当に軽々と出る時もあり、
オヤオヤと思うほど出ない時もあります。
彼の超高音は、
車のギアチェンジのような感じで、
それまでの音階から、
出し方を変える感じなのですが、
そのギアチェンジが鮮やかに決まると、
ちょっとカタルシスのような興奮があります。
ギアチェンジの出来ない時は、
通常のテノールのように、
そのままの出し方で、
完全にファラセットではないのですが、
声帯を絞って音階を上げるような感じになります。
これは正直あまりグッと来ないのです。
今回のリサイタルは、
正直調子は悪そうで、
ギアチェンジはありませんでした。
ただ、非常に心のこもった歌で、
つい最近友人のテノール歌手が交通事故で亡くなったのですが、
その追悼の意味合いが込められたかのような、
「カルーソー」の切々たる響きには、
胸が締め付けられるような感動を覚えました。
今回のシラグーザの来日は、
かなりの強行軍で、
他の来日歌劇場のキャストのドタキャンの影響を受け、
急遽9月24日に当初の予定になかった、
ベリーニの「清教徒」のアルトゥーロ役を歌うことになっています。
元々シラグーザと同じ軽い声の技巧派の世界的なテノール、
フローレスがキャスティングされていたのですが、
身体の不調を理由に直前で降板となったのです。
フローレスは春からもう来日しないだろうな、
とは噂されていたので、
そう驚くような発表ではなく、
体調不良は嘘ではないのでしょうが、
それならおそらく今のシラグーザの方が、
調子は悪いのではないかと思います。
ただ、シラグーザの声に無理が掛かることは間違いがなく、
僕は正直な気持ちを言えば、
無理に出て欲しくはないな、
と思います。
優しい心根で日本人のことを思ってくれている人が、
そのために犠牲になるのは、
非常に不幸なことです。
多くのオペラファンも、
そんなことは望んではいないと思います。
こちらをご覧下さい。
酷いでしょ。
仕方のないこととは言え、
キャンセルの嵐です。
これで払い戻しは一切ないのですから、
オペラというのは凄まじい世界です。
まあ、色々理由はありますし、
交通事故で亡くなられた方は別なのですが、
後は日本の今の風評がその主な理由なのだと思います。
フローレスの理由は、
要するに「咽喉が少し疲れている」という意味です。
15日の安静という記載が多いのは、
その日数だと次の仕事には行く気満々だけれど、
日本にだけは金輪際行けない、
という意味の日数です。
こちらもご覧下さい。
ザハーロワはロシアの名ダンサーで、
一時は人脈もあって、
びっくりするほど多く来日してくれたのですが、
今回はこんな事態です。
ここ数年はドタキャンが多かったので、
そればかりではないのでしょうが、
来年の5月の話で、
東京で踊るだけなのに、
「原発が心配」と言われると、
改めてショックは感じます。
無策で安全を遠のかせる人も、
自分の利害で殊更に世界に向けて、
不安を煽るような発言を繰り返す人も、
バランス感覚を持って、
本当に大事なことは何かを、
本当に今世界に向けて発信するべきことは何なのかを、
改めて考えて欲しいな、
とは切に思うところです。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
2011-09-11 10:52
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今からびわ湖の清教徒に出かけます。腹が立つやら悔しいやら、ちゃんとした精神力で聴くのは難しそうです。でもなんせ高額だから、ちゃんと聴いてきたい。フローレスも誠意ある人なら、これは自分の名前でチケット売ったオペラなんだから、もっと早く「放射能怖いから」と言って、公演自体を中止にしてもらえば良かったんだと思います。代役の人は、この人だったらいいかも、と脳天気に言われている方もおられますが、こんな高額のオペラ、次にいつ買えるかも知れないのに、まだ国際的なキャリアも積んでいない人に満足するわけがありません。本当に悲しい気持ちで迎えるオペラ公演です。
by paquito (2011-09-11 13:15)
pauito さんへ
お気持ちお察しします。
フローレスやカウフマンは、
3月の時点で、
120%来るつもりはなかったと思うので、
一種の騙しですよね。
これがNBSやジャパンアーツの主催であれば、
経営も厳しいだろうし、
仕方がないのだろうな、
と思いますが、
フジテレビですからね。
払い戻しに応じたり中止にしたり、
という英断を下せば、
オペラファンは全員フジテレビの信者になると思いますし、
株価も上がるだろうなとは思いますが、
オペラファンにはそうした値打ちはない、
お前らは騙されても当然なのだ、
という判断なのだろうな、
と思います。
でも、「清教徒」の実演は滅多にないので、
楽しんで来て下さい。
by fujiki (2011-09-11 13:41)
いわれのない差別を受けているようで、本当に残念なことです。政府には風評被害の払拭にむけて十分な説明をしてもらいたいものです。
そんな中、盛岡でリサイタル予定のアルゲリッチなどは本当に立派な方だと思います。
by hiro (2011-09-11 17:40)
相変わらず調子の悪いシロです。 先日一口だけ秋刀魚を食べたんですが、それから喉が痛いです。 刺さるほどの量を食べていないし、食べ物を飲み込む以外は痛くないです。 自律神経の調子が悪くピリピリしているときは、喉がチクチクしたりするのでしょうか? 喉が痛く感じる前は喉の下の方が詰まった感じや、耳が閉塞感がしました。 もうどうしていいのかわからなくて混乱しています。 こんな自分もすごく嫌です。
by シロ (2011-09-11 19:08)
hiro さんへ
コメントありがとうございます。
むしろ積極的に支援活動をされている、
藝術家の方も多くいらっしゃるので、
対応は様々だな、と思います。
ただ、色々な意味で残念な事例も多いのです。
by fujiki (2011-09-11 21:35)
シロさんへ
青みの魚の苦手な方もいますが、
普段食べて問題のないのだとすれば、
あまり秋刀魚自体とは、
関係のないような気がします。
咽喉の風邪も流行っているので、
その前兆かも知れません。
大きな心配はないと思いますよ。
by fujiki (2011-09-11 21:37)
石原先生。
私、accoの夫です。
昨日のブログに対するaccoの不躾な奇弁暴言を見まして居ても立ってもおれず、お詫びを申し上げるべく書き込みをさせて頂きました。
お世話になっていたあの当時、他に頼れる診療内科等はなく、石原先生のみが親身に診察して下さり、それ以来、様々お手数もお掛け致しまして・・・どれだけ大変お世話になったかと、私は感謝しております。
acco本人は『少し具合が悪い時に大変な事を書いてしまった』と落ち込んではおりますが、昨日のブログの内容に対してあの様に恩を踏みにじる様な事を平気で書き込んでいるなどは妻ながら憤りすら感じます。
時代遅れな考えかもしれませんが、顔も名前も明かさず、勝手な事を書きなぐれる、こころ無い『ネット』というコミュニテイに少なからず嫌気を覚ているのですが、今回はホトホト呆れ返っている次第です。
本当に申し訳有りませんでした。
今後も、日々の診療頑張って下さい。
by ryou (2011-09-11 22:53)
ryou さんへ
お気遣いありがとうございます。
お気にはされないよう、奥様にもお伝え下さい。
先日のコメントのやり取りに関しては、
削除をさせて頂きました。
by fujiki (2011-09-12 07:14)
コメントありがとうございます。
イタリア人っていい加減そうだけど、職人さんとしては信用がおけると思います。そういった意味で、アルベロを連れてきたのも、やっぱりイタリア人ってちゃんと音楽わかってるんだなぁ、って感じでした。メトのリーなどは、知名度はあるようですが、いささか説得力に欠けていましたので...。
いずれにせよ、東京公演行かれるようでしたら、楽しんできて下さい。
(いやいや、あまり期待を持たずにいった方が、その分楽しめるかも知れません。)シラグーザ、調子を取り戻してくださるといいですね。
ついでながら私もシラグーザ大好きです。オペラ以外の歌を歌ったアルバム、もうあれ大好きで、「カルーソ」だとか「わすれな草」だとか、本当に愛聴盤です。
by paquito (2011-09-12 11:38)
paquito さんへ
楽しめる出来で良かったですね。
僕は21日に聴く予定です。
リーは僕も好みではありません。
アルベロは来年の4月に、
ランカトーレとデュオリサイタルが予定されていますね。
そちらもちょっと楽しみです。
by fujiki (2011-09-13 21:22)
石原さま、はじめまして。シラグーザのセビリアのコンサート評を探していたら、石原さまの記事がはじめに出てきました。2009年の新国のチェネレントラへのご感想、そして彼の澄み切った美声と温かな人柄という言葉・・・そうそう、同感同感!と顔がほころんだのでした。今回も、日本にほんとうにサービス精神旺盛に対応してくれましたね。リチートラの突然の訃報、さぞかし心を悼めていることでしょう。いま、リチートラのCDで10月のトロヴァトーレの「予習」をしているところですが、輝く声を聞きながら、わたしも胸を傷めています。生で聴いてみたかった。
不躾ながら、お医者様としてのご意見にもとても真摯さが感じられ、内視鏡的ポリープ切除を控えている身としても、偶然石原様のブログにたどりついたことで、応援をいただいた気がしたところです。
診療のかたわら、専門分野と趣味のブログをこれほど緻密にされているって、すばらしいです!
by ラズベリー (2011-09-21 12:11)
ラズベリーさんへ
コメントありがとうございます。
清教徒のアルベロは凄かったです。
ランカトーレも僕が聴いた中では最良の出来でした。
これからもよろしくお願いします。
by fujiki (2011-09-22 08:18)
ピンチヒッターとして登場することになった歌手にとっても、今回のような交替は身が締まる思いがひとしおだったことでしょう。4月のこのふたりの共演にさらに集客を呼ぶのは間違いなさそうですね。わたしは、10月にドレスデン、ベルリン、ウィーンに行くことにしています。フィガロ、セビリア、マダムバタフライ、魔笛と、欲張りました。実は、今回(も)キャンセルしたカウフマンのベルリンフィルコンサートも聴いてきます。施術前の景気づけ、そして、大台誕生日祝いということで、楽しんでまいります。こちらこそ、今後ともブログを楽しみにしておりますので、よろしくお願いします。
by ラズベリー (2011-09-23 06:22)