「イニシエーション・ラブ」と乾くるみの世界 [ミステリー]
こんにちは。
六号通り診療所の石原です。
今日は祝日で診療所は休診です。
昨日日本酒を2合くらい飲んで、
そのくらいなら全然問題ないつもりだったのですが、
今朝はかなり吐き気がして調子が悪く、
ランニングも止めようかと思ったのですが、
それではいけないと思い直し、
駒沢公園までいつものように走りに行って、
それから今PCに向かっています。
芝生に先週はなかったシロツメクサが、
絨毯みたいに茂っていて、
気持ちの良い朝でした。
今日はでもレセプトがあるので、
もう少ししたら診療所に向かう予定です。
ちょっとねえ、
月の初めにレセプトがあるでしょ。
ようやく終わってちょっとすると、
もう月末になって、
またレセプトがあるんだよね。
それが12回あると、
それだけで1年が過ぎてしまって、
それを10年もすればさあ…
人生なんてそんなものかと、
考えると怖ろしくなります。
それでは休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
乾くるみは僕と同世代のミステリー作家ですが、
極端な寡作で、
時々思い付いたようにしか、
作品を発表しません。
【以下の内容には基本的にはネタバレはありませんが、 当該の作品を楽しみたい方は、コメント欄を含めて読了後にお読みください!】
僕はミステリー読者としては結構すれっからしで、
大抵のものにはもう驚かないのですが、
この作品には本当に新鮮な驚きを覚えました。
そのアイデアと奇想に仰天して、
この人は只者ではない、
と思ってその時点で処女作から全てを読みました。
(といっても10作品もありません)
ただ、処女作の「Jの神話」というのが、
ええ、これは…、
というような変な作品で、
次の「匣の中」というのがまた、
これじゃ駄目じゃん、
というような代物だったので、
正直かなりガッカリした気分になりました。
「イニシエーション・ラブ」の次回作の「リピート」というのは、
あっ、これは意外に良い、
という感じでしたが、
「イニシエーション・ラブ」ほどのオリジナリティはなく、
その後も、
何となく「オヤオヤ」という印象の作品が続いています。
昨年「イニシエーション・ラブ」の続編を思わせるような、
「セカンド・ラブ」という作品が発表され、
ほんの2週間ほど前に、
これは本当にワクワクしながら読みました。
僕の大好きな双子もので、
そっくりの容姿の美女が2人出て来て、
このプロットで、
一体どのような仰天する仕掛けがあるのだろう、
この2人の本当の関係はどうなのかしら、
と想像しながら読み進めて、
とてもその展開が予想出来ません。
そして遂にラストになり…
ええ…これじゃなんかさあ、
マーガレット・ミラーの晩年の駄目な奴みたいじゃん、
というガッカリしたラストになりました。
本当に申し訳ないのですが、
このままだと乾くるみは、
「イニシエーション・ラブ」1作で、
後世に名を残すことになりそうです。
この作品はワンアイデアで、
似た趣向の作品も、
過去になかった訳ではないと思うのですが、
その活かし方は抜群で、
一種の技巧で読者を驚かせるタイプの作品ではあるのですが、
その意外な展開が、
当初とは全く別の物語を浮かび上がらせ、
それがとても切なくてしかもハッピーエンドになっている、
という点に妙味があります。
これは大袈裟ではなく、
今まであまり触れられて来なかった、
小説の新たな可能性に道を開くような、
そんな思いさえ感じさせてくれます。
技巧派のミステリーというのは、
ある程度読者を選ぶところがあり、
この作品も興味のない方には、
ただのひねくれ小説のように、
思えるだけかも知れません。
ただ、僕はこういう小説技巧が大好きなので、
また誰かこういう仰天するような作品を、
書いてくれないかな、
とは常に思います。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんは良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
六号通り診療所の石原です。
今日は祝日で診療所は休診です。
昨日日本酒を2合くらい飲んで、
そのくらいなら全然問題ないつもりだったのですが、
今朝はかなり吐き気がして調子が悪く、
ランニングも止めようかと思ったのですが、
それではいけないと思い直し、
駒沢公園までいつものように走りに行って、
それから今PCに向かっています。
芝生に先週はなかったシロツメクサが、
絨毯みたいに茂っていて、
気持ちの良い朝でした。
今日はでもレセプトがあるので、
もう少ししたら診療所に向かう予定です。
ちょっとねえ、
月の初めにレセプトがあるでしょ。
ようやく終わってちょっとすると、
もう月末になって、
またレセプトがあるんだよね。
それが12回あると、
それだけで1年が過ぎてしまって、
それを10年もすればさあ…
人生なんてそんなものかと、
考えると怖ろしくなります。
それでは休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
乾くるみは僕と同世代のミステリー作家ですが、
極端な寡作で、
時々思い付いたようにしか、
作品を発表しません。
【以下の内容には基本的にはネタバレはありませんが、 当該の作品を楽しみたい方は、コメント欄を含めて読了後にお読みください!】
僕はミステリー読者としては結構すれっからしで、
大抵のものにはもう驚かないのですが、
この作品には本当に新鮮な驚きを覚えました。
そのアイデアと奇想に仰天して、
この人は只者ではない、
と思ってその時点で処女作から全てを読みました。
(といっても10作品もありません)
ただ、処女作の「Jの神話」というのが、
ええ、これは…、
というような変な作品で、
次の「匣の中」というのがまた、
これじゃ駄目じゃん、
というような代物だったので、
正直かなりガッカリした気分になりました。
「イニシエーション・ラブ」の次回作の「リピート」というのは、
あっ、これは意外に良い、
という感じでしたが、
「イニシエーション・ラブ」ほどのオリジナリティはなく、
その後も、
何となく「オヤオヤ」という印象の作品が続いています。
昨年「イニシエーション・ラブ」の続編を思わせるような、
「セカンド・ラブ」という作品が発表され、
ほんの2週間ほど前に、
これは本当にワクワクしながら読みました。
僕の大好きな双子もので、
そっくりの容姿の美女が2人出て来て、
このプロットで、
一体どのような仰天する仕掛けがあるのだろう、
この2人の本当の関係はどうなのかしら、
と想像しながら読み進めて、
とてもその展開が予想出来ません。
そして遂にラストになり…
ええ…これじゃなんかさあ、
マーガレット・ミラーの晩年の駄目な奴みたいじゃん、
というガッカリしたラストになりました。
本当に申し訳ないのですが、
このままだと乾くるみは、
「イニシエーション・ラブ」1作で、
後世に名を残すことになりそうです。
この作品はワンアイデアで、
似た趣向の作品も、
過去になかった訳ではないと思うのですが、
その活かし方は抜群で、
一種の技巧で読者を驚かせるタイプの作品ではあるのですが、
その意外な展開が、
当初とは全く別の物語を浮かび上がらせ、
それがとても切なくてしかもハッピーエンドになっている、
という点に妙味があります。
これは大袈裟ではなく、
今まであまり触れられて来なかった、
小説の新たな可能性に道を開くような、
そんな思いさえ感じさせてくれます。
技巧派のミステリーというのは、
ある程度読者を選ぶところがあり、
この作品も興味のない方には、
ただのひねくれ小説のように、
思えるだけかも知れません。
ただ、僕はこういう小説技巧が大好きなので、
また誰かこういう仰天するような作品を、
書いてくれないかな、
とは常に思います。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんは良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
2011-04-29 09:55
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うふふ・・・読んでみよっと^^;
お芝居は、まだまだ楽しむ時間を作らせてはもらえないけど、
読書なら、お風呂とかいろいろ工夫すれば読めるから・・・
by yuuri37 (2011-04-29 18:14)
いつも、専門的な話題についての判りやすいご解説を興味深く読ませて頂いております。
日本酒2合で調子が悪くなるとはいけませんね。
まさしく釈迦に説法ですが、ご自愛ください。
by giscour (2011-04-29 22:58)
人生なんて、そんなものですが、いいものです^^
いつも、先生のブログを楽しみにしています。
これからも、毎日大変だと思いますが、頑張ってくださいね。
体調の悪い日は、短い文でも、つながりだと思ってますので、挨拶だけでも、お話して下さいね。
by せつら (2011-04-29 23:32)
yuuri37 さんへ
ちょっとね、小説としては、
あまり上出来ではないので、
がっかりされるかも知れませんが、
シンプルかつオリジナルなアイデアは、
画期的だと思います。
by fujiki (2011-04-30 08:38)
giscour さんへ
お気遣いありがとうございます。
お酒は最近てんで駄目になりました。
これからもよろしくお願いします。
by fujiki (2011-04-30 08:40)
せつらさんへ
コメントありがとうございます。
長すぎるとは指摘をよく受けるので、
時々は短くしたいと思いますが、
貧乏性なのかも知れません。
これからもよろしくお願いします。
by fujiki (2011-04-30 08:42)
「評判通りの仰天作」というフレーズにひかれて、寝る前に一気に読みました。
確かに上出来ではないです。つか、貫井徳郎さんの作品と同じアイデア
(と私には思えました。)で貫井さんの方がはるかに仰天しました。
sideAとBに分かれてた時点でネタがばれてしまったほどです。
読み始めは映画「オープンユアアイズ」の様なトリックで、入り組んだ話を
期待していたのですが…。
1回読めば十分かな。
でも作中で大好きな作家泡坂妻夫さんを褒めてたのは嬉しかったです。
泡坂妻夫さんの作品には驚かされることが多いです。
by ごぶりん (2011-06-24 11:44)
ごぶりんさんへ
そうですか。
あまり、ごぶりんさんには合わない作品だったようですね。
こういう技巧的なものは、
矢張り好みが分かれるのだと思います。
僕は結構量は読んでいる割に騙され易いので、
大抵引っかかってびっくりする方です。
泡坂妻夫さんは厚川昌男名義のマジックでも、
僕は好きで、
マジックの著作も結構持っています。
幻影城という雑誌の新人賞でデビューしたのですが、
その時の受賞作もリアルタイムで読んでいます。
その後「幻影城」誌に連載されたのが、
亜愛一郎のシリーズで、
これは毎回ワクワクしましたね。
処女長編の「11枚のトランプ」は、
ページをナイフで切りながら読む、
というアンカットフランス装という特殊な製本で出版されて、
それも持っていますが、
残念ながらページを切ってしまったので、
古書としての価値はなくなってしまいました。
by fujiki (2011-06-25 08:55)
マジックもお好きなようですので、泡坂妻夫さんのことはご存じとは思ってましたが、
新人賞の作品をリアルタイムで読んでらっしゃるほどとは思いませんでした。
奥が深い方ですね。
泡坂さんの作品には袋綴じにしたものとか製本そのものもユニークなのがありますね。
私は現物を見たことが無いので持ってらっしゃるだけでも垂涎ものです。
by ごぶりん (2011-07-10 21:56)