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薬剤性光線過敏症の話 [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日は特殊な薬の副作用の話です。

光線過敏症というのは、
紫外線を浴びた後に、
皮膚に病的な反応が起こることです。

たとえば病気のない人でも、
太陽光線を強く浴びれば、
その後では皮膚は赤く爛れ、
皮が剥けたりもして痛みや痒みが起こります。
所謂「日焼け」ですね。

光線過敏症というのは、
「日焼け」を起こすほど紫外線を浴びていないのに、
重症の日焼けのような、
皮膚の変化が起こることを言います。

この光線過敏症には、
先天的な異常によるものと、
後天的な原因によるものがあり、
後天的な原因のうち、
最も多いのが薬剤性のものです。

通常日光を浴びた翌日や2日後に、
皮膚の赤い腫れはむしろ強くなり、
酷ければ水疱を作ったり、
皮が剥けたりもします。
日焼けのような腫れ方をせず、
慢性の湿疹のような変化が起こることもあり、
そうした場合には、
余程この病気の可能性を疑わなければ、
その診断は非常に困難になります。

この病気は主に中高年の病気で、
平均年齢は60代です。
おそらくは年齢による肌の老化が、
その要因の1つになっていると思われます。

光線過敏症は何故起こるのでしょうか?

薬は飲み薬でも、血液を介して、
皮膚にもある程度移行します。

そこに紫外線が当たると、
紫外線の働きで皮膚にある蛋白質と、
薬の成分が結合します。
その結合物が一種の抗原となるので、
それに対する免疫反応が起こり、
炎症が起こることによって症状が出現するのです。

光線過敏症は、
様々な薬剤で起こりますが、
その発症の多い薬剤も、
ある程度決まっています。

こちらをご覧下さい。
光線過敏症.jpg
これはある文献から引用した、
光線過敏症の副作用報告の多い薬剤の一覧です。

圧倒的に多いのが抗生物質のスパルフロキサシンで、
商品名はスパラです。

この薬は光毒性の強い薬として知られています。
つまり、単純なアレルギー反応ではなく、
その薬剤の成分自体が、
紫外線に反応して活性酸素を生じるのです。
これは他の同種の薬剤には見られない特徴で、
そのため現状では使われることは少なくなっています。

3番目のフレロキサシン(商品名メガキサシン)、
6番目のエノキサシン(商品名フルマーク)、
7番目のロメフロキサシン(商品名ロメバクト、バレオン)も、
同じニューキノロン系の薬剤です。
つまりこのニューキノロン系の薬剤は、
その起こり易さには違いはありますが、
総じて光線過敏症を生じ易いのです。

更には、
一旦あるニューキノロン系の薬剤で、
この光線過敏症を起こすと、
他のニューキノロンでも同様の症状が、
生じ易くなることが知られています。
従って、一旦そうしたことが起これば、
全てのニューキノロンは使用しないのが無難です。

2番目のピロキシカムは鎮痛剤で、
商品名はフェルデンです。
4番目のアフロファロンは筋弛緩剤で、
商品名はアロフトです。

15番目のクロレラは健康食品ですが、
光線過敏の原因となるので注意が必要です。

また22番目のピリドキシンは、
ビタミンB6 の製剤ですが、
低アルカリフォスファターゼという体質があると、
ピリドキシンが正常に代謝されずに身体に溜まり、
光線過敏症の原因となると言われています。

薬剤による光線過敏症は、
その薬剤を中止すれば、
概ね数週間のうちには元に戻りますが、
皮膚病変が慢性化していると、
改善しない場合もあるので、
早期にこの病気の存在を疑い、
薬剤を中止もしくは変更することが、
非常に重要なことなのです。

今日は薬剤性光線過敏症の話でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コメント 5

ちこ

毎日かかさず読ませて頂いてます。光線過敏症は初めて知りました。昨晩から私の全身に発疹ができ薬疹を疑って内科皮膚科を掲げてる病院を今朝受診したのですがわからないね~で終わりました。今飲んでる抗菌薬とかアレルギーの薬をやめて治っても同じ種類の薬を飲んだらまた副作用が出る可能性ありって事ですよね。薬の副作用って怖いですね。それをしっかり理解してくれているドクターを探すのも大変そうです…。

by ちこ (2010-11-18 14:01) 

fujiki

ちこさんへ
いつもお読み頂きありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
by fujiki (2010-11-19 06:25) 

セナ

私は以前薬疹がでた事があります。
キノロン系抗菌薬のジェニナックを処方され3日間服用(すぐ効きました)その10日後に花粉のアレルギーと喉痛と微熱でアレルギー薬2種とヒシターゼとまたジェニナックが処方されました。
その2日後に赤い斑点がひどく全身にでてきました。
処方してもらった医師に見せたところ時間がたっているから薬疹ではないと思うといいました。
何の治療もなく薬をやめてと言うだけでした。
私は後からでる薬疹もあったと記憶していたので皮膚科を受診したらあきらかな薬疹の斑点で多分抗菌薬だと言われました。ひどいのでステロイドで治療をしました。
薬疹で検索したら先生の過去の記事を見つけました。
今後私はキノロン系の薬は禁忌になるとは思いますが他に気をつける事はありますか?
また処方した医師の適当というか薬を取り扱っているのにあまり薬疹を知らないような感じに見えたしロキソニンを飲んでもいいかの問いに構わないという答えに疑問を感じています。発疹がでる2日前ジェニナック服用中に頭痛薬でロキソニンを飲みました。
痙攣はないので関係はないですが疑いもせず薬を飲んでた事が怖くなりました。
お答えをいただけたら嬉しいです。
長文乱文ですみません。




by セナ (2010-11-19 23:10) 

fujiki

セナさんへ
コメントありがとうございます。
エノキサシン以外のニューキノロンでの痙攣は、
比較的稀なので、
ロキソニンやボルタレンを一緒に処方される先生もいます。
ただ、僕は矢張りリスクは避けるべきだ、
という立場で、
ポンタール(メフェナム酸)、アセトアミノフェン、
バファリン以外との併用は、
原則としてはしていません。
ニューキノロンは強力な抗生物質で有用性は高いのですが、
他剤と比して細胞への毒性も強いので、
お飲みになる際には、
その後の体調について、
より注意が必要だと思います。
by fujiki (2010-11-20 08:26) 

セナ

先生ありがとうございました。
先生のブログを拝見してると患者想いのお医者さまで日々勉強されてるのが伝わってきます。
そういうお医者さまに診て頂きたいものです。
抗生剤の乱用はまだ色んな所でありますしウィルス風邪に抗生剤は効かないのわかっていて飲む自分もいるので服薬には気をつけていきたいと思います。今後も先生のブログ楽しみにしています。お体ご自愛下さい。
by セナ (2010-11-20 10:01) 

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