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ノバルティス社の新型ワクチンを考える [新型インフルエンザA]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

年末にこんな報道がありました。

【新型インフルエンザ:輸入ワクチン「承認」可 データ補足条件--厚労省部会】厚生労働省の薬事・食品衛生審議会部会は26日、輸入予定の海外2メーカーによる新型インフルエンザワクチンについて「承認して差し支えない」との結論をまとめた。28日から来年1月11日まで一般から意見募集したうえで上部組織で改めて審議し、長妻昭厚労相が決定する。承認されれば、2月上旬ごろから接種が可能になる。輸入を予定しているのはグラクソ・スミスクライン(GSK、英国)とノバルティス(スイス)が製造するワクチン計9900万回分。両ワクチンとも国内産にはない免疫補助剤を使うなど製造法が異なる。承認に必要な国内臨床試験のデータなどはそろっていないが、厚労省は緊急性にかんがみて、薬事法に基づき手続きを簡略化した「特例承認」の初適用を検討している。この日の議論では、GSKが100人、ノバルティスが200人に実施した国内臨床試験の中間報告について「国際基準を満たす有効性が確認された」との見解で一致。副作用も季節性インフルエンザのワクチンを超える危険はないと判断し、承認に問題はないと結論付けた。また、GSKのワクチンによる動物を使った異常毒性試験で死亡例が出たことも報告され、メーカーに追加報告や情報提供を求めることを条件とした。

グラクソ・スミスクライン社とノバルティス社の2社の新型ワクチンが、
厚生労働省の部会で承認され、
現在一般からの意見の募集が行なわれています。

まあ、これは儀礼的なものであることは明らかで、
予定通り2月上旬から、
輸入ワクチンの接種が始まることは間違いがなさそうです。

今回の意見募集に当たって、
輸入ワクチン関連の資料が公開されています。
非常に膨大な分量のものです。

今日はそのうちのノバルティス社のワクチンについて、
公開された資料を検討してみたいと思います。

ただ、このワクチンの資料についてだけでも、
言いたいことは山のようにあります。

今日はまず、
ノバルティス社のワクチンの用量の設定と、
それが国産のワクチンと、
どのように違うのか、
という点を取り上げたいと思います。

ちょっとだけおさらいをすると、
ノバルティスのワクチンは、
細胞培養法によって造られ、
免疫増強剤(アジュバント)を加えて、
国産とは製法の全く異なるワクチンです。

今回の資料にある用量の設定ですが、
これはちょっとびっくりで、
18歳以上50歳未満は、0.25ml の1回打ちで、
3歳以上の小児および50歳以上の成人は、
同じ0.25ml の2回打ちとされています。

当面このワクチンの使用は、
成人に限られる、と現時点では考えられますが、
今回の資料や実際の日本語の添付文書には、
はっきり小児の用量も書かれており、
おそらく将来的には小児にも、
輸入ワクチンを使用しようという考えがあり、
そのための布石だと思われます。

今回は緊急特例の措置という説明ですが、
この内容が正式に認められれば、
なし崩し的にこれからも輸入が行なわれるのは、
ほぼ間違いなく、
多分その場合はこのデータのみを元に、
小児への安全性も確立されている、
というような説明がなされるのではないかと思います。

ここで小児の用量は成人と同じであり、
かつ2回接種となっています。

これで本当に安全性に問題はないのでしょうか?

仮に問題がないのだとすると、
じゃあ、今の国産新型ワクチンの用量は一体何なのさ、
という当然の疑問が生じます。

現在の国産ワクチンの用量は、
1歳以上6歳未満は成人の5分の2です。

これだけの少量にしている根拠は、
おそらくは安全性を考慮しての過去の結論なのでしょう。
しかし、こんなに簡単に、
輸入ワクチンの小児の用量が決定され、
それが成人と全く同量であるとしたら、
当然国産ワクチンだって、
そうしなければ効果がないのでは、
という当然の疑問に突き当たります。

その疑問をある程度解消してくれる筈の、
国産ワクチンの小児の臨床試験の結果は、
未だに中間報告すら公表されていません。

また、安全性の面で小児の用量を減らしたのだとすれば、
当然輸入ワクチンでもそうした考慮がされるべきです。
しかし、今回ノバルティスのワクチンに関しては、
小児の臨床試験の結果が添付されているのですが、
それは大人と同じ量とその倍量での検討しかされてはいません。
要するに、はなから大人と同じ量を小児に使用する、
という発想以外はないのです。

ここから分かることは、
要するに行政には、
安全性を重視して用量設定をする、
という考えははなからないのだ、ということです。

国産ワクチンに関しては、
あまり効果の期待出来ない少量の用量を、
何となく決定し、それを数十年そのままで放置し、
新型ワクチンについても、
臨床試験を省く、という目的のために、
用量の検討を行なわなかったのです。
しかし、それでいながら、
新たに輸入ワクチンを使用する、
という段になると、
その小児の臨床試験は、
成人と同じ用量でのみ行なっているのです。

こんな首尾一貫しない方針があるでしょうか?

仮に海外のワクチンは、
大人と同じ量でないと効果がないけれど、
国産のワクチンは、
その5分の2の量でも充分な効果があるとすれば、
国産のワクチンの方が遥かに強力だ、
ということになります。

そんなことが果たしてあるのでしょうか?

海外のワクチンも国産のワクチンも、
基本的には作用は同等なのに、
国産のワクチンのみ、
わざわざ効果の少ない用量を、
お子さんに根拠なく決めている、
と考えた方が妥当なのではないか、
と僕は思います。

その参考になるべき、ノバルティス社のワクチンの、
国内での小児の臨床試験の結果ですが、
現時点では1回接種後のHI抗体の測定結果のみ、
発表されています。
実際に認可されたのは3歳以上ですが、
この臨床試験では、6ヶ月以降の月齢のお子さんも、
接種の対象となっています。

その内容をかいつまんで言うと、
3歳未満の年齢では、
通常の0.25ml の接種では、
抗体が基準(いつもの、抗体価が4倍以上に増加して40倍以上、
という大甘の基準です)
に達したのは10名中5例のみでした。
要するに50%の達成率です。
これが倍量の接種では、90%に達しています。
つまり3歳未満の小児では、抗体の上昇は低レベルで、
充分な抗体の上昇には、
1回打ちを前提にすれば、
倍量の投与が必要です。

3歳から8歳の年齢層においては、
通常量で達成率は55%です。

これを海外の同様の試験と比較してみると、
3歳から8歳の年齢層においては、
通常量の1回接種で75パーセントの達成率で、
2回接種でほぼ100%になっています。

つまり、全く同じワクチンを使用していながら、
海外のデータより、
国内の試験のデータは、
より効果の低いものになっているのです。

この理由は不明ですが、
海外の試験より明らかに効果が低いのに、
2回打ちにすれば、効果は充分にあるだろう、
という都合の良い仮定の下に、
この時点で小児の用量にOKを出しているのですから、
果たして何のために国内の臨床試験を行なったのか、
非常に疑問に感じるところです。

また、果たして乳児や幼児の臨床試験で、
通常の倍量の投与を行なう必要性があったのだろうか、
と言う点についても、
僕は疑問に感じます。

考えて見て下さい。
あなたの1歳のお子さんに、
まだ日本人に使用した実績はなく、
細胞培養でアジュバントを添加した、
国産ワクチンとは全く製法の違うワクチンを、
通常大人に打つ量の倍の量で、
「実験的に」使うことを、
あなたは承認されますか?
しかもですよ、その時点でそのワクチンは、
大人にしか使用しない、
という方針なのです。
にもかかわらず何故、
敢えてそのような「実験」が行なわれたのでしょうか?

一体どのような説明が、
その「実験」に際して保護者にされたのか、
僕には想像も付きません。

このノバルティスのワクチンは、
しかも有機水銀含有の殺菌剤である「チメロサール」が、
国産ワクチンよりずっと多く含まれています。

手元の資料によれば、
国産ワクチンの1つである、
デンカ生研のワクチンには、
大人1人1回分当たり、
2μg のチメロサールが含まれているのに対して、
ノバルティスのワクチンには、
大人1回分当たり、
25μg のチメロサールが含まれています。
何と国産の10倍以上です。
国産のワクチンを12.5本同時に打ったのと同じです。
これが倍量投与となりますと、
国産ワクチン25本分と、
同じ量の水銀が身体に入ります。
更には、お子さんの日本での使用量は少ないのですから、
仮に1歳のお子さんが2回接種したとして考えると、
通常国産のワクチンを2回打ったのと比べて、
たった1回の接種で、
何と国産ワクチンの62.5倍の水銀が、
お子さんの身体の中に入ります。

ね、びっくりでしょ。

こうした情報が、
果たして臨床試験の参加者の、
お子さんの保護者に伝えられたのでしょうか?
保護者の皆さんは、それを本当に確認した上で、
ご自分のお子さんに、そうした「人体実験」を行なうことを、
ご納得されたのでしょうか?

ノバルティス社の名誉のために付け加えますと、
他の海外のワクチンでも、
概ねこれと同じだけのチメロサールが含まれています。
国産のワクチンはその企業努力によって、
海外のワクチンの10分の1以下に、
チメロサールの含有量を減らしているのです。

また今回の資料によれば、
50歳以上の大人も、
通常量の2回打ち、という方針になっています。

これも非常に不可思議ですよね。

1回打ちか2回打ちか、
という不毛な議論が日本でもあり、
結局国産ワクチンについては、
お子さん以外は1回打ちで充分な効果があり、
2回打っても上乗せ効果はない、
という結論になった筈です。

ところが、強力なアジュバントを加えた筈の、
このノバルティスのワクチンに関しては、
50歳以上が2回打ちと決まったのです。

これは一体どういうことでしょうか?

これは実は海外の臨床試験においては、
高齢者では抗体の上昇は悪いのです。
ワクチンの効果の基準も、
61歳以上ではそれ以下の年齢より、
かなり甘いものになっています。

たとえば、このノバルティスのワクチンの場合、
61歳以上の年齢層では、
3割程度しか1回打ちで基準には達していません。
また、40代と50代とを比較すると、
50代の抗体の基準達成率は、
40代より低レベルなのです。

つまり、少なくとも抗体価の評価でのみ考えると、
年齢が高くなればなるだけ、
ワクチンの効果は低くなる、ということになります。

ここで大きな疑問が生じます。

待てよ、何で日本では高齢者は1回接種なのだろう、
その根拠は何だったのかしら、
という疑問です。

それで、以前話題になった、
「健康成人」の国産新型ワクチンの臨床試験の報告を、
見直してみると、
その年齢は59歳までになっており、
しかも年齢を区切った効果の検討は、
殆ど行なわれていないことに改めて気付きます。
試験デザインは、20歳以上の健康成人、となっています。
その点から言えば、70歳の方が参加しても問題はない筈です。
しかし、実際には60代以上の方は参加していません。
これは60代以上ではワクチンの効果の判定基準が違うため、
解析がややこしくなる点もありますが、
ワクチンの効果が高齢者で劣る可能性が高いので、
そのことが「バレる」と、
高齢者を2回接種にすることになり、
それで混乱が生じるのを、
嫌ったためではないか、と推測されます。

高齢者で1回打ちの根拠はないのです。

でも、健康成人で1回打ちで効果あり、
と言われると、何となく高齢者もそれに含まれるように、
錯覚を起こしますよね。

ですから、回数の議論の時にも、
小児の臨床試験を追加すべき、と言う声はあっても、
高齢者の臨床試験を追加すべき、
という声はなかったのです。

この辺にも、如何に労力の少ないデータのみで、
ワクチンを承認させてしまおう、
という知恵を巡らす、賢い専門家の皆さんの、
巧みな詐術を感じますね。

ともあれ、海外のしっかりとしたデータがあったばかりに、
ノバルティスのワクチンは、
低年齢層と高年齢層が2回打ち、という、
国産ワクチンと比較すると、
極めて変則的な形になりました。

これが果たしてそのまま承認されるものなのか、
それともまた一波乱あるものなのか、
今後の経過を注視したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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ペポ

けましておめでとうございます

新型ワクチンを打つことを見合わせた息子(4才)が
A型インフルに罹りました。
1月5日夕方から、腹痛・嘔吐の症状が出て
深夜に38.2度の発熱と続き、
6日に検査でA型インフルと言われました。

季節性は接種済みで、症状が胃にきてるので、新型?
とみてます。

12月初旬に娘(6才)が新型インフルに感染し、
子どもたちはマスクの意味が良く分からないらしく、
なかなか着けてくれないので、
マスクなしで直接的に咳を浴びせられいましたが
その時点で彼に感染することはなく不顕性感染だろうか?
と思ってました。
私は手洗い、マスクをしてました。

12月末より雪のため1週間ほど家を出れず、4日に
久々にジャスコに外出した際に感染したようです。
その前数日も、不特定多数の人が来る場所へは
行ってません。

不思議なのは、家族で息子と一緒に行動してたのですが
まわりで咳をしている人は1人も見かけなかったことです。

なぜ、彼だけ?
というのも不思議で・・。

潜伏期間は現在、10時間~最長10日と聞いてますが
実は1ヶ月くらいともっと長いことがあるのでは??
と思ってしまいました。

息子くんは吐いてばかりで、タミフルも吐いてしまう
のでヒヤヒヤしましたが
(途中、血の塊を吐かれました。)
ようやく熱も吐き気もおさまり、やっと食事を少づつ
取れるようになり回復中です。

おえらい方達は、自分の都合の良いようにしか動く気が
無いのでしょうね。

数日間点滴ラッシュっだった息子くんの治療をしてくださったお医者さんを見ていてつくづく思います。

おえらい人たちは、日々、戦っている町医者を見習って欲しいものです。



by ペポ (2010-01-10 01:09) 

fujiki

ペポさんへ
明けましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。

お子さん回復されて良かったですね。
推測ですが、12月には不顕性感染で症状は出ず、
抗体の上昇も不充分で、
今回再度感染されたのではないか、
と思います。

お腹の症状が強いのが新型、
という意見があるのは知っていますが、
僕はどちらかと言えば、
他のウイルスとの重複感染なのではないかな、
という考えです。
by fujiki (2010-01-10 07:45) 

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