SSブログ

新型ワクチンの雑菌感染は有り得るのか? [新型インフルエンザA]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

日曜日はすっきりした気分で起きたいな、
といつも思いつつ、
前の日の後悔に心が淀んだり、
お腹の調子や体調が悪かったり、
といつもその通りにはなりません。

今も何となく気持ちはブルーだし、
頭は重くて、お腹の調子もあまり良くはありません。

でも、どうにかしないといけないですね。

今日は休みですが、
ちょっと腹が立つ報道があったので、
新型インフルエンザ関連の話題です。

昨日こんなニュースがありました。

【10ミリバイアルが俎上に 新型インフルワクチン検討会 】新型インフルエンザワクチンの安全性について検討する厚生労働省の4回目の検討会が8日、開かれた。国会審議などで物議を醸していた10ミリバイアルの安全性が初めて議題となり、「現時点では安全性に問題なし」との結論になった。事務局の提出した『死亡症例の概要』という資料に、「専門家の意見」として○○委員が「(前略)私は今まで20症例以上の新型インフルエンザワクチン重篤症例を評価してきたが、突然の高熱や細菌感染を思わせる症例が多く、これはワクチンボトル内感染ではなく、10mLバイアルから20回分のワクチンを吸引操作する過程でシリンジ内感染をきたした可能性が否定できないと考えるようになってきた」と記していたことから、議論となった。(元記事より省略、改変あり)

10ml の大瓶からワクチン液を吸引する際に、
注射器の中に雑菌が混入し、
それが副反応の原因になったのではないか、
というのです。

皆さんはこの考えをどう思われますか?

僕は正直、あまりに馬鹿馬鹿しくて、
脱力しました。

確かに国産新型ワクチン接種後死亡事例の中には、
肺炎や敗血症を接種後に来たした事例が、
複数認められます。

そのことを、この委員の方は、
僕や看護師が杜撰な操作でワクチンを吸引するので、
その時に雑菌が混入し、
それが肺炎や敗血症の原因になったのではないか、
という訳です。

この委員の頭の中には、
おそらく点滴液の作り置きや、
抗凝固剤を溶かした食塩水の作り置きで、
セラチア菌の感染を起こした、
医療過誤の事例があったのではないか、
と推測します。

ただ、点滴液や生理食塩水は、
一旦その中に雑菌が侵入し、
それから数日以上の時間が経過した場合、
雑菌が増殖して、
感染を起こすことが有り得ます。
それは滅菌処理はされてはいるものの、
すぐに使うことが前提のため、
防腐剤などの薬剤は入れられていないためです。

しかし、複数回使用することが前提の、
今回の新型ワクチンの大瓶の場合、
防腐剤が添加されています。
しかも、使用は24時間以内に限定されています。

たとえば、糖尿病の患者さんの使う、
インスリンの注射のボトルがありますね。
その製剤は、ボトル入りのものは、
その都度注射器に吸って使用する訳です。
現在ではペン型の注射器具が主流ですが、
それでもまだ使われていることには、
間違いはありません。
その手技も注射の方法も、
基本的には新型ワクチンと違いはありません。
しかし、インスリンのボトルは、
場合によっては1ヶ月以上はそのまま使用し、
特にその使用の制限はありません。

当然ボトルに雑菌の混入は有り得る訳ですが、
それが肺炎や敗血症を来たした、
などという報告は存在しません。

それが何故かと言えば、
1つはボトル内に防腐剤、
殺菌剤が添加されているためであり、
かつ使用が皮下注射であるために、
直接血液の中に細菌が混入することは、
ほぼ100%ないからです。

この委員の方はおそらく、
僕のような末端の医者は、
どうせいい加減な手技でワクチンを使用しているのだろうから、
開封後1日以内、などという決まりは無視して、
何日もワクチンを使い、その間にボトルに感染しているのでは、
というお考えなのかも知れません。

しかし、実際には仮に数日の使用を行なったとしても、
インスリンのボトルと原則は同じなのですから、
そうした感染が起こる可能性は、
矢張り極めて低いのです。
ワクチンのボトルが1日以内の使用とされているのは、
感染のリスクというよりは、
それが生菌製剤に順ずる扱いのものであり、
万が一にも組成の変化が生じないように、
という考えからだと思われます。
決して感染のリスクのためではないのです。
仮にそれが感染のリスクのためだとすれば、
当然インスリンのボトルや目薬の容器も、
1日で使い切りでなくてはならない理屈になるからです。

この委員の方は、
血液に直接薬液を注入する点滴などの手技と、
皮下注射のワクチンの手技とを、
混同されている訳です。

おまけにこの委員の方は、
10ml のバイアルから20回吸引する、
と発言されるなど、
基本的にワクチンの手技を理解していません。
皆さんは良くご存知のように、
10ml のバイアルから、
過不足なく20人分のワクチンを吸引することは、
「神の手」の持ち主でないと不可能だからです。

新型ワクチン接種後の肺炎や敗血症の事例が多いことは事実ですが、
それは別にワクチン接種時の感染というような、
トンデモ話ではなく、
他に何らかの要因がある筈です。

僕の現時点での見解は、
抗原刺激によるサイトカインの上昇を介して、
感染症の増悪の後押しをするのではないか、
というものです。

ワクチンの副反応の検討会を行なうことは、
勿論有意義なことですが、
このような「常識以前の議論」に、
貴重な時間が割かれているのかと思うと、
非常に暗澹たる気分になります。

皆さんはどうお考えになりますか?

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
nice!(5)  コメント(2)  トラックバック(2) 

nice! 5

コメント 2

a-silk

ほんとの事を伝えれば、国民の健康の利益になり。
そうでない事を伝えれば、国民の健康以外の何処かに、利益がいくと思います。
損害を受けるのは、国民です。
今まで起きた、薬害のようですね。
ほんとの事を伝える、ジャーナリズムが、この国には減少しているのかも?
こんな方に効く、いい薬を、どこぞの製薬会社が、開発してくれれば、いいいのですが。
毎日、最前線の先生。有り難いです。

by a-silk (2010-01-10 20:04) 

fujiki

a-silk さんへ
コメントありがとうございます。

本当にもう少し本当のことが、
伝わり易い世の中になれば良いと思います。
by fujiki (2010-01-10 23:26) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 2