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肺炎球菌の話 [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はメールで一度ご質問のあった、
肺炎球菌ワクチンについての話です。

今日はそのイントロダクションとして、
肺炎球菌の話をします。

肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae )は、
より正確には肺炎連鎖球菌と呼ばれ、
その名の通り、粒がネックレスのように、
幾つかくっついた形で存在する細菌です。

ちなみに連鎖球菌の仲間には、
A群連鎖球菌があり、
これは所謂溶連菌と呼ばれる細菌で、
のどの炎症を起こしたり、
腎炎の原因になったりするポピュラーな細菌です。

この肺炎球菌は、
人間の直腸や膣に存在しています。
従って、お母さんの膣に感染があると、
出産の時に赤ちゃんに感染する危険性が高いのです。
肺炎球菌の一部は人間ののどに入り、
その粘膜に感染します。
大人の5~10パーセントの方は、
のどに症状の出ない感染が存在すると言われています。

普段はおとなしくしているこの細菌が、
身体の抵抗力が落ちると、
増殖し、深刻な感染症を起こします。
その代表はその名前の通り、肺炎です。
年齢的には2歳以下のお子さんと65歳以上の高齢者に多く、
その年齢層で重症化します。
高齢者はのどから肺の防御機能が低下するために、
のどの肺炎球菌がむせこみにより肺に入り、
そこで増殖します。
また、2歳以下のお子さんはこの細菌に対する、
充分な免疫の働きがまだないので、
重症化し易いのです。
小児と高齢者の肺炎で、日本で一番多い原因は、
両方とも肺炎球菌が原因で起こるものです。

小児の細菌性髄膜炎で一番多いのは、
インフルエンザb菌ですが、
それに次いで多いのは、
この肺炎球菌による髄膜炎です。
また、お子さんで繰り返す中耳炎の原因も、
この肺炎球菌が原因である比率が高いのです。

このように見てみると、
2歳以下のお子さんで病院に掛かったり、入院したり、
薬を飲んだりする原因として、
頻度的におそらく一番多いのが、
この肺炎球菌の感染症であると言っても、
そう間違いではないことが分かります。

肺炎球菌は細菌ですから、
抗生物質が有効です。
あなたのお子さんが中耳炎になり、
耳鼻科を受診すれば、
おそらく100パーセント抗生物質が処方されますよね。
その抗生物質は概ねこの肺炎球菌やインフルエンザ菌に、
効果を期待して処方されている訳です。

ところが…

日本では高頻度に、
多くの抗生物質に抵抗力のある、
パワーアップした肺炎球菌が出現し、
大きな問題になっています。
所謂耐性菌ですね。
中耳炎が一旦治っても、
のどは耐性菌の巣になっているのですから、
風邪を引けば抵抗力が落ちて、
その細菌が増殖し、
すぐにまた中耳炎に逆戻りです。
また耳鼻科に行って、また抗生物質を飲み、
また一旦は治りますが同じことの繰り返しです。
抗生物質はその度に新しい薬に変わりますが、
薬の値段が高くなるだけで、
その効果はあまり差があるようには思えません。

止むを得ない面があるとはいえ、
こんな治療は何処かが間違っています。

日本で何故耐性菌が多いのかと言えば、
強い抗生物質を、欧米と比べれば、
極端に少ない量で使用するという習慣があるからです。
その昔の呪術師は、
少量の毒物を少しずつ飲むことによって、
身体を毒に慣らし、毒に強くなったそうですが、
それと同じことを、肺炎球菌という呪術師に対して、
わざわざやってあげているようなものです。
敵である筈の耐性菌を創り出す訓練をしているのです。
こんな馬鹿な話があるでしょうか。

最近はその反省から、
大人の抗生物質の使用量は、
ほぼ海外と同じにされています。
しかし、今までの古い薬は、
古い使用量のままで放置されているのです。
おまけに小児の使用量は低く抑えられたままです。
明らかに抗生物質の以前の使用量は少な過ぎたのに、
誰もその責任を取る人はいません。
しかし、これが現実の日本の医療行政なのですから、
仕方がありません。

さて、抗生物質を使う以外に、
肺炎球菌の感染に対抗する手段はないのでしょうか?

そこで登場するのがワクチンです。

ワクチンで肺炎球菌の感染を予防出来れば、
垂れ流しのように抗生物質を乱用する必要もなくなります。

しかし、そこにも幾つかのハードルが存在していました。

ちょっと長くなりましたので、
この続きは明日にします。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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