SSブログ

ヒスタミン食中毒の話 [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から健診結果の整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

数日前に富山県の保育所で、
カジキマグロを原因とする集団感染が起こった、
との報道がありました。

原因の毒素は「ヒスタミン」と報道されています。

ヒスタミンは細菌の毒素ではありません。
そんなものが、どうして食中毒の原因なのでしょうか?

ヒスタミンは人間の身体の中にもある物質です。
その作用は複雑ですが、
たとえばかぜで鼻水が出るのは、
ヒスタミンの働きですし、
胃酸を多く出す作用もあります。
また、気管支や腸の筋肉を収縮させます。
細い血管は広がり、周りにむくみを作ります。
これが所謂蕁麻疹ですね。
ヒスタミンは人間の身体で、
アレルギーの症状の原因になるのです。

ヒスタミンは人間の身体の中では、
ヒスチジンという必須アミノ酸から、
ヒスチジン脱炭酸酵素の働きで作られます。
そして、ヒスチジンは赤身の魚に多く含まれています。
ヒスチジン自体は、勿論身体には害はありません。
そして、通常は少しヒスタミン自体を食べたところで、
腸の粘膜で分解されてしまうので、
特に作用はしないと考えられています。

しかし、大量にヒスタミンが身体に入れば、
全身の痒みや湿疹などのアレルギー症状が出ます。
蕁麻疹の酷いような状態ですね。
これを、「アレルギー様食中毒」と言います。

こうした食中毒を起こすのは、
大多数は小さなお子さんです。
これは当然のことで、
小さいお子さんではまだ腸の働きが充分でないので、
ヒスタミンを分解する力が弱いのです。
従って、同じ量のヒスタミンでも、
強い症状を出すことがあります。

今回のように、保育所や幼稚園での感染の事例が多いのは、
そのためなのですね。
大人の発生も稀にありますが、
何らかの腸の機能の低下が原因と考えられます。

さて、赤身の魚に含まれているのは、
ヒスタミンではなくヒスチジンです。
それなのに、
何故ヒスタミンの食中毒を起こすのでしょうか?

これは死んだ魚に付いた、
肉を腐らせる細菌が、
ヒスチジンをヒスタミンに変える酵素を持っているからです。
従って、腐敗した魚を食べると、
食中毒のリスクは高まります。
勿論新鮮な魚の方が、
食中毒のリスクは少なくなる訳ですが、
たとえば鯖は死んだ瞬間から、
体内でヒスタミンの生成が始まると言われ、
新鮮な状態であっても、
決して油断は出来ないのです。

ヒスタミンは細菌とは違って、
加熱調理をしてもなくなることはありません。
従って、解凍した段階で腐敗が始まっていれば、
その魚を焼いても煮ても、
ヒスタミン食中毒は起こり得るものなのです。

小さなお子さんでは、
ヒスチジンを多く含む魚の、
給食等への使用は、
慎重に考えた方が良さそうです。

今日はちょっと特殊な食中毒の話でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(1) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 1