SSブログ

尋常性乾癬と紅皮症の事例 [仕事のこと]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から事務仕事をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日は比較的目にする機会の多い、
皮膚の病気を見て頂きます。

まずこちらをご覧下さい。

尋常性乾癬の患者さんの背中の画像です。

原因不明の炎症性皮膚疾患で、
活性化したT細胞というリンパ球の、
皮膚での過剰な反応が、
こうした特徴的な湿疹を作り出しているのではないか、
と言われています。

治療はステロイドの塗り薬と、
紫外線療法。
ビタミンDの軟膏と、
重症例では免疫抑制剤も使われます。

現状では完全に治すことは困難で、
症状を悪化させないようにしながら、
うまく病気と付き合っていく、
という方針が主に取られます。

長い経過の患者さんは、
その辺のコツは心得ていて、
通常安定した時期の塗り薬は診療所でお出しして、
病状が不安定な時期は専門医を受診されているケースが、
今診療所で診ている方の一般的経過です。

それでは次をご覧下さい。

これはある若い男性の背中の皮膚です。
全体に皮膚が赤くざらついていて、
触るとぼろぼろと皮膚の滓が落ちます。
では次を。

同じ方のお腹の画像です。
矢張り同じように、乾燥して、
まるで砂漠のように潤いがありません。
このように、炎症で乾燥した皮膚が、
全身の90パーセント以上を占めた状態を、
「紅皮症」と呼んでいます。

「紅皮症」の原因は様々ですが、
アトピー性皮膚炎や老人性の湿疹が、
悪化して起こることが多いようです。

この方の例では、
アトピー性皮膚炎で、
以前から治療をされていたのですが、
ステロイド剤の副作用の話を聞いて、
恐怖感を持ち、
「ステロイドを使用しない」という医院を探して、
主治医を変えました。

ところが…

漢方薬だけで治療を開始したところ、
湿疹が悪化して全身の痒みが強くなり、
全身の皮膚を掻き毟っているうちに、
いつしか画像のような状態になってしまったのです。

そのうちに身体が酷くだるくなり、
寒さ暑さに身体が順応出来なくなりました。
寒い日は暖房をがんがん付けて、
滅茶苦茶に厚着をしても、
凍えるように身体が冷え切りますし、
逆にちょっと暑くなると、
裸になっても全身がひりつくような耐え難さです。
幾ら水を飲んでも、
砂漠にいるように口が渇き、
おしっこの量は減って、足がむくみます。

これが全て、
紅皮症の症状です。
身体の90%以上の皮膚で、
汗を出して体温調節をすることが出来なくなると、
身体はだるくなり、
暑さ寒さに弱くなります。
ボロボロと落ちる皮膚に蛋白を取られるので、
食事をちゃんとしていても、
低蛋白の状態となり、
血管の中に水分を保てなくなるので、
口が渇くのに、足はむくむのです。

ステロイドは勿論副作用のある薬です。
しかし、この方の湿疹の治療には、
必要不可欠な薬でもありました。
それを中止して漢方薬のみの治療に移り、
その重症度をしっかり判断しなかったので、
こうした結果になったのです。

ステロイドは使い方が間違っていなければ、
効果は確立された薬です。
ステロイドの効果が立証されている病気で、
ステロイドを使用しない治療をする場合は、
病態を適切に判断し、
最後まで責任をもって診療に当たる、
主治医の存在が不可欠だと僕は思います。

今日は比較的よく見られる、
特徴的な皮膚の病気を見て頂きました。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(2)  コメント(4)  トラックバック(0) 

nice! 2

コメント 4

iyashi

尋常性乾癬の患者さんにチラーヂンSとメルカゾールが処方されているのですが、どのような作用機序があるのですか?
by iyashi (2009-03-13 14:43) 

fujiki

iyashiさんへ
読んで頂きありがとうございます。
それは多分、バセドウ病を合併している患者さんではないでしょうか。
メルカゾールとチラジンを併用するのは、
僕の知る限りでは、
バセドウ病の治療の時だけで、
それも僕は肯定派ですが、
そんな治療はおかしい、
と否定される先生もいます。
甲状腺ホルモンは、
免疫系に対する作用もあり、
確かに尋常性乾癬に効かないとも言い切れませんが、
メルカゾールは甲状腺以外に、
作用点はない筈です。
もし本当に尋常性乾癬単独に対して、
そうした治療がされているとしたら、
正直全く分かりません。
何か情報があれば教えて下さい。
by fujiki (2009-03-13 22:53) 

aika

私は乾せんです。
今私は15歳で、今年高校に入学しました。
しかし、男子が以上に多い為
体操服になるのも躊躇ってしまいます…

とにかく大豆くらいの大きさのかさぶたが
色んな所に出来ています…
夏になったら…………………


一生治らないと言われて、とてもショックでした。




本当に、一生治らないんでしょうか…; ;
by aika (2011-04-21 18:13) 

fujiki

aika さんへ
コメントありがとうございます。
そのご年齢で乾癬の診断は難しく、
そのように見えても、
普通の湿疹ですぐ治ることもよくあります。
治療を継続しながら、
まずは経過をみることではないかと思います。
by fujiki (2011-04-21 20:21) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0