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胃薬を飲み続けると大腸癌になり易いのか? [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談に、
都内の2箇所を廻ります。

それでは今日の話題です。

「プロトンポンプ阻害剤」というタイプの薬があります。
胃酸を強力に抑える一種の胃薬で、
多分現在一番よく使われている胃薬でもあります。
商品名で言うと、タケプロン、オメプラゾン、パリエットなどが、
このタイプの薬です。
皆さんの中にも、多分飲まれている方が、
おいでになると思います。

胃潰瘍や十二指腸潰瘍、
逆流性食道炎の治療の他、
ピロリ菌の除菌治療にも使われています。

アレルギー以外には、
それほど短期的な副作用も少ない、
基本的には安全性の高い薬ですが、
この薬を長期飲み続けていると、
身体に悪い影響が出るのではないか、
という説が、
開発当時から言われていた薬でもありました。

そのうちの1つはこの薬を飲み続けていると、
大腸癌になり易いのではないか、
という仮説で、
もう1つは腸の感染症にかかり易くなるのではないか、
という仮説でした。
その一方で、
この薬には癌の転移を抑える効果があるのではないか、
という報告もあります。

プロトンポンプ阻害剤は癌を起こし易くするのでしょうか、
それとも癌を予防するのでしょうか、
それともその両方とも間違っているのでしょうか。

その点について、
比較的最新のデータを元に、
検証してみたいと思います。

それではまず、プロトンポンプ阻害剤とは何か、
という点から話を進めます。

1982年に日本で発売されたシメチジンに始まる、
H2ブロッカーという薬が、
胃潰瘍の治療において、
画期的な役割を果たしたことは、
昨日もお話しました。

それではこれで、
胃潰瘍や十二指腸潰瘍に悩む方が、
いなくなったのかと言うと、
そうではありません。
一旦は治った潰瘍が、
薬を止めると再発したり、
薬を飲み続けていても再発する事例が、
結構あることが分かって来たのです。

一昨日もお話したように、
H2ブロッカーは全ての胃酸を出す刺激を、
抑える訳ではありません。
ヒスタミンの刺激を抑えるだけなのですが、
胃酸を出す刺激には、
ヒスタミン以外にガストリンやアセチルコリンもあります。

従って、より強力に全ての胃酸の分泌刺激を、
抑える薬が出来ないだろうかと、
考えた訳です。

その時着目されたのが、
プロトンポンプの存在です。
胃酸は胃壁の細胞から、
分泌されているのですが、
それはプロトンポンプという仕組みによって、
最終的に作られているのです。
それを完全にブロックしてしまう、
というのがプロトンポンプ阻害剤という薬の効果です。

言ってみれば、
プロトンポンプ阻害剤は、
胃酸を出す蛇口を、元から止めてしまうような薬です。
従って、ヒスタミンばかりでなく、
ガストリンやアセチルコリンによる、
胃酸の分泌刺激も、
同時に抑えてしまうのです。
極めて強力な、
胃酸抑制剤です。

1991年に発売された、
オメプラゾール(商品名オメプラゾンなど)が、
その最初の薬です。

皆さんもご存知のように、
この薬の使用とピロリ菌の発見およびその除菌治療により、
胃潰瘍の治療が更に格段の進歩を遂げ、
殆どの胃潰瘍と十二指腸潰瘍は、
コントロールが可能な病気となったのです。

ただ、ここで1つの疑問があります。

プロトンポンプ阻害剤により、
胃酸は強力に抑えられ、
通常は強い酸性の状態にある胃の中は、
その薬を常用することにより、
中性に近い状態にまで変化します。
pHと言う数値が、
1~2の状態から、5~6の状態にまで変わる、
と言われています。

しかし、そのそも胃酸は細菌などを殺したり、
消化を進めたりして、
身体の環境を守る重要な働きをしている筈です。
その酸を強力に抑えてしまって、
そのことによる弊害はないのでしょうか?

実は幾つかの問題点が指摘されています。

明日はそれについて話を進めます。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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