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消えた肺癌の話 [仕事のこと]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

年内の診療は今日で終了です。
心療内科の専門外来と、
栄養指導もあり、
せわしない1日になりそうな予感がします。

A型インフルエンザの流行は本格的なようで、
昨日も何人かの患者さんから検出されました。
皆さんもご注意下さい。

それでは今日の話題です。

今日は消えた肺癌の話です。

患者さんは80代の男性です。
糖尿病のために定期的に診療所の外来に、
受診されていました。

一年に一度は胸のレントゲンを撮影していましたが、
しつこい咳と痰とが、
一ヶ月以上続いたため、
その時点で胸の写真を撮りました。
それがこれです。

何処がおかしいか分かりますか?
条件の悪い画像なので、
分かり難いかも知れません。
次をご覧下さい。

この赤い矢印の先にしこりが見えます。
肺癌を疑いCT を撮影しました。
次をご覧下さい。

CT の画像です。
右の肺の上の方の断面ですね。
矢印の先の白い部分がしこりです。
この画像だけを見ると、
肺癌を疑ってよさそうです。

ただ、しこりの広がりをよく見ると、
どちらかと言えば、
楔形をしています。
これはどういうことかと言うと、
肺の区画に沿って広がっていて、
それを破壊していないのです。
癌ならもっと乱暴であってもいい、と言う気がします。

この患者さんには、
認知症がありました。
それも軽いとは言えないレベルです。
それで、ご家族とも相談し、
そのまましばらく様子を見ることにしました。

では次をご覧下さい。

これは前回から2ヶ月後のレントゲン写真です。
ちょっとこれも画像が悪く、
分かり難いかも知れませんが、
矢印の先にあったしこりが、
完全に消えているのです。

癌が何もせずに消えてしまったのでしょうか?

勿論違いますね。
結論から言えば、
これは癌ではなく炎症だったのです。
肺炎は通常こうした像を示さないのですが、
稀にこうした「しこり」のような形態を取ることがあるのですね。

「癌とは治癒しない炎症である」という言葉があります。

以前膵臓癌の時にお話したように、
癌と炎症というのは、
それほど見分けが簡単なものではないのです。

「肺癌が治療しないのに消えた」みたいな話がありますが、
その実体はおそらくはこうした事例なのだと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日になりますように。

石原がお送りしました。
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