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チーム・バチスタの栄光 [ミステリー]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は休みなので、
ミステリーの話などします。

2年前のベストセラーを今更なんですけど、
テレビドラマも始まるので重い腰を上げて、
先週の仕事の合間に読みました。

前半は主人公のキャラはブレ気味だし、
現在形を多用したライトノベルみたいな薄味の文章だし、
「医療過誤」への取り組みなど、
ちょこっと社会問題を入れて、
真面目読者の気を惹く所など、
どちらかと言えば反感を感じつつ読んでいたのですが、
ミステリーとしての仕掛けは、
意外に巧みに出来ていて、
重要人物のある秘密が、
明らかになる辺りで、
なるほど、と思い、
ラストの盛り上げも、
定石通りですがなかなかでした。

しゃくですけど、
確かにうまく出来ていますね。

ただ、
「キャラが立っている」という批評が多いんですが、
それはどうかな、と思います。

探偵役2人のキャラは、あまり上出来ではないですね。
特に田口公平という人物に関しては、
設定も苦しいし、前半と後半では、
明らかに性格も変貌してしまっています。
一貫した性格に描き切れなかったんですね。

その意味では、主人公を女性に変えた、
映画の脚色はクレヴァーだと思いますし、
さすがですね。

白鳥という名探偵役に関しては、
明らかに「トリック」の阿部寛をモデルにしていて、
結果的にそのままのキャストで映画になったのですから、
その意味では作者の見立ての勝利なんでしょうね。
ただ、ちょっとあざとい気はします。

些細なことなんですが、
田口公平という人物が、
先輩の手を付けた研究を、
続けるようにと言われるのに、
やる気がなく放り出してしまい、
研究データも燃やしてしまう、
という件があります。

これはちょっとひどいな、
と僕は思いました。
作者の研究というものに対する悪意を感じましたね。

先輩の書いた動物実験のデータを、
焼却炉にくべて、
それが動物への供養だ、
という感性には、
違和感を覚えます。

しかも、別に動物愛護の精神でそうする訳ではなく、
その時の気分でそうするだけなのです。

僕の知っている大学病院の医局というのはね、
良くも悪くも研究馬鹿の集団でした。
この小説にはそうした雰囲気は微塵もないんですね。
まあ、フィクションなんですから、
どうでもいいことなのかも知れませんが、
この小説を読んで、
ああ大学病院とはこういう所なのか、
と思う人がいるとしたら、
それは間違いなので、
そのことだけはここで強調しておきたいと思います。

臨床と研究とはね、
この作者の言うように対立するものではないんです。
科学的思考を純粋化したものが実験で、
臨床においては、
常に実験に対する時と同じ、
研究心と科学的思考とを、
持たなければならないんです。
それが、科学者としての医者というものです。

何となく、お分かり頂けるでしょうか。

「流星の絆」と同じように、
これも二時間ドラマで充分な内容なので、
多分色々と手は入れるのでしょう。
原作の良さは保った作品になればな、
とは思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんもいい休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。

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