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ビタミンDとその副作用 [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

月曜日というと、
東京はいつも雨ですね。
昼の往診までには晴れて欲しいな、
と僕の今の願いはそれだけです。
朝から紹介状を書いて、
それから今PCに向かっています。

それでは、今日の話題です。

先週の「クローズアップ現代」で、
高齢者に漫然と医者が薬を使って、
副作用に気付かない例が多い、
という話をしていました。

もっと具体的な薬の話があるかと思ったのですが、
内容は曖昧なもので、
ちょっと期待外れの内容でした。

ただ、唯一薬の実例が出ていたのが、
「ビタミンD」で、
これにより認知症のような症状が出て、
見逃されていた、
と述べられていました。

ビタミン剤で何故認知症になるのか、
不思議に思われた方がいるかも知れません。

ちょっとその話をします。

ビタミンDは、骨を作るのに、
重要な働きをしている物質です。

ビタミンDは、ビタミンという名前が付いてはいますが、
本来はホルモンと呼ばれるのが適切で、
ステロイドのホルモンの仲間です。

ビタミンというのは、身体の中では合成されないので、
食事の形で人間が取り入れなければならない物質のことですが、
ビタミンDは、食事にも含まれてはいますが、
身体で合成することも出来るのです。

ですから、本来はビタミンと呼ぶのは間違いなのですが、
歴史的に最初はビタミンだと思われていたので、
そのまま名前が変わっていないのです。

ちょっとややこしいですね。

ビタミンDは、
紫外線の働きで、
コレステロールから皮膚で合成されます。

お日様に当たる時間が短いと、
骨が弱くなる、
と言われるのはそのためですね。

皮膚で合成されたビタミンDは、
次に肝臓に入り、水酸化という処理を受けます。
このビタミンDが、
主に血液の中を廻っています。
でも、このビタミンDはまだその骨への作用はありません。
最終的に腎臓で再び水酸化の処理を受け、
それでようやく、効き目のあるビタミンDとなるのです。
これを、活性型ビタミンDと呼んでいます。

この活性型ビタミンDには、
幾つかの働きがあります。
まずその1つはカルシウムの吸収です。
ビタミンDは腸に働いて、
カルシウムの吸収を促進します。
それから、骨に直接働いて、
健康な骨を作るのに、
不可欠な要素となります。

ビタミンDが生まれつき不足している病気を、
「くる病」と言います。
健康な骨が作られず、
骨は湾曲して折れ易くなります。

ビタミンDは、一般的には年齢と共に、
不足し易くなるのです。
従って、特にカルシウムの吸収が落ちて、
骨粗鬆症の予備軍のような状態にあるご高齢の方の場合、
適切な量のビタミンDを薬として補うことは、
間違った判断ではありません。
ビタミンDは、基本的には安全性の高い薬なんです。

副作用も端的に言えば、
1つしかありません。
高カルシウム血症ですね。

元々がカルシウムの吸収を高める物質なので、
過剰になると、血液のカルシウムが上がって、
その症状を出すのです。

まず第一が脱水症状と、
吐き気や頭痛ですが、
確かに錯乱や認知症のような症状を、
出すこともあるとは言われています。

ビタミンDの錠剤は0.5μg のものが一般的で、
僕は基本的に骨粗鬆症の場合、
その量しか出しません。
ご高齢の方でも、
その量で高カルシウム血症となることは、
皆無とは言わないまでも、
極めて稀だとは思います。

従って、ビタミンDは安全性の高い薬ですし、
血液のカルシウムさえ定期的に測っていれば、
殆どの副作用はチェック出来るという点でも、
使い易い薬です。
問題は患者さんが高度の脱水にある時ですが、
それを言えば、全ての薬はそうした場合にはリスクがあるのですから、
殊更にビタミンDを取り上げる必要はないと思います。

それでは何故、
番組ではそのことだけを取り上げていたのでしょうか。

他の薬を取り上げることに、
何らかの支障があったのかな、
と思わなくもありません。

ビタミンDは、まだ様々な可能性を秘めた薬なんですよね。
骨粗鬆症の治療についても、
使い方を工夫すれば、
もっと画期的な効果の出る可能性がある、
と僕は思います。
今度はそんな話も少ししたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コメント 8

AKO

とてもわかりやすい説明で、ビタミンDのことがよく理解できました。
ありがとうございます!
by AKO (2008-10-26 01:34) 

fujiki

AKO様

コメントありがとうございました。
また覗いてもらえれば、うれしいです。
by fujiki (2008-10-26 11:56) 

あやこ

ありがとうございました。
私は骨粗鬆症で、1年前からボナロンといっしょにビタミンDを処方されていますが、それ以前からファンケルのカルシウムをのんでおり、これにもビタミンDが添加されているので、過剰になるのではないかと情報を求めました。
先生は市販品のカルシウム製剤をのむことについて、どうお考えですか?
by あやこ (2009-01-31 20:18) 

fujiki

あやこさんへ
薬のビタミンDは活性化ビタミンDで、
市販のサプリメントはネイティブのDなので、
分量も少ないですし、
特にご心配はいらないと思います。

ただ、ボナロンとビタミンDをお飲みになっていて、
それにカルシウムのサプリメントを追加しても、
あまり付加的な意味合いはないかも知れません。
食事から通常の量のカルシウム
(600mgあれば十分だと僕は思います)
が取れていれば、
それ以上飲んでも、
尿か便に出てしまうだけだからです。

尿のカルシウムを測ると、
もう少し定量的なことが言えますが、
通常はそこまでする必要はないかも知れません。

この辺の話は僕も興味があるので、
今度また記事にしたいと思います。
その時またお読み頂ければうれしいです。

by fujiki (2009-02-01 22:42) 

和博

すごく分かりやすかったので助かりました。
これからも記事拝見させていただきます。
by 和博 (2011-09-09 18:01) 

太郎坊

とてもわかりやすい解説で参考になりました。私の70代の母も骨粗鬆症対策で(年齢相応の骨密度)ビタミンDだけを飲んでいます。あとは持病なしで一切医薬品は摂っていません。
長年、スカイカルシウムというサプリを飲んでいますが、これを続けるべきか、むしろ高カルシウム症を懸念してやめるべきか?迷っています。ヨーグルトなどの摂取をすすめられますが、あまり合わないらしく、続きません。血液検査では、コレステロールだけが、160台から170のあたりです。(LDC)あとは正常値内です。
カルシウムのサプリは必要かどうか、副作用の懸念はあるでしょうか?
by 太郎坊 (2012-04-09 13:41) 

fujiki

太郎坊さんへ
コメントありがとうございます。
サプリメントの適応量のレベルで、
ビタミンDとカルシウムを摂取することは、
基本的には問題はないのではないかと思います。
ただ、これは体質にもよりますので、
1年に一度くらいは、
血液のカルシウム濃度も、
チェックしておいた方が安全だとは思います。
by fujiki (2012-04-10 08:29) 

太郎坊

ありがとうございました。
これで安心できました。
血液検査でのカルシュウム濃度のことは全く思いが至りませんでした。

by 太郎坊 (2012-04-18 12:31) 

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