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ADHD(注意欠如・多動症)への自動車運転訓練の有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ADHDの運転模擬訓練.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2022年12月1日掲載された、
発達障害と診断された患者さんにおける、
自動車運転学習プログラムの有効性についての論文です。

ADHD(注意欠如・多動症)は、
12歳以前から認められる、
不注意と落ち着きのなさと衝動性などを特徴とする、
発達障害の一種で、
大人になるまで診断されないケースが多いことより、
近年注目されている疾患概念です。

ADHDを持つ方でも運転免許の取得は可能ですが、
その症状の特徴から運転中の脇見が多くなりやすいことが指摘され、
それが事故に結び付くことがないように、
注意が必要であると考えられています。

自動車教習所によっては、
取得時にADHD向けのコースが用意されていたり、
取得後もサポートの体制を持つところもあるようです。

ただ、そうしたサポートに、
現実にどのような効果があり、
それによりどの程度事故のリスクが軽減するのか、
というような点については、
あまり科学的なデータがないのが実際です。

今回の研究はアメリカにおいて、
年齢が16から19歳でADHDと診断され、
自動車免許を持つ152例を登録し、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方は通常の自動車運転教習を受け、
もう一方はそれに加えて、
集中力と注意力を高めるための、
運転のシミュレーションを含めた強化プログラムを施行して、
その有効性を比較検証しています。

その結果、
強化プログラムの施行により、
1回の運転シミュレーション中に、
2秒以上道路から目を逸らす「脇見行為」は、
プログラム施行後1か月では、
未施行群で28.0回に対して施行群で16.5回、
プログラム施行後6か月では、
未施行群で27.0回に対して施行群で15.7回で、
施行1か月の時点で強化プログラムは脇見行為を、
36%(95%CI:0.52から0.76)、
施行6か月の時点で36%(95%CI:0.52から0.76)と、
それぞれ有意に低下させていました。

また、訓練後1年間の実際の運転における衝突事故や異常接近の発生リスクは、
強化プログラムの未施行群で5.6%に対して施行群は3.4%で、
実際の衝突事故やそれに準じるリスクを、
強化プログラムは40%(95%CI:0.41から0.89)、
こちらも有意に低下させていました。

このようにADHDの特性に特化した強化プログラムの活用により、
実際に事故のリスクが低減した意義は大きく、
今後こうしたドライバーの特性に合わせた訓練を、
適宜自動運転と組み合わせることにより、
自動車事故のリスクが減少することを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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