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SGLT2阻害剤の慢性腎障害への有効性(2022年メタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降が石原が外来を担当する予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
SGLT2阻害剤の腎障害への効果.jpg
Lancet誌に2022年11月19日掲載された、
糖尿病の治療薬の腎障害への有効性についての論文です。

SGLT2阻害剤は、
尿へのブドウ糖の排泄を増加させることにより、
糖尿病のコントロールを改善する作用を持つ薬剤ですが、
心血管疾患のリスクを低下させる作用のあることが確認され、
慢性心不全の患者さんへの治療薬としても、
糖尿病の有無に関わらず使用されるなど、
その使用適応が拡大されて注目を集めています。

糖尿病と合併した慢性腎臓病の患者さんにおいても、
その進行予防や予後の改善において、
SGLT2阻害剤が有効であることが確認されています。

ただ、糖尿病のない慢性腎臓病の患者さんにおいても、
同様の有効性があるかどうかについては、
まだデータが限られているのが実際です。

これまでにも、
SGLT2阻害剤の慢性腎臓病に対しての有効性を検証した、
メタ解析の論文は発表されていますが、
2022年に2つ大規模な介入試験の結果が報告されているため、
今回の研究ではその新しいデータを含めて、
これまでの主だった臨床データをまとめて解析することにより、
この問題の再検証を行っています。

これまでの13の精度の高い臨床試験に含まれる、
90409名の患者データをまとめて解析したところ、
SGLT2阻害剤は慢性腎臓病の進行のリスクを、
偽薬と比較して37%(95%CI:0.58から0.69)有意に低下させていました。
この進行予防効果は糖尿病の有無に関わらず、同等に認められました。
同様にSGLT2阻害剤は、
急性腎障害のリスクを23%(95%CI:0.70から0.84)、
心血管疾患による死亡のリスクを14%(95%CI:0.81から0.92)、
それぞれ有意に低下させていて、
このリスク低下も糖尿病の有無に関わりなく同等に認められました。

このように、
今回の最新のデータを含めた検証において、
SGLT2阻害剤は糖尿病の有無に関わらず、
慢性腎臓病の進行予防効果を有することが確認されました。

この薬については、
脱水や尿路感染症の有害事象が想定されるため、
当初腎障害には不向きなのではないかと考えられていましたが、
その後の研究により、
他剤に勝る腎保護効果が確認されており、
今後糖尿病のない患者さんにおいても、
積極的に慢性腎臓病の治療薬として、
使用される流れになるかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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