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胆石治療薬による新型コロナウイルス感染予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ウルソとCOVID-19.png
Nature誌に2022年12月5日掲載された、
胆石や肝障害の治療薬と、
新型コロナウイルス感染症との関連を検証した、
非常に興味深い報告です。

新型コロナウイルスが、
人間の細胞表面になるACE2という受容体に結合して、
それを足掛かりにして細胞に感染するという知見は、
以前より知られています。

従って、効率的にACE2の活性を低下させることが出来れば、
新型コロナウイルスの感染を予防することが出来る、
という可能性があります。

ただ、ACE2の発現がどのように調節されているのかについては、
これまであまり明確なことが分かっていませんでした。

今回の研究ではネズミなどの動物実験や、
摘出されたヒトの臓器を使用した実験によって、
FXRという胆汁酸の核内受容体が、
ACE2の発現を調節していて、
このFXRの発現を抑制することにより、
ACE2の発現も抑制することを確認しています。

ウルソという薬があります。
これは胆汁酸の一種ですが、
脂質代謝を改善し脂肪肝炎や胆石症の治療薬として、
広く使用されています。
ウルソのFXRに対する作用は複雑ですが、
結果としてFXRに拮抗し、
その発現を抑制する効果を持っています。

それではウルソを使用することにより、
ACE2が抑制されて、
新型コロナウイルスの感染も予防されるのでしょうか?

今回の動物実験とヒトの臓器を使用した実験では、
ウルソを使用することにより、
FXRの発現が低下し、
細胞のACE2の発現も低下することが確認されました。

最後に8人のボランティアに体重1キロ当たり15㎎のウルソを5日間使用し、
その前後で鼻粘膜のACE2の発現を測定した実験では、
ACE2のレベルはウルソの使用により有意に低下していました。
また慢性肝疾患の患者の疫学データからは、
ウルソ使用者で新型コロナの重症化が少ない、
という知見も得られました。

今回の論文は敢くまで基礎実験のデータが主体で、
臨床的なデータは極僅かに過ぎませんが、
一般に安全に使用されている安価な薬剤で、
新型コロナウイルスの感染が抑制される可能性がある、
という知見は非常に興味深く、
今後は臨床的な検証を期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。


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