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「ドクター・ストレンジ」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも、
石原が診療を担当する予定です。

今日は土曜日なので趣味の話題です。

今日はこちら。
ドクターストレンジ.jpg
マーベルコミックのスーパーヒーローものの新作、
「ドクター・ストレンジ」をアイマックス3Dで観て来ました。

マーベルコミックの映画化は暗い話が多いですし、
世界観や正義の捉え方も嫌らしいし、
続編に次ぐ続編で多くの作品が絡み合っていて、
知識がないと何が何やら人物関係が分からないことが多いので、
あまり好んで観ないのですが、
今回の作品はニューヒーロー登場編なので、
予備知識は必要ありませんし、
上演時間も115分と長過ぎず、
見どころは満載なのでなかなか楽しめました。

自動車事故に遭った天才外科医が、
チベットの秘法で時空を操る魔術師となり、
闇の力を復活させようとする悪党と戦うのですが、
魔術の師匠にも秘密があって…
と言う感じでストーリーも凝っていますし、
語り口も巧みで人物も魅力的なので、
娯楽作品としては誰でも楽しめる作品に仕上がっています。

設定は矢張りちょっと嫌らしくて、
世界の秩序を守るスポットが3か所あって、
それがニューヨークとロンドンと香港、
ということになっています。
その3か所が悪に制圧されると世界は終わりなのです。
要するに世界はアメリカとイギリスと中国とで分け合って、
支配されているのが正義という発想で、
トランプさんの頭の中みたいな世界です。
まあでも多分、その通りなのだから仕方がありません。

何よりこの作品は映像が圧倒的で、
「インセプション」の町が折りたたまれるビジュアルが、
圧倒的な大スケールで繰り広げられるのですが、
本当に細部まで目が眩むが如くに作り込まれていて、
3D効果も圧倒的です。
また、主人公が多重世界に投げ込まれるような場面があるのですが、
そこのビジュアルも本当に圧倒的で、
実際に別世界を体感したような気分になります。

これは絶対大画面の3Dで体感する意義があります。

凄まじいですよ。

ただ、この作品はそれだけではなくて、
キャストも非常に魅力的なキャラが揃っています。

主人公のベネディクト・カンバーバッチの、
尊大だけれど憎めない感じも良いですし、
かつての同僚の救急医の女性を演じた、
ヒロインのレイチェル・マクアダムスもとても良い感じです。
魔法合戦なのですが、
死に掛けた時はガールフレンドの救急救命医に、
病院のERで助けてもらうのです。
こういう発想はクレヴァ―で楽しいと思います。
更には主人公の師匠を演じるティルダ・スウィントンが、
人間離れのした美しさで、
ストーリーの核になっています。

もちろん観終わった瞬間に忘れてしまうような、
そんな映画ではあるのですが、
ビジュアルは現在の特殊技術の到達点と言って良い完成度で、
ストーリーの完成度も高く、
キャストも充実しているので、
暇つぶしに何か映画を、という向きには、
是非にとお勧めしたいと思います。
是非大画面の3Dでご覧ください。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。

誰も教えてくれなかった くすりの始め方・やめ方: ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ

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  • 作者: 石原藤樹
  • 出版社/メーカー: 総合医学社
  • 発売日: 2016/10/28
  • メディア: 単行本


バセドウ病の治療後の再発とそのリスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
バセドウ病の治療後再発のリスク.jpg
昨年のThyroid誌に掲載された、
飲み薬によるバセドウ病の治療終了後の、
再発のリスクとそれに関わる因子についての論文です。

バセドウ病は甲状腺機能亢進症を来す病気の代表です。

バセドウ病の治療には、
大きく分けて3つの方法があります。
抗甲状腺剤という飲み薬による治療と、
放射性ヨードによるヨード治療、
そして甲状腺を一部を残して切除する手術療法です。

このうちのどれを最初に選択するかは色々な考えがあり、
必ずしも一定はしていませんが、
日本においては禁忌でなければ抗甲状腺剤による薬物治療が、
第一選択となることが一般的です。

抗甲状腺剤による治療の一番の問題は、
一旦治療を行なって寛解と判断され、
治療を終了しても、
その後数年以内にかなりの確率で再発が起こる、
ということです。

上記文献の記載によれば、
ヨーロッパの報告では再発率は40から50%で、
アメリカの報告では70から80%とされています。

日本においては概ねもっと良い数値が報告されていて、
2年間での再発率が30%程度というデータもあります。
ただ、一方で海外ではせいぜい2年は超えない治療期間が、
日本では数年から10年を超えることも稀ではない、
という欠点も同時にあります。

問題は再発をしやすい患者さんと、
再発のリスクの少ない患者さんとを、
見分ける方法がないかどうか、ということです。

甲状腺の治療前の大きさが関連するという報告や、
18か月を超える治療期間では再発が少ないという報告、
喫煙者は再発しやすいという報告などがありますが、
あまり一般臨床において、
価値を持つようなものではありません。

今回の検証はイギリスの単独施設のものですが、
266名のバセドウ病の患者さんに対して、
カルビマゾール(メルカゾールとほぼ同じ)の治療を、
中央値で18か月継続して中止しています。
一部の患者さんはプロピルチオウラシルを使用し、
また一部の患者さんはT4との併用療法を行っています。

今回再発の有無のポイントとしているのは、
TSH受容体抗体の測定値です。

治療終了後1年の時点で31%の患者さんが再発し、
4年後には70%の患者さんが再発しています。
再発した患者さんは、
診断時の年齢が若く(平均39歳)、
診断時のTSHレセプター抗体の測定値が高く(平均8.8IU/L)、
治療終了時のTSHレセプター抗体の測定値も高い(平均1.2IU/L)),
という特徴が認められました。

治療中止の時点で、
TSHレセプター抗体の測定値が0.9IU/L未満であると、
中止4年後の再発率は58%であったのに対して、
それが1.5IU/Lを超えていると、
82%という高率でした。

また、診断の時点でのTSHレセプター抗体が5IU/L未満であると、
治療終了後4年での再発率が57%であったのに対して、
それが12IU/Lを超えていると、
その再発率は84%という高率でした。

つまり、
治療開始の時点と治療終了時のTSHレセプター抗体の数値が、
治療終了後の再発率に大きな影響を与えている、
と言う結果になっていました。

この問題は現状決め手はないのですが、
個人的には2から3年未満での治療の中止を目指して、
甲状腺腫、TSHレセプター抗体値、サイログロブリン値などの安定を指標として、
試行錯誤しながら治療を行なっているところです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

PCSK9遺伝子のメンデル無作為化解析 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
PCSK9阻害剤とメンデル遺伝子解析.jpg
今年のLancet Diabetes Endocrinology誌に掲載された、
PCSK9阻害剤というコレステロール降下剤の新薬と、
2型糖尿病リスクとの関連を、
遺伝子変異を活用した解析法により、
検証した論文です。

これは昨年の12月に同様の論文が、
New England…誌に掲載されていて、
その時にブログ記事にしています。

今回の研究も昨年の論文を補足するような内容で、
ほぼ同一の結論に至っています。

つまり、これはほぼ事実となったと考えて良さそうです。

コレステロール降下剤としては、
長くスタチンというタイプの薬剤が主流でした。
スタチンはコレステロール合成酵素の阻害剤で、
その作用は強力で安定しており、
心血管疾患の予防効果のあることも実証されています。

ただ、幾つかの有害事象があることも知られています。

そのうちの1つが、新規2型糖尿病発症リスクの増加です。

遺伝子の解析からは、
この血糖上昇はスタチンによるコレステロール合成酵素の阻害それ自体と、
リンクしていることがほぼ明らかになっていて、
その意味では解消することは困難な有害事象です。

最近スタチンと同じような有効性を持つ、
コレステロール降下剤の新薬として、
PCSK9阻害剤という注射薬が発売されました。

スタチンが肝臓でのコレステロール合成を阻害する薬であったのに対して、
このPCSK9阻害剤は、
細胞へコレステロールを取り込むのに必要な、
LDL受容体を増やす、
というメカニズムの薬です。

PCSK9というのは、
LDL受容体を分解する酵素なので、
それを阻害することによって、
LDL受容体は増加し、
それによりコレステロールがより多く細胞に利用されて、
血液中のコレステロールが低下する、
という仕組みです。

この薬は注射薬として、
2週間から4週間に一度皮下注射として行われ、
従来のスタチンより強力に、
LDLコレステロールを低下させることが確認されています。

それでは、PCSK9阻害剤とスタチンとを比較した時、
糖尿病の発症リスクには、
どのような違いがあるのでしょうか?

PCSK9阻害剤の臨床データはまだ限られていて、
長期成績や長期の安全性はまだ確立されていません。

そこで今回の研究では、
PCSK9阻害剤のターゲットである、
PCSK9遺伝子の変異を解析することにより、
その検証を行っています。
遺伝性変異のあるなしは無作為に決められているとして、
その比較を行う、
メンデル無作為化解析という手法です。

その結果、
今回の検討においても、
PCSK9遺伝子の変異により、
LDLコレステロールが低くなると、
それにリンクして空腹時血糖が増加し、
体重も増加して、
海外のメタボの基準であるウエスト・ヒップ比も増加していました。
コレステロールが38.7㎎/dL低下するごとに、
1.6mg/dLの血糖上昇が起こるリスクがあると計算されています。

つまり、PCSK9阻害剤を使用するということ自体で、
矢張りスタチンと同じように、
糖尿病のリスクはやや増加する可能性が高い、
と想定をしておいた方が良さそうです。

それでは今日はこのくらいで。

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石原がお送りしました。

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よろしくお願いします。

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  • 作者: 石原藤樹
  • 出版社/メーカー: 総合医学社
  • 発売日: 2016/10/28
  • メディア: 単行本


偏桃体の活性化と心血管疾患との関連について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
ストレスによる動脈硬化進行のメカニズム.jpg
今年1月のLancet誌にウェブ掲載された、
ストレスによる脳の反応と、
身体の反応との関連を検証した論文です。

慢性のストレスが動脈硬化を進行させ、
心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患のリスクとなることは、
多くの疫学データで実証された事実です。

しかし、このストレスの実体とは何でしょうか?

また、脳が感じたストレスが、
どのような経路で身体の血管に影響を与えるのでしょうか?

そうした点の詳細は、
実はまだほとんど分かっていません。

身体が不安や恐怖を感じると、
情動に関わる脳の一部である、
偏桃体と言われる部位が活性化します。
周辺の血流が増加し、細胞へのブドウ糖の取り込みが増し、
神経回路の電気的な興奮も高まります。
これは実際に機能性MRI検査やPET検査で、
確認出来る事項です。

また動物実験においては、
ストレスにより骨髄の造血能は活性化して、
血管の炎症が亢進することが認められています。

そこで、今回の研究では、
ストレスによる偏桃体の活性化が、
身体のストレス反応に繋がっているという仮説の元に、
機能性MRIとPET検査による偏桃体の活性化と、
PET検査によって計測された、
血管の炎症と骨髄の造血能との関連を検証しています。

対象は30歳以上で心血管疾患のない293名の男女で、
中央値3.7年の観察期間のうちに、
そのうちの22名が心血管疾患に罹患しています。

計測された偏桃体の活性化は、
動脈の炎症と骨髄活性と有意な相関を示しました。
また、心血管疾患のリスクと偏桃体の活性化との間にも、
有意な関連が認められました。

その関連を図示したものがこちらです。
ストレスで動脈硬化の起こるメカニズムの図.jpg
心理的なストレスは脳偏桃体を活性化させ、
それが交感神経系の興奮を介して、
血管の炎症の要因となります。
また、それとは別個の経路によって、
骨髄の活性化も惹起されるのです。

まだ詳細は不明な点が多いのですが、
これまであまり数値的な指標が存在しなかったストレス反応において、
非観血的な手法により、
偏桃体の活性化の程度でそれが検証可能であるとすれば、
その指標としては非常に有用であると考えられ、
今後の知見の蓄積に期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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