ED治療薬の認知症予防効果 [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
Neurology誌に2024年2月7日付で掲載された、
男性の勃起障害の治療薬の、
認知症予防効果についての論文です。
シルデナフィル(バイアグラ)などのED治療薬は、
フォスフォジエステラーゼ5(Phosphodiesterase Type5)
という酵素を阻害する作用を持つ、
フォスフォジエステラーゼ5阻害剤です。
以下これをPDE-5阻害剤と略します。
このPDE-5という酵素はサイクリックGMPという、
血管拡張物質を分解する働きを持っているので、
酵素の阻害により、
陰茎の血管拡張が持続し、
それが勃起機能の改善に繋がっているのです。
ただ、この酵素は陰茎以外にも身体の多くの血管に存在しているので、
陰茎以外の組織にも一定の効果を示すと考えられています。
また動物実験においてはこの酵素の阻害剤は、
血管拡張作用と共に、
血管内皮細胞の機能自体を改善する効果も、
確認されています。
そのためPDE-5阻害剤は男性機能のみならず、
心臓疾患や糖尿病など、
他の多くの病気の治療薬や予防薬としても、
その有効性が研究されています。
その1つが認知症です。
PDE-5阻害剤には認知症の原因の1つである、
タウ蛋白のリン酸化を抑制する作用が、
実験的研究では報告されていて、
この事実はPDE-5が認知症予防に繋がる、
という可能性を示唆するものです。
その実際の有効性はどの程度のものなのでしょうか?
今回の研究はイギリスにおいて、
勃起不全と診断された、
登録の時点で認知症のない、
40歳以上の男性269725名を対象として、
中央値で5.1年という経過観察を施行。
バイアグラなどの使用と、
アルツハイマー病の発症リスクとの関連を検証しています。
その結果、
PDE-5阻害剤使用群でのアルツハイマー病発症リスクは、
年間1万人当たり8.1件であったのに対して、
未使用群での発症リスクは、
年間1万人当たり9.7件で、
関連する因子を補正した結果として、
PDE-5阻害剤の使用はその後のアルツハイマー病の発症リスクを、
18%(95%CI:0.72から0.93)有意に低下させていました。
こうしたデータは他にも報告されていて、
ほぼ同等の結果が得られていることから考えて、
こうした現象のあること自体は、
ほぼ事実と考えて良さそうです。
今後は実際にこの薬を、
認知症予防に使用することは可能であるのか、
可能であるとすれば、
どのような対象者にどのように使用するべきなのか、
そうした実際的な検証が不可欠であるように思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
Neurology誌に2024年2月7日付で掲載された、
男性の勃起障害の治療薬の、
認知症予防効果についての論文です。
シルデナフィル(バイアグラ)などのED治療薬は、
フォスフォジエステラーゼ5(Phosphodiesterase Type5)
という酵素を阻害する作用を持つ、
フォスフォジエステラーゼ5阻害剤です。
以下これをPDE-5阻害剤と略します。
このPDE-5という酵素はサイクリックGMPという、
血管拡張物質を分解する働きを持っているので、
酵素の阻害により、
陰茎の血管拡張が持続し、
それが勃起機能の改善に繋がっているのです。
ただ、この酵素は陰茎以外にも身体の多くの血管に存在しているので、
陰茎以外の組織にも一定の効果を示すと考えられています。
また動物実験においてはこの酵素の阻害剤は、
血管拡張作用と共に、
血管内皮細胞の機能自体を改善する効果も、
確認されています。
そのためPDE-5阻害剤は男性機能のみならず、
心臓疾患や糖尿病など、
他の多くの病気の治療薬や予防薬としても、
その有効性が研究されています。
その1つが認知症です。
PDE-5阻害剤には認知症の原因の1つである、
タウ蛋白のリン酸化を抑制する作用が、
実験的研究では報告されていて、
この事実はPDE-5が認知症予防に繋がる、
という可能性を示唆するものです。
その実際の有効性はどの程度のものなのでしょうか?
今回の研究はイギリスにおいて、
勃起不全と診断された、
登録の時点で認知症のない、
40歳以上の男性269725名を対象として、
中央値で5.1年という経過観察を施行。
バイアグラなどの使用と、
アルツハイマー病の発症リスクとの関連を検証しています。
その結果、
PDE-5阻害剤使用群でのアルツハイマー病発症リスクは、
年間1万人当たり8.1件であったのに対して、
未使用群での発症リスクは、
年間1万人当たり9.7件で、
関連する因子を補正した結果として、
PDE-5阻害剤の使用はその後のアルツハイマー病の発症リスクを、
18%(95%CI:0.72から0.93)有意に低下させていました。
こうしたデータは他にも報告されていて、
ほぼ同等の結果が得られていることから考えて、
こうした現象のあること自体は、
ほぼ事実と考えて良さそうです。
今後は実際にこの薬を、
認知症予防に使用することは可能であるのか、
可能であるとすれば、
どのような対象者にどのように使用するべきなのか、
そうした実際的な検証が不可欠であるように思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2024-03-21 07:05
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