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ピロリ菌の感染と大腸癌リスクとの関係 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ヘリコバクターと大腸癌.jpg
Journal of Clinical Oncology誌に、
2024年3月1日付で掲載された、
ピロリ菌の感染が大腸癌の発症に及ぼす影響についての論文です。

胃粘膜で生育するヘリコバクター・ピロリ菌が、
萎縮性胃炎や胃癌のリスクとなり、
除菌治療がその予防に繋がることは、
専門家のみならず、
今では一般にも広く知られている事実です。

ピロリ菌の感染は胃癌以外にも、
大腸癌の発症リスクを上昇させることを示唆するデータが、
幾つか報告されています。
例えば2020年に発表されたメタ解析の論文では、
ピロリ菌の感染により大腸癌のリスクは1.7倍に上昇したと報告されています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7489651/

ただ、実際には単独の疫学データで、
それほど大規模なものはなく、
報告によっても結果にはかなりの幅があります。

今回の研究はアメリカの退役軍人を対象とした、
大規模な疫学データを解析したものです。

ピロリ菌の検査を施行した退役軍人、
トータル812736名のうち、
25.2%に当たる205178名が陽性と診断されました。
15年の観察期間において、
ピロリ菌の感染者は非感染者と比較して、
大腸癌に罹患するリスクが18%(95%CI:1.12から1.24)、
大腸癌により死亡するリスクが12%(95%CI:1.03から1.21)、
それぞれ有意に増加していました。

また、ピロリ菌の感染があって未治療であると、
除菌治療を施行した場合と比較して、
大腸癌に罹患するリスクが23%(95%CI:1.13から1.34)、
大腸癌により死亡するリスクが40%(95%CI:1.24から1.58)、
それぞれ有意に増加していました。

矢張り、今回の大規模な検証においても、
ピロリ菌の感染が持続していると、
大腸癌のリスクも増加することは間違いのない事実であるようです。

それでは、何故ピロリ菌の感染が大腸癌と関連しているのでしょうか?

現時点では不明ですが、
ピロリ菌自体が大腸粘膜においても、
発癌を誘発する可能性を示唆する、
実験的なデータが存在しているようです。

そのメカニズムは今後の検証を待つ必要がありますが、
ピロリ菌の除菌は胃癌予防のみならず、
大腸癌予防に対しても一定の有効性が期待出来るので、
その施行はより積極的に行う必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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