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卵の脂肪肝に対する有効性(イタリアの疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
卵と脂肪性肝疾患.jpg
Nutients誌に2024年1月31日付で掲載された、
卵の健康効果についての論文です。

卵と健康との関連については、
色々な見方があります。

卵黄には1個に200ミリグラムを超えるコレステロールが含まれています。

血液のコレステロールが高いと、
動脈硬化が進行しやすいという知見が得られてから、
食事のコレステロールを制限しようという動きが、
世界的に高まり、
そこで提唱された基準が、
食事のコレステロールを1日300ミリグラム以下にする、
というものです。

これを達成するためには、
卵をなるべく食べないことが、
必要不可欠ですから、
卵の制限が、
健康のためには必要であると考えられたのです。

ところが

2016年に公表されたアメリカのガイドラインにおいては、
食事のコレステロールを制限しても、
血液のコレステロールを減らせるという根拠は乏しいとして、
その目標値は削除されました。

これは、
「コレステロールの食事制限は不要」として、
一般にも報道されました。
その報道には誤解を招く点があり、
実際には数値目標が外れただけで、
コレステロールの制限自体は推奨されていたのですが、
コレステロールに制限は要らない、
という誤ったメッセージに受け取られたことは、
残念でした。

その後様々の研究データが発表されましたが、
概ね1日1個を超えない卵の摂取については、
大きな健康リスクはない、
というのがほぼ一致した考え方になっています。

以上は主に動脈硬化性疾患の予防に限った、
卵の摂取についての話です。

肝臓に中性脂肪が過剰に蓄積して起こる、
脂肪肝などの脂肪性肝疾患は、
近年生活習慣病の1つとして注目されています。

コレステロールを多く含む卵は、
脂肪性肝疾患のリスクを高めることが想定される一方で、
卵にはコレステロール以外の、
多くの健康に必須な栄養素が含まれていて、
特に栄養失調となりやすい高齢者においては、
卵の摂取は健康に資するという可能性もあります。

しかし、これまで脂肪性肝疾患に対する卵の影響を、
検証したような研究はあまりありませんでした。

今回の研究はイタリアにおいて、
胆石症に対する疫学研究のデータを活用し、
60歳以上の908名の一般住民を対象として、
卵の摂取量と脂肪性肝疾患、
そして高血圧のリスクとの関連を比較検証しています。

その結果、脂肪性肝疾患と高血圧が共にない群では、
他の群と比較して、
卵の摂取量がより多くなっていました。

また卵を週に2個は食べていない人と比較して、
週に3個より多く食べている人は、
脂肪性肝疾患を合併しない高血圧症になるリスクが79%(95%CI:0.07から0.62)、
脂肪性肝疾患と高血圧症を合併するリスクが66%(95%CI:0.15から0.73)、
それぞれ有意に低下していました。

要するにそれほどクリアな結果とは言えませんが、
卵を週に3個より多く食べる方が、
脂肪性肝疾患や高血圧になり難いのでは、
ということを示唆する結果です。

上記論文の考察では、
卵に多く含まれる、
ビタミンB12や葉酸に脂肪肝炎改善作用があり、
それが影響しているのはないかと記載されています。

その真偽のほどはまだ定かではありませんが、
概ね1日1個を超えない範囲であれば、
卵の摂取には健康上の悪影響はないことは、
これまでのデータからほぼ間違いのないことなので、
特に食が細る高齢者においては、
卵は重要な栄養源として、
扱う必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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