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SGLT2阻害剤の腎結石予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
親族に不幸がありまして、
急遽早朝から出掛けています。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
SGLT2阻害剤の尿路結石予防効果.jpg
JAMA Internal Medicine誌に、
2024年1月29日付で掲載された、
糖尿病治療薬の腎結石予防効果についての論文です。

SGLT2阻害剤は最近最も注目されている、
2型糖尿病の治療薬です。

この薬は尿へのブドウ糖の排泄を増加させる作用の薬です。

それにより確かに血糖値は低下しますが、
尿糖が増加することは尿路や陰部の感染のリスクを高めますし、
尿量が増加して脱水のリスクも高めますから、
使用開始当初は、
あまり良い薬のようには思えませんでした。

この薬が注目されたのは、
心血管疾患による死亡や総死亡のリスクを、
有意に30%以上低下させるという画期的なデータが、
エンパグリフロジンというSGLT2阻害剤で、
報告されたからです。

その後この心血管疾患の生命予後改善効果の多くは、
心不全の予後改善による部分が大きいことが解析され、
SGLT2阻害剤は心不全の治療薬としても、
有効な可能性が開かれたのです。

最近ではそれ以外に、
慢性腎臓病に対する進行予防効果も、
複数の臨床データで実証されています。

さて、2型糖尿病では腎結石や尿路結石のリスクが、
増加することも知られています。

そして最近SGLT2阻害剤の使用が、
糖尿病の患者さんにおける腎結石のリスクを、
低下させるのではないかというデータが報告されて、
注目を集めています。

その代表的なものの1つはこちらですが、
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35290464/
これまでの臨床試験のデータを解析した結果として、
エンパグリフロジンの使用により、
腎結石の発症は40%有意に低下していました。

今回の研究はアメリカにおいて、
保険加入時のデータを活用することで、
2型糖尿病で新規にSGLT2阻害剤を開始した患者さんの、
その後の腎結石罹患率を、
GLP-1アナログもしくはDPP4阻害剤という、
いずれも広く使用されている糖尿病治療薬を開始した患者さんと、
比較検証しているものです。

358203名のSGLT2阻害剤新規使用者を、
年齢などをマッチングさせた、
同数のGLP-1アナログ新規使用者と比較し、
更に331028名のSGLT2阻害剤新規使用者を、
こちらも同数のDPP4阻害剤の新規使用者と、
腎結石のリスクについて比較検証したところ、
観察期間の中間値は192日で、
SGLT2阻害剤使用者は、
GLP-1アナログ使用者と比較して31%(95%CI:0.67から0.72)、
DPP4阻害剤使用者と比較して26%(95%CI:0.71から0.77)、
腎結石のリスクがそれぞれ有意に低下していました。

このように、
今回の大規模な疫学データにおいても、
他のインクレチン関連の治療薬と比較して、
SGLT2阻害剤の使用は、
比較的短期で腎結石のリスクを明確に低下させていました。

そのメカニズムはまだ不明の点もありますが、
尿量の増加による影響に加えて、
尿のPHなどの性質の変化が影響している、
というデータも蓄積されつつあります。

いずれにしても、
これまであまり有効な予防法のなかった、
腎結石の予防に関して、
明確な有効性のある薬剤が確認された意義は大きく、
今後これが2型糖尿病の患者に限った現象なのかを含めて、
知見が蓄積され実証されることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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