アスピリンの卵巣癌予防効果 [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
JAMA Network Open誌に、
2023年2月24日ウェブ掲載された、
アスピリンによる癌予防についての論文です。
低用量(1日80から100mg)のアスピリンには、
抗血小板作用があり。
心血管疾患の再発予防や、
消化器系の癌(腺癌)や卵巣癌など、
一部の癌の進行予防効果が確認されています。
その一方で出血系の合併症のリスクは高めるので、
その使用をどのような患者さんに行うことが良いのか、
まだ議論が分かれています。
心筋梗塞などの再発予防効果についてはほぼ実証されていますが、
健康な高齢者に使用すると、
むしろ生命予後に悪影響を与えたとするデータもあり、
その使用は慎重に行うべきとする意見もあります。
アスピリンによる予防効果が確認されている癌の1つが卵巣癌です。
卵巣癌は予後の悪い癌の1つとして知られていますが、
あまり有効な予防法が確立していません。
2022年のJournal of Clinical Oncology誌に発表された論文では、
これまでの17の臨床データをまとめて解析した結果として、
毎日もしくはほぼ毎日アスピリンを服用していると、
卵巣癌の発症リスクが13%有意に減少したと報告されています。
ただ、前述のようにアスピリンの継続使用にはリスクもあり、
どのような対象にアスピリンを使用することが、
卵巣癌の予防として有効性が高いのかが、
未解決の問題として残っています。
今回の研究はアメリカとイギリス、オーストラリアで施行された、
卵巣癌の臨床研究のデータをまとめて解析したもので、
アスピリンの使用が卵巣癌の発症リスクに与える影響を、
既知の癌に関わる遺伝子変異の有無で比較検証しています。
トータルで4476例の粘液非産生性卵巣癌患者を対象として、
6659例のコントロール群と比較し、
14年以上の観察を施行したところ、
アスピリンの継続的使用は、
卵巣癌のリスクを13%(95%CI:0.76から0.99)有意に低下させていました。
そして、このリスク低下は、
既知の遺伝子変異の影響を受けることはありませんでした。
つまり、アスピリンの卵巣癌予防効果は、
生まれつきの癌のなり易さとは無関係に認められる、
という結果です。
仮に関連があるとすれば、
特に有効性の高い対象に絞って、
アスピリンを使用するという選択肢が生まれるのですが、
今回の検証ではそうした可能性は否定的であるようです。
卵巣癌の予防のためのアスピリンの内服については、
一定の有効性があることは間違いがないのですが、
その適応をどのような患者さんにするべきかについては、
まだ未解決の問題であると考えた方が良いようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
JAMA Network Open誌に、
2023年2月24日ウェブ掲載された、
アスピリンによる癌予防についての論文です。
低用量(1日80から100mg)のアスピリンには、
抗血小板作用があり。
心血管疾患の再発予防や、
消化器系の癌(腺癌)や卵巣癌など、
一部の癌の進行予防効果が確認されています。
その一方で出血系の合併症のリスクは高めるので、
その使用をどのような患者さんに行うことが良いのか、
まだ議論が分かれています。
心筋梗塞などの再発予防効果についてはほぼ実証されていますが、
健康な高齢者に使用すると、
むしろ生命予後に悪影響を与えたとするデータもあり、
その使用は慎重に行うべきとする意見もあります。
アスピリンによる予防効果が確認されている癌の1つが卵巣癌です。
卵巣癌は予後の悪い癌の1つとして知られていますが、
あまり有効な予防法が確立していません。
2022年のJournal of Clinical Oncology誌に発表された論文では、
これまでの17の臨床データをまとめて解析した結果として、
毎日もしくはほぼ毎日アスピリンを服用していると、
卵巣癌の発症リスクが13%有意に減少したと報告されています。
ただ、前述のようにアスピリンの継続使用にはリスクもあり、
どのような対象にアスピリンを使用することが、
卵巣癌の予防として有効性が高いのかが、
未解決の問題として残っています。
今回の研究はアメリカとイギリス、オーストラリアで施行された、
卵巣癌の臨床研究のデータをまとめて解析したもので、
アスピリンの使用が卵巣癌の発症リスクに与える影響を、
既知の癌に関わる遺伝子変異の有無で比較検証しています。
トータルで4476例の粘液非産生性卵巣癌患者を対象として、
6659例のコントロール群と比較し、
14年以上の観察を施行したところ、
アスピリンの継続的使用は、
卵巣癌のリスクを13%(95%CI:0.76から0.99)有意に低下させていました。
そして、このリスク低下は、
既知の遺伝子変異の影響を受けることはありませんでした。
つまり、アスピリンの卵巣癌予防効果は、
生まれつきの癌のなり易さとは無関係に認められる、
という結果です。
仮に関連があるとすれば、
特に有効性の高い対象に絞って、
アスピリンを使用するという選択肢が生まれるのですが、
今回の検証ではそうした可能性は否定的であるようです。
卵巣癌の予防のためのアスピリンの内服については、
一定の有効性があることは間違いがないのですが、
その適応をどのような患者さんにするべきかについては、
まだ未解決の問題であると考えた方が良いようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2023-03-30 07:37
nice!(4)
コメント(0)
コメント 0