新型コロナウイルス感染症罹患後の糖尿病発症リスク [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
Lancet Diabetes & Endocrinology誌に、
2022年5月21日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症後の糖尿病発症リスクについての論文です。
新型コロナウイルス感染症は、
オミクロン株の流行以降軽症化が指摘されています。
現状新たな変異株も確認されているものの、
その基本的な性質については、
感染力は非常に強いものの重症化は稀である、
という点についてはほぼ一致しています。
その一方で問題となっていることの1つは、
後遺症と呼ばれるような持続する症状が、
少なからずの患者さんで、
数か月以上という長期間持続していることです。
それに加えて動脈硬化性疾患や慢性の代謝疾患、
慢性の炎症性疾患などの、
本来は新型コロナウイルス感染症とは無関係な筈の病気のリスクが、
急性症状が改善した以降に、
増加していることが指摘されています。
そのうちの1つが糖尿病の増加です。
これまでの複数の疫学データにおいて、
新型コロナウイルス感染症の罹患と、
糖尿病の新規発症との間に関連があると指摘されています。
しかし、これまでのデータの多くは、
感染の急性期とそれ以降とに明確な区別がなく、
感染自体によ現象なのか、
それとも明確に回復後の現象であるのかが、
明らかではありませんでした。
そこで今回の研究では、
アメリカの退役軍人の医療保険データを活用して、
罹患後30日経過後の糖尿病発症リスクを、
非罹患者と比較検証しています。
トータルな患者数は181280名で、
1年間の観察を行った大規模なものです。
その結果、
非罹患者と比較して新型コロナ感染の、
急性期以降1年間における新規糖尿病の発症リスクは、
1.40倍(95%CI:1.36から1.44)有意に増加していました。
これは1000人当たり13.46人の増加に相当します。
これを診断ではなく糖尿病治療薬の30日以上の使用で推計すると、
そのリスクは1.85倍(95%CI:1.78から1.92)とより高くなっていました。
新型コロナ感染の重症度で分けて比較すると、
入院を要したような事例でよりリスクは増加していましたが、
入院を要さない軽症事例においても、
リスク増加自体は確認されています。
このように、今回の大規模な検証においても、
新型コロナウイルス感染の回復期以降に、
糖尿病のリスクが増加することが確認されました。
それでは、何故こうした現象が起こるのでしょうか?
理論的には膵臓のインスリン分泌細胞に、
新型コロナウイルスが感染する可能性はあります。
ただ、実際にはそうした感染があるとしても、
極小規模に留まるという考え方が一般的です。
新型コロナの感染はその後の免疫異常や慢性感染に結び付きやすい、
という知見はあり、
それが事実であるとすれば、
自己免疫的な機序でインスリン分泌細胞が攻撃される、
また慢性の炎症によりインスリン抵抗性が生じる、
というような可能性も考えられます。
新型コロナの感染により隔離が続き、
運動量が低下したり食生活が乱れて、
そうした生活習慣が糖尿病の誘因となった、
というような可能性も否定は出来ません。
現状はこうした仮説が幾つか提示されているものの、
正確な原因は分かっていないのが実際であるようです。
いずれにしても新型コロナウイルス感染症後に、
糖尿病のリスクが増加すること自体はほぼ事実である可能性が高く、
感染された方は、症状に留意して、
健診などで血糖値のチェックをする機会は、
持った方が良さそうです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
Lancet Diabetes & Endocrinology誌に、
2022年5月21日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症後の糖尿病発症リスクについての論文です。
新型コロナウイルス感染症は、
オミクロン株の流行以降軽症化が指摘されています。
現状新たな変異株も確認されているものの、
その基本的な性質については、
感染力は非常に強いものの重症化は稀である、
という点についてはほぼ一致しています。
その一方で問題となっていることの1つは、
後遺症と呼ばれるような持続する症状が、
少なからずの患者さんで、
数か月以上という長期間持続していることです。
それに加えて動脈硬化性疾患や慢性の代謝疾患、
慢性の炎症性疾患などの、
本来は新型コロナウイルス感染症とは無関係な筈の病気のリスクが、
急性症状が改善した以降に、
増加していることが指摘されています。
そのうちの1つが糖尿病の増加です。
これまでの複数の疫学データにおいて、
新型コロナウイルス感染症の罹患と、
糖尿病の新規発症との間に関連があると指摘されています。
しかし、これまでのデータの多くは、
感染の急性期とそれ以降とに明確な区別がなく、
感染自体によ現象なのか、
それとも明確に回復後の現象であるのかが、
明らかではありませんでした。
そこで今回の研究では、
アメリカの退役軍人の医療保険データを活用して、
罹患後30日経過後の糖尿病発症リスクを、
非罹患者と比較検証しています。
トータルな患者数は181280名で、
1年間の観察を行った大規模なものです。
その結果、
非罹患者と比較して新型コロナ感染の、
急性期以降1年間における新規糖尿病の発症リスクは、
1.40倍(95%CI:1.36から1.44)有意に増加していました。
これは1000人当たり13.46人の増加に相当します。
これを診断ではなく糖尿病治療薬の30日以上の使用で推計すると、
そのリスクは1.85倍(95%CI:1.78から1.92)とより高くなっていました。
新型コロナ感染の重症度で分けて比較すると、
入院を要したような事例でよりリスクは増加していましたが、
入院を要さない軽症事例においても、
リスク増加自体は確認されています。
このように、今回の大規模な検証においても、
新型コロナウイルス感染の回復期以降に、
糖尿病のリスクが増加することが確認されました。
それでは、何故こうした現象が起こるのでしょうか?
理論的には膵臓のインスリン分泌細胞に、
新型コロナウイルスが感染する可能性はあります。
ただ、実際にはそうした感染があるとしても、
極小規模に留まるという考え方が一般的です。
新型コロナの感染はその後の免疫異常や慢性感染に結び付きやすい、
という知見はあり、
それが事実であるとすれば、
自己免疫的な機序でインスリン分泌細胞が攻撃される、
また慢性の炎症によりインスリン抵抗性が生じる、
というような可能性も考えられます。
新型コロナの感染により隔離が続き、
運動量が低下したり食生活が乱れて、
そうした生活習慣が糖尿病の誘因となった、
というような可能性も否定は出来ません。
現状はこうした仮説が幾つか提示されているものの、
正確な原因は分かっていないのが実際であるようです。
いずれにしても新型コロナウイルス感染症後に、
糖尿病のリスクが増加すること自体はほぼ事実である可能性が高く、
感染された方は、症状に留意して、
健診などで血糖値のチェックをする機会は、
持った方が良さそうです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2022-12-23 14:34
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