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性的欲求低下障害に対するキスペプチンの有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
キスペプチンと性欲減退.jpg
JAMA Network Open誌に、
2022年10月26日ウェブ掲載された、
性欲に関連するホルモンを注射することにより、
性欲低下の症状を改善する試みについての論文です。

性的欲求低下障害(Hypoactive Sexual Desire Disorder : HSDD)は、
性的欲求が低下しているために、
人間関係や社会生活において、
悩みを抱えている状態のことですが、
性交の困難や性的対象の個人差による悩み、
性腺機能低下症などの器質的疾患ではないものとされています。

その治療を希望する方には、
現状カウンセリングや精神療法、
抗うつ剤や性ホルモン製剤などが使用されていますが、
その有効性は限定的であるのが実際です。

キスペプチンは、
前腹側室周囲核から内側視床前野の部分と、
視床下部弓状核の部分の2か所の神経細胞から分泌され、
女性ホルモン系の分泌調節に重要な働きをしているホルモンです。
このホルモンはまた大脳辺縁系に働いて、
人間の性衝動や性欲を調節する働きを持っているとされています。

これまでにもキスペプチンの注射により、
性欲が亢進したとする報告があります。
そこで今回の臨床研究では、
32名の性的欲求低下障害と診断された女性に、
75分間キスペプチンを静脈血に持続的に注入し、
生理食塩水を同じように注入した場合と比較して、
性的内容のビデオ鑑賞時の
機能性MRIによる脳の変化を比較検証しています。

その結果キスペプチンの使用により、
ビデオ鑑賞時の性欲に関わる脳神経領域の活動性は高まり、
性的欲求低下障害において活動が亢進している部位については、
それを抑制するような働きを同時に示していました。

この結果はキスペプチンの使用が、
性的欲求低下障害の有効な治療となる可能性を示唆しています。

現状はキスペプチンには、
持続的に静脈投与した短期のデータしかなく、
臨床に使用出来るレベルには達していませんが、
今後このホルモンの作用の解明が、
性的欲求に関わる疾患の治療において、
新たな選択肢となることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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