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極私的新型コロナウイルス感染症情報(2022年7月18日) [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診です。

今日は久しぶりにクリニック周辺の感染症情報をお届けします。

今ご存じのように、
オミクロン株の感染が猛威を振るっています。

クリニックでは6月25日から、
明らかなRT-PCR検査の陽性率の上昇が認められ、
ゲノム解析はまだ6月25日測定分しか届いていないのですが、
同日からオミクロン株のBA.5が同定されるようになっています。
それまでは2022年の1月から3月くらいまではBA.1で、
それ以降はBA.2とその亜型に変化してきた、という経緯です。
2022年5月は40%台くらいの陽性率であったのが、
6月25日から7月16日までの集計では、
111件の検査(有症状のみ)をして80件が陽性と、
70%を超える陽性率となっています。

まあ、ほぼBA.5の感染力の高さによって、
今回の急激な感染拡大が起こっていることは間違いがありません。

今回の感染については、
昨年のデルタ株以前に感染した人は勿論、
今年の初めにBA.1に感染した人も、
再感染が起こっているのが実際です。
つまり、免疫は一旦リセットされている、
というように考えた方が現実に近いのです。

小児に関しては、
2022年1月には大人の感染が主体だったのが、
3月くらいから保育園や小学校などの集団感染が、
一気に増加したという経緯がありました。
何故かは不明なのですが、
感染流行に時間差があったのですね。
そのためか、今のところ小児の感染は、
家族内感染ではあるのですが、
それ以外ではかなり限定的です。

乳幼児に関しては、
RSウイルスやヒトメタニューモウイルスによる、
咳を伴う感冒が非常に多く、
手足口病も多いのですが、
オミクロンBA.5によると思われるような流行は、
殆ど見られていません。

これはおそらくもう少しすると時間差で、
小児の流行が本格化するのではないかと想定されます。

症状は急な発熱と咽頭痛というケースが多く、
高熱の事例は特にワクチン未接種者で多いという印象です。
咽頭所見は咽頭後壁の発赤とリンパ濾胞の腫脹が特徴的で、
勿論これはインフルエンザでもこうした所見はありますから、
新型コロナウイルス感染症のみの特徴ということはないのですが、
今の段階でそうした所見と症状経過があれば、
かなりの高確率で新型コロナであることは、
経験的には間違いがないと思います。
潜伏期は1から3日という感じで、
3日を超えての発症は稀です。

今困っているのは検査キットなどの不足で、
抗原検査は信頼性の高い医療用キットについては、
卸で既に出荷調整に入っていて、
注文してもいつ入荷するか不明という状況です。
少し在庫があるので凌いでいますが、
それがなくなって入荷がなければどうしようもありません。
感度の低いキットやデータも不明のような商品については、
入手は可能なのですが、
そんなものを使うつもりはありません。
余計に診断に混乱を招くだけだからです。

RT-PCR検査についてもかなり怪しい状態で、
採取容器や備品が不足しています。
これも今在庫のある分で凌いでいるのですが、
それがなくなったら検査会社から入荷する保証はありません。

実際に近隣の医療機関でも、
もう検査が出来ないと発熱外来を止めてしまっているところが、
複数あるのが現状です。
先週も「10か所に聞いたが全て断わられた」という患者さんが受診されました。
ただ、勿論クリニックでも、
希望される方を全て受け入れることは出来ていません。
ここ数日は初診の方では、
お断りする方の方が多いのが実際です。

この2年以上クリニックなりに、
やれることを頑張ってやっては来たのですが、
もう疲弊してしまって、
継続することに疑問を感じる状況なのですね。

RT-PCR検査の診療報酬ですが、
昨年の半分以下に削減されているのですね。
陽性の患者さんを診療した時の診療報酬も今月から削減されて、
来月はより削減されることが決まっているのですね。
これまで以上の流行があるのに、
それはあまりに酷い対応ではないかしら。
健康観察に対して都から出る補助金は、
一気に半分くらいに減額になるのです。
こうした締め付けがあるので、
近隣の総合病院はコロナ患者の受け入れを、
完全に止めてしまったんですね。
それもどうかな、とは思うのですが、
経営的なことだけで考えれば、
まあ合理的な結論のようにも思えます。

そもそも今回はもう打つ手なしという感じでしょ。

今のBA.5主体の感染は、
これまでの標準的な個別の感染対策では、
防ぐことは困難なのですね。
またデルタ株以前の時期には、
感染を抑え込むような有効性を、
ワクチンが示していたのですが、
オミクロン株以降は感染そのものの防御効果はかなり限定的で、
重症化予防のみ有効というレベルに留まっています。
それも一定の有効性があるのは、
せいぜい3か月程度です。
ワクチン未接種で高熱の感染、
という事例は増えていますから、
未接種の方が接種することは今でも有効と思いますが、
4回目接種以降の有効性は感染予防に関しては期待は出来ません。
そうなると、行動制限しか、
今の感染を抑え込む手立てはないのですが、
それはやらない、経済と両立する、と言っているのですね。
それは裏を返せば、
何もしないで自然に感染が収束するのを我慢して待つ、
ということと同義です。
ただ、そのためには人口の6割は感染する必要がありますよね。
そこまでこのまま我慢することが可能でしょうか?

現状ではどうも難しいように思えてなりません。

専門家会議も、
今回の山を越えたら、
新型コロナを季節性インフルエンザなどと同じ扱いにすることを検討する、
というニュアンスのことを言っているんですね。

おそらくそうなるのだと思いますが、
その前にこの山を本当に乗り越えることが出来るのかと考えると、
何か暗澹たる予想に至るのが今の状況なのです。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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