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フルボキサミンの新型コロナウイルス感染症への有効性(ブラジルの臨床研究) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
フルボキサミンの新型コロナ重症化予防効果.jpg

the Lancet Global Health誌に、
2021年10月21日ウェブ掲載された、
SSRIのフルボキサミンが、
新型コロナ重症化予防に有効の可能性があるという、
興味深い報告です。

これは昨年11月にJAMA誌の論文をご紹介していて、
それはアメリカのデータだったのですが、
今回のものはブラジルで施行された、
より大規模な臨床試験の結果です。

実際にはウェブ掲載は同時期であったのですが、
こちらの文献はその時はスルーしていました。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、
その多くは軽症のまま回復しますが、
一部の事例では急性の臓器不全などを起こして重症化し、
致死的となる場合があります。

こうした重症化は、
病気が発症してから1週間程度してから、
通常8から10日以内で出現することが多く、
それはウイルス自体の増殖にょるより、
身体の免疫系の過剰な反応により、
引き起こされている可能性が高いと考えられています。

従って、抗ウイルス剤の開発と共に、
そうした過剰な免疫反応を抑制するために、
免疫抑制剤の使用などが試みられています。
ただ、その使用のタイミングなどは非常に難しく、
現状一定の有効性が確認されているのは、
ステロイド剤やIL6受容体拮抗薬など、
それほど多くはありません。

2019年のScience誌に、
この点についての興味深い知見が報告されました。
重症感染症の代表である敗血症の実験モデルにおいて、
細胞の小胞体という器官に発現している、
σ1受容体(S1R)が過剰な免疫を調整し抑制するような、
働きを持っていることが明らかにされたのです。
更に興味深いことは、
SSRIと呼ばれる抗うつ剤の1つであるフルボキサミン(商品名ルボックスなど)に、
このS1Rを刺激するような働きがあり、
動物実験のレベルでフルボキサミンの使用により、
ネズミの敗血症の重症化が抑制されることが確認されたのです。

それでは、
フルボキサミンを病初期から使用することにより、
新型コロナウイルス感染症の重症化が予防されるのでしょうか?

今回の臨床試験はブラジルの複数の医療機関において、
外来で診察された新型コロナウイルス感染症の患者で、
重症化のリスク因子があるトータル9803名を登録し、
症状出現から7日以内にくじ引きで2つの群に分けると、
一方はフルボキサミンを1日200㎎で10日間使用し、
もう一方は偽薬を同じように使用して、
登録後28日間の予後を比較検証しています。

試験は両群の差が明確となったので早期で中止となり、
解析されているのは、
フルボキサミン群が741名で、
偽薬群が756名です。

その結果、
救急病床での6時間以上の治療や三次救急病院への入院は、
フルボキサミン群では11%に当たる79名で見られたのに対して、
偽薬群では16%に当たる119名で見られていて、
フルボキサミンの使用は、
こうした救急入院のリスクを、
32%(95%CI:95%CI:0.52から0.88)有意に低下させていました。

このようにJAMA誌のアメリカのデータと、
ほぼ同じ結果が、
より例数の多い今回のブラジルのデータでも、
確認されています。

つまり、フルボキサミンに、
新型コロナウイルス感染症の重症化予防について、
一定の有効性のあるという可能性は、
より高まったとは言えそうです。

現状経口薬を含め多くの新薬が登場していますから、
フルボキサミンが治療の優先的な選択肢となることは、
可能性は低そうですが、
今後もその研究結果には注視したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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