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極私的新型コロナウイルス感染症の現在(2022年1月21日) [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

今日は新型コロナウイルス感染症のクリニック周囲の現状です。

この1週間は正直悪夢のようで、
ほとほと疲れ切りましたし、
精神的にも肉体的にもギリギリという感じです。

この状況を上手く皆さんにお伝え出来るかどうか分かりませんが、
出来る限り「事実」と自分で思えることを、
取り急ぎ一度は文字にして残しておきたいと思います。

混乱もしていますので、
不適切な表現があるかとも思いますが、
どうかご容赦頂きたいと思います。

➀感染の急拡大の現状
クリニックでオミクロン株の感染を、
初めて診断したのは2022年1月5日の検査からですが、
急増を肌で感じるようになったのは、
1月11日の連休明けからです。
特に14日以降は連日12名以上の検査を行って、
そのうちの5割以上が陽性、という状態が続いています。
現実にはもっと依頼は多いのですが、
対象者を隔離して検査をさせて頂くようにしているので、
濃厚接触者のご家族などは、
同時に入って頂いて検査をしていますが、
他は個別で対応せざるを得ず、
予約で時間を区切っているとこれが限界というところで、
多くの方に大変申し訳ないのですが、
お断りをしているというのが実際です。
ウイルス性胃腸炎も流行しており、
嘔吐下痢の典型的な症状の方は、
コロナではないとほぼ断定して良い感じですが、
それ以外の発熱や風邪症状は、
全て新型コロナ感染と言って、
ほぼ間違いのないような印象です。

2回のワクチン接種をしていても、
3か月以上が経過していれば普通に感染が起こっていますし、
昨年デルタ株に感染されている方も、
6か月程度が経過していると再感染しています。

つまり、ワクチンも何もない2019年春頃と、
同じくらいの感染感受性に多くの方がなっていて、
しかも当時流行していたウイルスより、
遥かに感染力自体が高いという深刻な状況です。

ただ、それでも近隣の病院には空きベッドがまだあり
(これは18日時点の情報)、
それはオミクロン株の殆どが軽症に終わる、
という性質によっているのです。

しかし、患者急増に伴い、
特に今は小児(乳幼児含む)に感染が拡大して、
それに伴い多くの地域受け入れ病院が、
野戦病院化しているようです(1月21日時点の情報)。

②検査の遅れと混乱
クリニックでは大手の検査会社にRT-PCR検査を委託していますが、
感染急拡大に伴い、
検査結果の到着が遅延しています。

当初は翌日の午後2時には結果のファックスが到着していたものが、
夕方になり夜になり、
1月14日には夜の8時を過ぎ、
1月19日には午後11時になって漸く届くという事態になりました。
それも、こちらから何度も何度も問い合わせをして、
何度も何度も催促してようやくの結果です。
遅延の原因を聞いても、
説明は二転三転して要領を得ません。

勿論懸命に検査をされているであろうことは理解していますが、
それでも何の説明もなく、
到着時間の予測も不可能というのは理不尽な感じがします。
数日前の説明では、
米軍基地関連の検査が急増していて、
その対応に追われていると言われたり、
結果は出ていても、ファックスを送信するのに、
3時間以上の時間が掛かるとも説明されるのですが
事実としてもそんな非効率な状態が、
何故改まらないのが理解に苦しみます。

1月20日からいつ頃に結果が来るのか、
担当者から事前に連絡をもらうような態勢にして、
昨日は一応それが機能して午後7時前に結果が届きましたが、
これがいつまで続くのか分かりません。

ともかくいつ来るか分からないファックを待って、
夜遅くまで待っている時間が不毛です。

③保健所の対応の混乱と相互不信の悪夢
思えば昨年夏ごろは牧歌的な時間でした。

発熱などの症状で新型コロナウイルス感染症の可能性を疑い、
患者さんの検査をして翌日に陽性の結果が届くと、
まず指定の用紙に発生届を記載して、
それを保健所の担当部署にファックスします。
患者さんには電話で説明し、
保健所からのお電話を待ち、
電話が来たらその指示に従って下さいとお話します。

勿論何か体調にご心配があれば、
遠慮なくクリニックに連絡して頂いて構わないと説明しました。

それから、保健所に電話を入れ、
ファックス1枚では伝えきれない事項、
患者さんの家族などの状況や、
病状の詳細を担当者に直接伝えます。
そうしたやり取りで、
お互いに大変ですね、頑張りましょうね、
と相手をねぎらい、
それが一緒にこの感染を乗り越えようという、
信頼感の醸成に繋がっていました。

それがデルタ株流行の後半くらいの時期になると、
電話を掛けると露骨に迷惑そうな対応をされ、
「ファックスを送って頂ければそれで結構なので電話はしないでください」
と言われるようになりました。

個人的には1人1人の患者さんを紹介するに当たり、
こちらが感じた細かいニュアンスを、
お伝えすることも大切なことですし、
ファックスをただ送るだけというのは不安がありました。
ファックスの誤送信なども皆無ではない、
という思いもありました。

ただ、そう言われてしまえば仕方がありません。

そのうちに一旦流行は収束し、
クリニックでのRT-PCR検査の陽性者は、
2021年9月下旬以降、しばらくはゼロの状態が続きました。

2022年1月5日以降、
徐々に患者さんが増加し始め、
2021年と同じように、
検査、診断、ファックスによる報告、
という一連の流れをしばらく継続した後の1月14日でした。

保健所の担当者から、
ちょっとエキセントリックな感じのメールが、
検査診断を行っている医療機関の全てに送られました。

そこには、
患者の急増により保健所の業務が逼迫しており、
このままでは早晩全ての患者の健康観察が困難となる事態が想定される、
という趣旨のことが記載されていました。

それではどうすればいいのかと言うと、
まず患者の登録は極力ファックスを使わず、
HER-SYSという専用のシステムを使用することを、
推奨していました。

以下その文面を抜粋します。
ついては陽性者全員へ保健所から連絡することは既に難しく、30歳未満で軽症の方へは「SMSでの連絡と、MY HER-SYSによる、健康観察」へ切り替える予定です。

ただ、これは1月14日の時点で切り替える予定だ、
という通知であって、
実際にいつからどのような基準において、
こうした切り替えが行われるのかが明記されていません。

いつからどう説明すればいいのか、
こちらとしては混乱を感じる文面です。

そこでこの時点以降でクリニックで検査をし、
陽性で届け出を施行する場合の感染者には、
「保健所から電話で連絡があるかも知れませんし、
ショートメッセージの連絡があるも知れないで注意して下さい」
とお伝えすることにしました。

17日になって再び保健所の担当部署からメールが入り、
そこでは医師による健康観察を選択した医療機関が、
途中で経過観察を続けることが困難となったので、
保健所に電話で連絡したところ、
その連絡が上手く保健所側に伝わらず、
結果的にその患者さんが誰からも健康観察をされずに、
放置される状態になったことが、
「医師側の過失」として、
かなり怒りを孕んだ筆致でつづられていました。

確かにそれは由々しき事態ですが、
それまで基本的に軽症者の自宅療養時の健康観察は、
保健所の仕事であった筈で、
保健所の業務が逼迫しているので、
その一部を末端の医療機関が担う、
という方針については異論はありませんが、
これまでやっていなかった作業を、
急にやれと言われるのは矢張り混乱もあるところです。
患者さんに説明するにしても、
「自宅療養時の健康観察は、
保健所で行う場合と当院で行う場合の2通りがありますが、
どちらにしますか?」
とお聞きするのはなかなか躊躇を感じるところですし、
患者さんにとってみれば、
クリニックの医師の管理より、
保健所が責任をもってくれた方が、
より安心と思うのは当然のようにも思われます。

やり玉に挙がっているのが、
何処の医療機関のことなのかは分かりませんが、
その先生にしても保健所の業務の手助けをしよう、
という思いから健康観察をされたことには間違いはなく、
やってみると慣れない仕事で結果としては難しく、
その旨を保健所に電話で申し入れたのではないかと推測します。
メールでは電話で連絡などされても、
多くの職員が電話に出るので情報が伝わらず、
結果として患者が放置されたという趣旨のことが書かれていますが、
電話を職員にしたのに、
それが正確に伝達されないことは問題ではないのでしょうか?

メールを見る限り、
全ては「愚鈍な医師」の責任のように書かれていますが、
そうした一方的な記述が、
公的な機関の文書として出されていることには、
何か釈然としないものを感じます。

1月18日には20時から、
オンラインで医師会の説明会が開催されました。

保健所のこうした対応について医師会はどう考えているのだろう、
と思って参加したのですが、
担当理事の方は、
真っ先に「保健所を助けるために皆さんの協力をお願いします」
という発言から開始され、
徹頭徹尾保健所が正しく、
医師会の医師はそれに100%従うのが当然だ、
という内容だったので正直納得のいかないものを感じました。

保健所は非常に大変な状態なので、
個別のことについて電話で相談するようなことは、
迷惑になるので一切するな、
というような発言もありました。

個々の患者さんに対しての保健所の方針について、
疑義があってもそんなことを尋ねてはいけないと言うのです。

ただ、その日の話を聞いていても、
どのような患者の健康観察をクリニックの医師がやるべきで、
どのような患者さんの対応は保健所でやるべきなのか、
自己観察の対象となるような、
20代で軽症の事例を受け持つべきなのか、
それとも重症化リスクのあるような事例を、
積極的に受け持つべきなのか、
そうした区分けの基準や考え方が、
全く見えて来ません。

言われていることは、
「保健所の職員が大変なので、医師会の医師は、
それを助けるために全力を尽くすべきだ」
という方針があるだけです。

しかし、私達は保健所の業務を助けるために、
存在しているのでしょうか?

助けることが悪いのではありません。
ただ、助けるというより、
協力して難局に当たる、という姿勢が正しいのではないでしょうか?
助けるべきは感染している患者さんであって、
患者さんを助けるために、
保健所と医師会が協力するべきなのではないでしょうか?
しかし、不思議なことに、
その時の医師会の会合の何処にも、
そうした視点は全くと言って良いほど存在してはいませんでした。

協力するのであれば、
もっと健康観察対象の患者さんの、
明確な線引きが必要なのではないでしょうか?
個々の患者さんについて、
もっと保健所の担当者と医師の1人1人が、
相談の上決めるようなスキームが、
必要なのではないでしょうか?

その時の話し合いにも、
保健所からの一方的なメールにも、
そうした視点は皆無であったように思います。

④医療者と患者の相互不信の沼
こうした混沌の中で、
感染された方から非難されることもありました。
18日に検査をされて19日の夜に陽性が確認され、
この時点ではHER-SYSではなく、
ファックスで発生届けを提出した方がいて、
保健所のからの連絡は電話の場合とメールの場合があるので、
両方を確認して下さい。
連絡がないようであればクリニックにご連絡下さい、
と説明をしていたのですが、
20日にお怒りの電話がクリニックに入り、
お話を聞くと、
「メールだけで連絡が来たので、
保健所に電話で相談をすると、
『もう電話などしていません。メールだけです』
と言われた。お前は電話もあると言ったが、
それは嘘だ。嘘つきだ」
というお話でした。

その方は20代であったので、
メールのみの連絡となる可能性はあり、
それは説明済みでしたが、
「電話で連絡のある可能性もある」
という言い方が、
「電話もあります」
というように誤解をされてしまったようです。

ただ、実際には現時点で、
どのような患者さんの線引きの元に、
どの患者さんがメッセージのみの対応となっているのか、
明確な説明は末端の医療機関には届いていません。

その通りのことを説明して、
否定され非難されるのですから、
もう何のために何をやっているのが分からない、
そうした絶望をその時は感じました。

⑤今後の状況について
1月20日分からは入力はファックスから、
HER-SYSに完全に切り替えました。
健康観察については、
クリニックでも可能な旨は感染者への説明の際には、
補足的に行なうようにしています。
本当はもっと関係部署には相談をして、
個別の事例に当たりたいのですが、
「電話をするな。忙しいので迷惑だ」と言うお話なので、
探りながら解決してゆくよりありません。
昨日は14名の検査結果が午後7時に届き、
それから説明の電話をしてHER-SYSに入力して、
終わったのは3時間後でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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アヨアン・イゴカー

大変な状況の中で、奮闘されていることがよく分かりました。
お大事になさってください。
by アヨアン・イゴカー (2022-01-22 13:59) 

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