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「ONODA 一万夜を越えて」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも須田医師が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
onoda.jpg
1974年までフィリピンのルバング島のジャングルで、
最後の日本兵としてゲリラ戦を展開し、
その後日本に戻って当時大きな話題となった、
小野田寛郎さんの1974年までの生涯を描いた作品ですが、
フランスのアルチュール・アラリ監督がメガホンを取り、
フランス、ドイツ、日本などの合作となっています。

これは3時間弱と長いですし、
どんなものかなあと思っていたのですが、
観て良かったと思いました。
あまり小野田さんのことを知らなかったので、
その人生に魅せられましたし、
終戦後の経過も、
戦争の混乱から1つの部隊のみが残り、
それがまた4人だけに減って、
最後は1人になるという段取りが、
とても丁寧に描かれていて説得力がありました。
最後かつての上官と対峙するところでは、
掛け値なしに心が震えました。
素晴らしい場面だったと思います。

勿論かなり脚色はありそうで、
事実そのままという内容ではないのですが、
1つの物語としての完成度は高く、
それでいてフィクションを超えて、
強く心に訴え掛け、考えさせる部分のある映画でした。

これはヨーロッパ映画で良かったと思うのですね。

日本映画としては映画化は無理な素材なんですね。
小野田さん自体の評価に議論がありますし、
何よりフィリピンで住民を何人も殺しているんですね。
その生い立ちや性格にも特異な部分がありますし、
それをそのまま日本で映画化は出来ないですよね。
それを隠して綺麗事にすれば、
それはもう嘘だらけのゴミ映画になってしまいます。

外国映画でフランス人の監督であったからこそ、
現実にかなり寄せた物語が、
実現出来たのです。

ほぼ全員日本人キャストですが、
人気ではなく役柄優先でオーディションされたことの分かる、
とても説得力のあるメンバーで、
しっかり丸坊主にもしていますし、
演技の質感もとてもリアルです。

ジャングルの自然描写は、
これはもうヨーロッパ映画なんですね。
「アギーレ神の怒り」を思い浮かべましたが、
その光と闇の感じや空気感が、
日本映画のそれとはまるで違うのです。
これもフィリピンのジャングルという異国の感じを、
醸し出すのに大きな影響を与えていたと思います。

主役は青年期を遠藤雄弥さんが、
後半を津田寛治さんが演じたのですが、
お2人ともこの映画に出演したことが、
そのキャリアの中でも勲章になったことが間違いがない、
という熱演です。

上官を演じたイッセー尾形さんがまた良かったですよね。
ちょっと1974年の場面は高齢を演じて欲しかった、
という気はするのですが、
陸軍中野学校の教官での、
話を続けるうちに狂気が籠もるような部分は、
イッセーさんならではの凄味がありました。
あの歌の場面、抜群でしたね。

日本映画はフランス人との仕事は、
比較的相性がいいですね。
これがハリウッド製だと、
今でもヘンチクリンな映画にしかならないんですね。
そうは見せなくても、結局差別意識はありますしね。
フランス人が差別しない訳では勿論ないと思うのですが、
これはもう相性なのかな、と思います。
日本人監督のフランス映画も、
意外に良いことが多いのです。

そんな訳でとても面白くて、
とても感動的で考えさせる、
素晴らしいヨーロッパ製日本映画で、
映画ファンには是非観て頂きたい今年必見の1本だと思います。

多分皆さんの予想より数段面白いですよ。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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