「いのち知らず」(岩松了新作) [演劇]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
岩松了さんの新作が、
今下北沢の本多劇場で上演されています。
これはキャストは男性5人だけで、
休憩はないトータル2時間10分ほどのお芝居です。
ラス前から始まり、
過去に戻るとほぼ時系列で進み、
最後にオープニングの少し後に達する、
という構成です。
それを故障したテープレコーダーが修復される、
というディテールで示すのがクレヴァーな仕掛けです。
岩松さんのお芝居も色々な傾向のものがあるのですが、
今回は特定の人間関係の力学を掘り下げてゆくうちに、
次第に生と死との境界が不鮮明になっていって、
最終的には誰が生きていて誰が死んでいるのか、
良く分からない感じになってゆく、
という最近割合多いテーマの作品です。
それから男2人の友情と、
それがもう1人の男によって亀裂を生じ、
結果的にそのうちの1人が死なないといけなくなる、
という構図が今回は反復されてゆきます。
男5人のお芝居というと、
ベケットの「ゴドーを待ちながら」があって、
それが1つのベースになっていることは間違いがなさそうです。
勝地涼さんと仲野太賀さんが中学の同級生で、
一緒にガソリンスタンドを経営したいという夢を持っていて、
それである施設の守衛をしているという設定なのですが、
その医療施設では死者を蘇らせるという怪しい実験をしていて、
先輩の守衛である光石研さんがそのことを勝地さんに吹き込むので、
それをきっかけにして仲野さんと勝地さんとの仲に亀裂が入り、
一方で仲野さんは施設の経営陣と交流を持つようになります。
誰かが死ななければ終わらない、
という不穏な空気が流れ、緊張が高まりますが、
作品の世界では、
誰がか舞台上ではない何処かで死んでも、
施設によって甦らされて帰って来る、
という可能性があるので、
台詞の中にもあるように、
こちら側で生きていると思っているのに、
実はあちら側に行ってしまっている、
という可能性もあるので、
話がややこしいのです。
如何にも岩松さんらしい、
とても観客には意地悪な設定です。
最初に太賀さんがカセットレコーダーに、
勝地さんへのメッセージを吹き込み、
ラストでそれが再生されないのと、
その前に意味ありげに太賀さんの後を追って、
勝地さんが外に出る場面があるので、
ははあ、ここで勝地さんが太賀さんを殺したのね、
というようには推察はされるのですが、
光石さんも同じではない可能性もありますし、
勝地さんと太賀さんが高校生の時に、
もう1人の中学の同級生が自殺して、
自分達も死んだと想定して、
人生を振り返るゲームをした、
というようなエピソードがあるので、
これは結局死人が過去を回想して、
未来を夢想しているだけではないのかしら、
と疑えば切りのない感じになっています。
岩松さんの劇作の中でも、
死のムードがかなり濃厚な作品の1つだと思います。
キャストは5人ともとても安定感があり、
それぞれにきちんと演技の見せ場があり、
それなりに熱量を持って芝居の出来る余地があるので、
内容のわからなさと居心地の悪さはありますが、
演劇の興趣を味合わせてはくれます。
岩松さんの作品としては、
入門編としてはややハードルが高いのですが、
それほどストレスなく完走出来るタイプの作品だと思います。
感性を研ぎ澄ませて鑑賞し、
自分なりの解釈をすればいいのだと思います。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
岩松了さんの新作が、
今下北沢の本多劇場で上演されています。
これはキャストは男性5人だけで、
休憩はないトータル2時間10分ほどのお芝居です。
ラス前から始まり、
過去に戻るとほぼ時系列で進み、
最後にオープニングの少し後に達する、
という構成です。
それを故障したテープレコーダーが修復される、
というディテールで示すのがクレヴァーな仕掛けです。
岩松さんのお芝居も色々な傾向のものがあるのですが、
今回は特定の人間関係の力学を掘り下げてゆくうちに、
次第に生と死との境界が不鮮明になっていって、
最終的には誰が生きていて誰が死んでいるのか、
良く分からない感じになってゆく、
という最近割合多いテーマの作品です。
それから男2人の友情と、
それがもう1人の男によって亀裂を生じ、
結果的にそのうちの1人が死なないといけなくなる、
という構図が今回は反復されてゆきます。
男5人のお芝居というと、
ベケットの「ゴドーを待ちながら」があって、
それが1つのベースになっていることは間違いがなさそうです。
勝地涼さんと仲野太賀さんが中学の同級生で、
一緒にガソリンスタンドを経営したいという夢を持っていて、
それである施設の守衛をしているという設定なのですが、
その医療施設では死者を蘇らせるという怪しい実験をしていて、
先輩の守衛である光石研さんがそのことを勝地さんに吹き込むので、
それをきっかけにして仲野さんと勝地さんとの仲に亀裂が入り、
一方で仲野さんは施設の経営陣と交流を持つようになります。
誰かが死ななければ終わらない、
という不穏な空気が流れ、緊張が高まりますが、
作品の世界では、
誰がか舞台上ではない何処かで死んでも、
施設によって甦らされて帰って来る、
という可能性があるので、
台詞の中にもあるように、
こちら側で生きていると思っているのに、
実はあちら側に行ってしまっている、
という可能性もあるので、
話がややこしいのです。
如何にも岩松さんらしい、
とても観客には意地悪な設定です。
最初に太賀さんがカセットレコーダーに、
勝地さんへのメッセージを吹き込み、
ラストでそれが再生されないのと、
その前に意味ありげに太賀さんの後を追って、
勝地さんが外に出る場面があるので、
ははあ、ここで勝地さんが太賀さんを殺したのね、
というようには推察はされるのですが、
光石さんも同じではない可能性もありますし、
勝地さんと太賀さんが高校生の時に、
もう1人の中学の同級生が自殺して、
自分達も死んだと想定して、
人生を振り返るゲームをした、
というようなエピソードがあるので、
これは結局死人が過去を回想して、
未来を夢想しているだけではないのかしら、
と疑えば切りのない感じになっています。
岩松さんの劇作の中でも、
死のムードがかなり濃厚な作品の1つだと思います。
キャストは5人ともとても安定感があり、
それぞれにきちんと演技の見せ場があり、
それなりに熱量を持って芝居の出来る余地があるので、
内容のわからなさと居心地の悪さはありますが、
演劇の興趣を味合わせてはくれます。
岩松さんの作品としては、
入門編としてはややハードルが高いのですが、
それほどストレスなく完走出来るタイプの作品だと思います。
感性を研ぎ澄ませて鑑賞し、
自分なりの解釈をすればいいのだと思います。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
2021-10-24 08:27
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