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抗うつ剤の中止と再発リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
抗うつ剤の中止と再発リスク.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2021年9月30日掲載された、
抗うつ剤の中止と再発リスクについての論文です。

SSRIを始めとする抗うつ剤は、
特にストレスの多い今の社会においては、
非常に使用頻度の多い薬の1つです。

うつ病に対して適切に使用される範囲においては、
その有効性と安全性もほぼ確立されています。

ただ、その使用期間は長期化することが多く、
特に病状が安定してからの維持療法については、
その再発の懸念から数年以上に渡り、
持続されることが、
世界的にも稀ではありません。

その安全な中止のタイミングとその後のフォローのあり方については、
ある程度の指針はあるものの、
個々の医師の裁量に任せられている部分が多いのが実際です。

実際には、その裏打ちとなるような、
実証的かつ信頼性の高いデータは、
あまり存在していないからです。

今回の研究はイギリスのプライマリケアのクリニック150か所において、
年齢が18歳から74歳で、
2回以上のうつ病エピソードがあるか、
2年以上の治療歴のあるうつ病患者を登録、
抗うつ剤のミルタザピン(リフレックス)を1日30㎎、
セルトラリン(ジェイゾロフト)を1日100㎎、
シタロプラムを1日20㎎、
フルオキセチンを1日20㎎のいずれかを、
最低9か月以上持続して、
患者がもう終了して問題ないと感じている478名を登録し、
くじ引きで2つの群に分けると、
本人にも主治医にも分からないように、
一方はそのまま実薬を継続し、
もう一方は偽薬に変更して、
52週の経過観察を行なっています。
パロキセチン(パキシル)とベンラファキシン(イフェクサー)は、
離脱症状が強いとの認識で対象薬から外されています。

その結果、
観察期間中に実薬群の39%と、
偽薬群の56%がうつ症状を再発し、
抗うつ剤の中止により、
再発リスクは2.06倍(95%CI:1.56から2.70)有意に増加していました。

このように、
本人が安定した状態と感じているうつ病患者においても、
機械的に抗うつ剤を中止することは、
明確にその後の再発リスクを高めることが、
今回の結果からは明確に示されていて、
今後その中止のあり方や経過観察の方法については、
より実証的な検証が必要であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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