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新型コロナウイルス感染症に対する抗凝固療法の有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
COVID-19と抗凝固療法.jpg
British Medical Journal誌に2021年2月11日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症の入院事例に対する、
積極的な抗凝固療法の効果についての論文です。

新型コロナウイルス感染症の重症事例では、
肺炎以外にも多くの全身の合併症があり、
中でも注目されているものの1つが、
全身の凝固系の異常による血栓症の発症です。
たとえば静脈血栓症については、
集中治療を要した新型コロナウイルス感染症の入院事例のうち、
約3割に認められたという報告もあります。
血栓症が生命予後に影響を与える事例も多いことより、
臨床においてはヘパリンなどによる、
抗凝固療法が施行されることも多くなっています。

この抗凝固療法の有効性は、
小規模の臨床データでは認められていますが、
精度の高い大規模データは存在していません。

そこで今回の研究では、
アメリカの退役軍人省の健康保険データを活用して、
新型コロナウイルス感染症の入院事例における、
抗凝固療法の予後に与える影響を検証しています。

対象は4297名の新型コロナウイルス感染症の入院事例で、
このうち84.4%に当たる3627名は、
入院から24時間以内に抗凝固療法が開始されていました。
使用されていた薬剤はヘパリンとエノキサバンが殆どでした。
治療開始後30日の時点での死亡率は、
抗凝固療法群が14.3%に対して、
未使用群は18.7%で、
抗凝固療法の使用により、
30日後の時点の死亡リスクは、
27%(95%CI: 0.66から0.81)有意に低下していました。
抗凝固療法の合併症については、
その施行により輸血を要するような出血系合併症の、
有意な増加は認められませんでした。

これは症例を登録して経過をみるような試験ではないので、
精度的にはそれほど高いものではありませんが、
かなり大規模な検証が行われており、
抗凝固療法が患者さんの生命予後改善に、
一定の効果があったという報告は意義のあるもので、
今後のより精度の高い検証に期待をしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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