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SGLT2阻害剤のメタ解析(2020年) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
SGLT2阻害剤のメタ解析.jpg
Diabetes Obesity and Metabolism誌に、
2020年10月11日ウェブ掲載された、
最近非常に評価の高い糖尿病治療薬の、
予後などへの有効性を検証したメタ解析の論文です。

SGLT2阻害剤は、
尿に出るブドウ糖を増加させることによって、
血糖値を下げるという、
新しいメカニズムの薬です。

それが近年注目されているのは、
臨床試験において心血管疾患のリスクの低下や、
死亡リスクの低下が報告されているからです。

最初にそうしたデータが発表されたのは、
エンパグリフロジンというSGLT2阻害剤で、
それ以降もエンパグリフロジンと比較するとやや見劣りはするものの、
カナグリフロジン、ダパグリフロジンという、
別個のSGLT2阻害剤の臨床試験において、
同種の傾向があることが報告されています。
ただ、カナグリフロジン使用群での下肢切断リスクの増加など、
個別には気になる有害事象も報告されています。

現在2型糖尿病の実臨床において、
GLP1アナログやDPP4阻害剤のインクレチン関連薬と共に、
SGLT2阻害剤は最も広く使用されている薬です。

ただ、臨床試験においては、
この薬は2型糖尿病の基礎薬であるメトホルミンに、
上乗せの形で使用されていることが殆どです。

一方で実臨床においては、
メトホルミンよりも先行して、
SGLT2阻害剤が使用されるケースも、
増えているようにも思います。

今回の検証はSGLT2阻害剤の、
これまでの主だった臨床試験をまとめて解析したメタ解析ですが、
メトホルミンの使用の有無を分けて検証している点が特徴です。

これまでの4種のSGLT2阻害剤の6つの精度の高い臨床試験を、
まとめて解析した結果として、
SGLT2阻害剤の使用は主要な心血管疾患の発症リスクを、
メトホルミンとの併用で7%(95%CI:0.87から1.00)、
単独使用では18%(95%CI:0.71から0.86)低下させていました。
心不全や心血管疾患による死亡リスクは、
メトホルミンとの併用で21%(95%CI:0.73から0.86)、
単独使用では26%(95%CI:0.63から0.87)、
それぞれ有意に低下させていました。

このように、
個々の薬剤の臨床試験が積み上がってゆくにつれ、
明確になってきたことは、
SGLT2阻害剤の使用により、
2型糖尿病の患者さんの合併症の予後は改善し、
それはメトホルミンの併用の有無によらない、
という知見です。

ただ、こちらも多く指摘されているように、
SGLT2阻害剤は尿路感染や脱水など、
多くの副作用や有害事象のある薬でもあり、
安全性の検証も今後継続される必要はありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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