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新型コロナウイルス感染症回復後の検査陽性をどう考えるか? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナウイルスの再陽性例の検証.jpg
JAMA Internal Medicine誌に2020年11月12日ウェブ掲載された、
臨床でも問題になることが多い、
一旦感染から回復した後に、
時間をおいて遺伝子検査が陽性になる現象についてのレターです。

今では必要条件となっていませんが、
以前は新型コロナウイルス感染症の治癒判定として、
24時間を置いての2回のRT-PCR検査で、
いずれも陰性であること、
という基準がありました。

大半の患者さんでは、
発熱や咳などの症状が改善して数日が経過すれば、
検査も陰性になるのですが、
中には一定数、症状はすっかり回復しているのに、
何度検査しても結果は陽性、
ということがあります。

報告によれば、
2から3ヶ月以上RT-PCRの陽性が持続している、
というような事例も報告されています。

ただ、症状の出現から10日以上が経過し、
3日以上無症状であれば、
その時点でウイルスが感染して増殖するという事例は、
報告されていないので、
そうした条件をクリアした時点で、
再度RT-PCR検査をする必要はない、
というのが現状の臨床的な指針となっています。

ただ、実際には検査をして再度陰性が証明されないと、
出社を許さないというような規定を、
社内で決めているような会社もあって、
クリニックでもその対応に苦慮しているところです。

一方で一旦2回のRT-PCR検査で、
いずれも陰性になり治癒が認められたのに、
その数週間後に検査をしたら、
また陽性になった、というような事例も報告されています。

こうした事例が再感染であるのか、
それとも持続感染であるのか、
という点は今でも議論になるところで、
明確な結論が得られているという訳ではありません。

そこで今回の研究ではイタリアにおいて、
新型コロナウイルス感染症と検査で診断され、
症状が回復して3日を経過し、
24時間の間隔で2回行われた鼻腔からのRT-PCR検査で、
2回とも陰性であった176名の患者の経過を追い、
発症から1ヶ月から2ヶ月くらいの時点で、
再度RT-PCR検査を施行して、
陽性となった事例の検証を行っています。

その結果、
検査の行われた176名のうち18.2%に当たる32名で、
RT-PCR検査は再度陽性となっていました。
陽性になった回復患者の血液の抗体価は、
1名を除いてIgG抗体もIgA抗体も陽性化していて、
血清学的には再感染の可能性は否定的でした。
鼻腔のサンプルからウイルスの複製が確認されたのは、
32名のうち1名の検体のみで、
それ以外ではウイルスの周囲への感染可能性は、
否定的と思われました。

このように、
実際に2割近くの患者さんでは、
一旦陰性後に遺伝子検査が陽性化しており、
これは決して稀な現象とは言えないことが確認されました。
おそらく、治癒後もウイルス遺伝子自体は、
鼻腔で検出されることがあるのですが、
抗体は血液中で検出され、
ウイルスの複製は困難であることから考えて、
これは再感染ではなく、
一般的な意味での持続感染でもない可能性が高いと、
そう考えて大きな誤りはないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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