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限局性前立腺癌治療後の長期予後 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医活動で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
15年 前立腺癌.jpg
British Medical Journal誌に2020年掲載された、
限局性前立腺癌の治療後の長期予後を検証した論文です。

前立腺癌は高齢男性に多い癌ですが、
その予後は概ね良好で、
特に転移などのない限局性の前立腺癌では、
その5年生存率はほぼ100%と推計されています。
つまりその生命予後はその病気のない人と、
ほぼ変わらないと言えます。

ただ、中には進行する事例や転移する事例もあることは事実です。

従って、
癌が見つかっても、
進行しないかどうかの経過観察のみを行なって、
すぐに治療をしないというのも有効な選択肢の1つです。

治療には前立腺の全摘術やホルモン療法、
外照射と小線源治療を含む放射線治療などがあり、
そのいずれもが有効性を確認されています。
しかし、いずれも頻度は少ないながら合併症はあり、
治療をするかしないかの選択は、
その患者さんの長期のQOLに対する配慮が必要です。

今回の研究はオーストラリアにおいて、
限局性の前立腺癌を診断された、
その時点で70歳未満の1642名を登録し、
一般住民786名を対照群として設定して、
15年を超える長期の経過観察を行なっています。

その結果、登録後15年の時点で勃起不全の頻度は、
対照群では42.7%に対して、
前立腺切除術施行群では83.0%、
経過観察群でも62.3%と、
限局性前立腺癌では有意に増加していました。
前立腺切除術後では、
15年が経過しても神経温存でも18.2%、
そうでない場合には27.0%排尿の異常が認められました。
他の治療と比較して、
放射線の外照射や線量の多い小線源療法、
ホルモン療法施行者では、
下痢や腹痛、下血などの、
消化管の不調が15年後にも多く認められました。

このように、
どの治療を選択しても、
治療に伴う合併症や後遺症は、
治療後15年を経過しても少なからず認められているので、
この病気の生命予後が極めて良いことを考えると、
限局性前立腺癌の治療を行なうに当たっては、
その長期のリスクについて、
今後はより明確に患者さんに説明される必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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