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新型コロナウイルス感染症の無症候感染の割合 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2020-10-19.png
これは査読前の論文を公開している、
medRxivというサイトに2020年10月14日掲載された、
新型コロナウイルス感染症の無症候感染の比率を解析した、
メタ解析の論文です。

内容は読んだ範囲ではしっかりしていると思いますが、
査読は受けていないという点は注意が必要です。

新型コロナウイルス感染症(Covid-19)に、
無症状の感染が多いというのは、
今では広く知られている知見です。

ただ、ウイルスの構造の似通った、
SARSと比較すると、
無症状の感染が多く、
無症状の時期に周囲に感染を広げるリスクが高い、
ということについては間違いがありませんが、
インフルエンザの感染症と比べるとどうか、
というような点については色々な考え方があって、
専門家の間でもその見解は一致はしていません。

ここで問題となるのは、
無症状感染の定義についてです。

たとえば、学生の寮などで集団感染が起こると、
何十人もの寮生の感染が見つかり、
そのほとんどが無症状であった、
というような言い方がされます。

しかし、これは敢くまで、
RT-PCR検査をした時点で無症状であった、
という意味に過ぎません。
症状のある感染者でも、
症状の出る前には無症状で、
検査をすれば陽性になる、
というタイミングが存在しているからです。

本当に意味での無症状感染というのは、
経過をみても全く症状は見られず、
検査のみ陽性になるという事例のみのことなのです。

今回の研究は、
これまでの市中感染の事例をまとめたメタ解析ですが、
経過の中で症状の出現したような事例は排除して、
真の無症状感染の割合を推計しているところが特徴です。

これまでに発表された21の臨床データをまとめて解析した結果、
新型コロナウイルスの感染が無症状のまま経過する頻度は、
23%(95%CI: 16から30)と算出されました。
これを感染の状況毎に分けて検討すると、
家族内感染においては6%(95%CI:0から17)と最も低く、
一方でクラスターではない集団でのスクリーニング検査では、
47%(95%CI:21から75)と最も高率になっていました。
症状のある感染と無症状の感染を比較した時、
そのウイルス量とウイルス検出期間には、
明確な差は認められませんでした。

このように、
トータルに見ると新型コロナウイルスの無症状感染は、
4分の1程度と想定され、
特に濃厚接触が想定されるような集団では、
無症状での感染は少なく、
逆にそれほど感染リスクの高くない集団においては、
その比率は高まる傾向にあるようです。

この問題はまだ不明の部分が多く、
信頼のおけるデータも多くはないので、
これは現状での1つの観測に過ぎないものですが、
今後もこうした検証が積み重ねられることにより、
この感染症の実体が明確になり、
実体の明確でないが故の不安や恐怖が、
低減されることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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