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新型コロナウイルス感染症回復後の心臓病変について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナウイルス回復後の心臓変化.jpg
JAMA誌に2020年7月27日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症の心臓の合併症についての論文です。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、
重篤な肺炎から呼吸不全を来すことが、
その重症事例の特徴とされていますが、
心臓の持病のある人では、
心不全を来しやすいことが報告されています。
重症の事例では心臓の筋肉の障害を示す、
トロポニンTの血液濃度が上昇している、
という報告も見られます。
致死的な経過を辿った事例の7%では、
重篤な心筋炎が見られたという報告もあります。

新型コロナウイルス感染症から回復後に、
だるさや息切れ、胸の痛みなどの体調不良が、
持続しているケースが多いという報告があり、
仮にウイルス感染に伴って心筋の炎症が起こっているとすると、
ウイルスが検出されなくなって以降も、
その炎症が後遺症として残っている、
という可能性も想定されます。

今回の研究はドイツの単独施設において、
上気道からの検体のRT-PCR検査で陽性となった、
新型コロナウイルス感染症の患者100名を対象に、
診断から2週間以上経過して、
症状は改善し隔離期間も終了した段階で、
心臓の造影MRI検査と血液のトロポニンT濃度、
心機能などを計測して、
未感染のコントロール50名との比較も行っています。

患者の内訳は、
67名が自宅療養、33名が入院治療で、
人工呼吸器の装着は2名のみ、
17名は無症状感染者で、
49名は軽症から中等症です。
つまり、比較的軽症の事例が多いのが特徴です。

回復後の血液においても、
71名ではトロポニンTが検出されており、
5名は心筋梗塞などの疑われる病的レベルの上昇を示していました。

非感染者と比較して、
回復後の感染者では左室機能は低下し、
左室径は拡大する傾向を示しました。

心臓MRI検査における何等かの異常所見は、
回復後感染者の78名(78%)に認められ、
60名(60%)では心筋の炎症が持続している所見が認められました。

この心筋の炎症所見は、
症状の重症度とは関連なく認められました。
つまり、無症状の感染者でも、
心筋の炎症自体は起こっている可能性があるのです。

今回の所見は基本的には軽度のものですが、
新型コロナウイルス感染症から回復した時期において、
6割の患者では心筋の炎症が残存している、
という知見の意味は大きく、
今後回復後の体調不良との関係を含め、
更なる知見の積み重ねを注視したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

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