新型コロナウイルス重症事例に対するステロイド治療の効果 [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日なので外来は午前中で終わり、
午後は事務作業などの予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
the New England Journal of Medicine誌に、
2020年7月17日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症に対する、
ステロイド治療の効果を検証した論文です。
新型コロナウイルス感染症は、
8割以上の患者さんは軽症で推移しますが、
肺炎から重篤な呼吸不全に進行するケースがあり、
人工呼吸器の装着が必要となるような事例では、
その致死率も25%以上と報告されています。
上記文献にあるイギリスのデータでは、
入院して人工呼吸器を装着した事例の致死率は、
37%と記載されています。
抗ウイルス剤のレムデシビルは、
患者の回復までの期間を短縮する効果が、
臨床試験で報告されていますが、
現状重症の事例で明確に死亡リスクを低下させた、
という信頼のおけるデータが、
存在しているような治療はありません。
新型コロナウイルス感染症の肺病変の重症化には、
免疫系の過剰な反応が影響しているのでは、
という考え方があります。
炎症性サイトカインなどの増加は、
その可能性を示唆しています。
デキサメサゾンなどの、
強力な合成ステロイド(糖質コルチコイド)剤には、
強い抗炎症作用と免疫抑制作用があり、
免疫の暴走を抑えるような効果が期待されます。
その一方で免疫の抑制は、
ウイルス感染の経過を悪化させるような可能性も、
否定は出来ません。
強力なステロイド剤の使用は、
諸刃の刃という側面があるのです。
これまでに少数の事例のデータにおいて、
メチルプレドニゾロンというステロイド剤の使用により、
新型コロナウイルス感染症の予後が改善した、
というようなデータはあるものの、
大規模なデータや介入試験での有効性は確認されておらず、
現状のガイドラインの多くにおいて、
ステロイドの使用は推奨されていません。
しかし、実際には臨床においてステロイド剤は、
少なからず使用されているのです。
今回の研究はそのギャップを埋めようとしたもので、
イギリスにおいて新型コロナウイルス感染症と診断されて入院した患者さんを、
1対2の比率でクジ引きで2つの群に分けると、
4321名は通常の治療を行ない、
2104名はデキサメサゾンというステロイドを、
経口もしくは経静脈投与で、
1日6ミリグラムを最長10日間使用して、
登録後28日の時点での生命予後を比較検証しています。
その結果、
デキサメサゾン使用群の22.9%に当たる482名と、
通常治療群の25.7%に当たる1110名が、
登録28日の時点までに死亡していて、
デキサメサゾンの使用は28日間の死亡リスクを、
17%(95%CI:0.750.93)有意に低下していました。
これを人工呼吸器使用者のみで解析すると、
デキサメサゾン使用群は通常治療群と比較して、
28日間の死亡リスクを36%(95%CI:0.51から0.81)、
より大きく低下させていました。
一方で人工呼吸器や酸素療法を施行していない患者のみの解析では、
デキサメサゾンの使用は生命予後に有意な影響を与えていませんでした。
このように、今回の大規模な検証においては、
重症の事例において、
デキサメサゾンの使用は患者の生命予後を、
短期的に改善していました。
このデータは更なる検証が必要ですが、
事例を選べばステロイドの使用にょり、
患者の生命予後が改善する可能性が示されたことの意義は大きく、
この結果を受けて、
レムデシビルに次ぐ新型コロナウイルス治療薬として、
日本でもデキサメサゾンが承認の運びとなったようです。
実地臨床での有効性など、
今後の推移に注視したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日なので外来は午前中で終わり、
午後は事務作業などの予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
the New England Journal of Medicine誌に、
2020年7月17日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症に対する、
ステロイド治療の効果を検証した論文です。
新型コロナウイルス感染症は、
8割以上の患者さんは軽症で推移しますが、
肺炎から重篤な呼吸不全に進行するケースがあり、
人工呼吸器の装着が必要となるような事例では、
その致死率も25%以上と報告されています。
上記文献にあるイギリスのデータでは、
入院して人工呼吸器を装着した事例の致死率は、
37%と記載されています。
抗ウイルス剤のレムデシビルは、
患者の回復までの期間を短縮する効果が、
臨床試験で報告されていますが、
現状重症の事例で明確に死亡リスクを低下させた、
という信頼のおけるデータが、
存在しているような治療はありません。
新型コロナウイルス感染症の肺病変の重症化には、
免疫系の過剰な反応が影響しているのでは、
という考え方があります。
炎症性サイトカインなどの増加は、
その可能性を示唆しています。
デキサメサゾンなどの、
強力な合成ステロイド(糖質コルチコイド)剤には、
強い抗炎症作用と免疫抑制作用があり、
免疫の暴走を抑えるような効果が期待されます。
その一方で免疫の抑制は、
ウイルス感染の経過を悪化させるような可能性も、
否定は出来ません。
強力なステロイド剤の使用は、
諸刃の刃という側面があるのです。
これまでに少数の事例のデータにおいて、
メチルプレドニゾロンというステロイド剤の使用により、
新型コロナウイルス感染症の予後が改善した、
というようなデータはあるものの、
大規模なデータや介入試験での有効性は確認されておらず、
現状のガイドラインの多くにおいて、
ステロイドの使用は推奨されていません。
しかし、実際には臨床においてステロイド剤は、
少なからず使用されているのです。
今回の研究はそのギャップを埋めようとしたもので、
イギリスにおいて新型コロナウイルス感染症と診断されて入院した患者さんを、
1対2の比率でクジ引きで2つの群に分けると、
4321名は通常の治療を行ない、
2104名はデキサメサゾンというステロイドを、
経口もしくは経静脈投与で、
1日6ミリグラムを最長10日間使用して、
登録後28日の時点での生命予後を比較検証しています。
その結果、
デキサメサゾン使用群の22.9%に当たる482名と、
通常治療群の25.7%に当たる1110名が、
登録28日の時点までに死亡していて、
デキサメサゾンの使用は28日間の死亡リスクを、
17%(95%CI:0.750.93)有意に低下していました。
これを人工呼吸器使用者のみで解析すると、
デキサメサゾン使用群は通常治療群と比較して、
28日間の死亡リスクを36%(95%CI:0.51から0.81)、
より大きく低下させていました。
一方で人工呼吸器や酸素療法を施行していない患者のみの解析では、
デキサメサゾンの使用は生命予後に有意な影響を与えていませんでした。
このように、今回の大規模な検証においては、
重症の事例において、
デキサメサゾンの使用は患者の生命予後を、
短期的に改善していました。
このデータは更なる検証が必要ですが、
事例を選べばステロイドの使用にょり、
患者の生命予後が改善する可能性が示されたことの意義は大きく、
この結果を受けて、
レムデシビルに次ぐ新型コロナウイルス治療薬として、
日本でもデキサメサゾンが承認の運びとなったようです。
実地臨床での有効性など、
今後の推移に注視したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。
実年齢56歳、血管・骨年齢30代の名医が実践! コーヒーを飲む人はなぜ健康なのか?
- 作者: 石原 藤樹
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2020/07/18
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
2020-07-22 06:09
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