新型コロナウイルス無症候感染者のウイルス保持期間 [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は終日レセプト作業の予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
BMC系列のCritical Care誌に2020年5月24日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルスの無症候性キャリアの、
ウイルス保持期間を解析した短報です。
新型コロナウイルス(SARS-CoV2)の感染の厄介な点は、
症状のない時期にも感染力があり、
また完全に症状のない無症候性のキャリアからも、
感染する可能性があることです。
密閉された空間や環境において、
クルーズ船、病院、介護施設などで感染が拡大し、
クラスターを形成するのは、
こうした感染の特徴があるからです。
有効な治療薬や予防薬、ワクチンなどの開発が、
まだ道半ばにある現状では、
こうした感染の拡大に対しては、
ステイホーム、社会的距離を保つ、
などの隔離対策以外、有効な対策のないのが実際です。
それでは、実際に無症候性のキャリアである人は、
どのくらいの期間ウイルスを保持していて、
周囲に感染するリスクがあるのでしょうか?
今回の研究では中国において、
複数の病院で新型コロナウイルス感染症の患者と接触した被験者を登録し、
1から2日に1回のペースで呼吸器検体によるRT-PCR検査を繰り返し行い、
それが陽性となった場合には、
2回続けて陰性となるまで検査を繰り返します。
結果として24例の無症候性キャリアが抽出されました。
その結果、
ウイルスに感染してからRT-PCR検査で陽性となり、
最終的に2回陰性が確認されるまでの期間は、
平均で22.0日(SD7.1)でした。
RT-PCR検査で陽性となってから2回陰性となるまでの期間は、
平均で7.9日(SD3.5)でした。
その結果を一覧にしたものがこちらです。
見づらいと思いますが、
左の黒い三角マークがウイルスに感染した日を示し、
ピンクのラインはウイルス保持期間を示します。
赤い丸が最初にRT-PCRで陽性が確認された日で、
青い丸が2回続けて陰性が確認された日です。
これを見ると、
検査で陽性になるまでに期間は、
症状の出る人であれば潜伏期になる訳ですが、
かなりまちまちであることが分かります。
ケース2は一番ウイルス保持期間の長い事例で32日間となっています。
検査はタイミングによって、
陽性にも陰性にもなる可能性があり、
正確にどの時期に感染が成立するのかも分かりません。
たとえば、接触者に一斉にRT-PCR検査を行ったとして、
その時に陰性であっても、翌日は陽性、
ということがあり得るのです。
おまけに症状は何もないのですから、
手がかりがありません。
以前何度かお示ししたように、
症状出現後概ね8日以降の時期においては、
RT-PCR検査は陽性であっても、
ウイルスに感染力があるという証拠は今のところありません。
ただ、ないとも言い切れない、というところがあるので、
現状接触者への対応としては、
検査も適宜しつつ、
1ヶ月は隔離が必要、
ということにならざるを得ない訳です。
今後ウイルスの動態についての知見が積み重ねられ、
感染リスクの高い時期が絞り込めるようになれば、
もう少し経済活動を邪魔しないような感染対策が可能となるのでしょうが、
現状はそれは不可能であるのが、
医療側から見た現実であるようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は終日レセプト作業の予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
BMC系列のCritical Care誌に2020年5月24日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルスの無症候性キャリアの、
ウイルス保持期間を解析した短報です。
新型コロナウイルス(SARS-CoV2)の感染の厄介な点は、
症状のない時期にも感染力があり、
また完全に症状のない無症候性のキャリアからも、
感染する可能性があることです。
密閉された空間や環境において、
クルーズ船、病院、介護施設などで感染が拡大し、
クラスターを形成するのは、
こうした感染の特徴があるからです。
有効な治療薬や予防薬、ワクチンなどの開発が、
まだ道半ばにある現状では、
こうした感染の拡大に対しては、
ステイホーム、社会的距離を保つ、
などの隔離対策以外、有効な対策のないのが実際です。
それでは、実際に無症候性のキャリアである人は、
どのくらいの期間ウイルスを保持していて、
周囲に感染するリスクがあるのでしょうか?
今回の研究では中国において、
複数の病院で新型コロナウイルス感染症の患者と接触した被験者を登録し、
1から2日に1回のペースで呼吸器検体によるRT-PCR検査を繰り返し行い、
それが陽性となった場合には、
2回続けて陰性となるまで検査を繰り返します。
結果として24例の無症候性キャリアが抽出されました。
その結果、
ウイルスに感染してからRT-PCR検査で陽性となり、
最終的に2回陰性が確認されるまでの期間は、
平均で22.0日(SD7.1)でした。
RT-PCR検査で陽性となってから2回陰性となるまでの期間は、
平均で7.9日(SD3.5)でした。
その結果を一覧にしたものがこちらです。
見づらいと思いますが、
左の黒い三角マークがウイルスに感染した日を示し、
ピンクのラインはウイルス保持期間を示します。
赤い丸が最初にRT-PCRで陽性が確認された日で、
青い丸が2回続けて陰性が確認された日です。
これを見ると、
検査で陽性になるまでに期間は、
症状の出る人であれば潜伏期になる訳ですが、
かなりまちまちであることが分かります。
ケース2は一番ウイルス保持期間の長い事例で32日間となっています。
検査はタイミングによって、
陽性にも陰性にもなる可能性があり、
正確にどの時期に感染が成立するのかも分かりません。
たとえば、接触者に一斉にRT-PCR検査を行ったとして、
その時に陰性であっても、翌日は陽性、
ということがあり得るのです。
おまけに症状は何もないのですから、
手がかりがありません。
以前何度かお示ししたように、
症状出現後概ね8日以降の時期においては、
RT-PCR検査は陽性であっても、
ウイルスに感染力があるという証拠は今のところありません。
ただ、ないとも言い切れない、というところがあるので、
現状接触者への対応としては、
検査も適宜しつつ、
1ヶ月は隔離が必要、
ということにならざるを得ない訳です。
今後ウイルスの動態についての知見が積み重ねられ、
感染リスクの高い時期が絞り込めるようになれば、
もう少し経済活動を邪魔しないような感染対策が可能となるのでしょうが、
現状はそれは不可能であるのが、
医療側から見た現実であるようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2020-06-03 05:57
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コメント(1)
とても貴重な情報ありがとうございます。3点ほど教えてください。
1)表の「黒い三角マークがウイルスに感染した日」というのは、被験者が新型コロナウイルス感染症の患者と接触した日という理解よいでしょうか?
2)症状が出た感染者の感染から発症までの平均日数が5日程度ということをどこかで聞いたのですが、無症候感染者の場合、ウイルス保持期間の中で、PCR検査陰性の期間の方が長いということになりますかね。
3)日本でもようやく濃厚接触者に対して無症候状態でもPCR検査が行われるようになったので、この研究のように無症候感染者でのウイルスの動態とPCR検査の感度についての情報が分析されるようになるとよいですね。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
by 植田武智 (2020-06-03 16:07)