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新型コロナウイルスに対する血清療法の効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナウイルスの血清療法の効果.jpg
2020年3月27日のJAMA誌にウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症の血清療法についての論文です。

新型コロナウイルス感染症に対しては、
HIV治療薬やインフルエンザ治療薬などの抗ウイルス剤、
吸入ステロイド剤を含むステロイド剤、
セリンプロテアーゼ阻害剤など、
多くの治療が試みられてはいますが、
現時点で決め手となるものは見付かっていません。

治療薬のない感染症に対して、
昔から試みられている方法が、
その感染症から回復した患者の血液成分を、
重症の患者に投与するという方法です。

これを血清療法と言います。

2009年に「感染列島」という映画がありましたが、
この映画でも結局は血清療法で解決されていました。

回復期の血清には、
その感染症に対抗して作られた抗体が含まれているので、
それが患者の治療の有効な可能性がある訳です。

ただ、これは血液製剤の使用ですから、
当然リスクがありますし、
どの成分が治療に有効であるのかの根拠も、
現時点では明らかではありません。

今回の論文では、
深圳第三人民病院という中国の単独施設において、
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染して入院し、
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)という重症の呼吸不全で人工呼吸器を装着、
抗ウイルス剤などの治療を行っても症状の改善が見られない、
トータル5名の患者に対して、
入院から10から22日の間に回復期の血清投与し、
その後の経過を観察しています。
使用された血清に充分量の抗体が含まれていることは確認されています。

その結果、
血清使用後12日の時点で、
4名の患者はARDSの状態から回復し、
2週間以内に3名の患者は人工呼吸器管理から離脱しています。
血清使用後37日の時点で、
5名中3名は病院を退院し、
残りの2名も安定した状態にあると記載されています。

今回の結果は5名のみのデータで、
対象群も設定されていないので、
あくまで試験的な結果であると思います。

血清療法は敢くまで応急避難的な治療ですが、
これまでと同様今回の新型コロナウイルス感染症に対しても、
勿論リスクはあるものの、
一定の有効性は認められるものであるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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