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妊娠中のアセトアミノフェンの使用と胎児への影響 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アセトアミノフェンの妊娠中の影響.jpg
2019年のJAMA Psychiatry誌に掲載された、
現状妊娠中に最も安全に使用可能と考えられている、
解熱鎮痛剤のアセトアミノフェンに、
胎児の自閉症などの発達障害を増加させるリスクがあるのでは、
という気になる報告です。

アセトアミノフェンは、
妊娠中の発熱や疼痛の治療薬として、
世界的に広く使用されている薬剤です。

その安全性はほぼ確立されていると考えられていましたが、
最近幾つかの疫学データにおいて、
妊娠中のアセトアミノフェンの使用と、
自閉症スペクトラム障害や注意欠陥多動性障害(ADHD)との関連が、
指摘されて問題となっています。

アセトアミノフェンは胎盤を通過することが確認されていて、
胎児への神経毒性や、
胎児の男性ホルモン産生を阻害するような働きが、
実験的にはあることも報告されています。

ただ、これまでの疫学データにおいては、
単純に妊娠されている女性への聞き取りで、
アセトアミノフェンの使用が推測されているだけなので、
実際に胎児がどの程度薬剤の影響を受けているのかについては、
確実であるとは言えませんでした。

今回の研究はアメリカにおいて、
996名の母親と子供のペアを対象とし、
出産時の臍帯血における、
アセトアミノフェンの代謝物の濃度と、
その後の自閉症やADHDの発症リスクとの関連を検証しています。

その結果、
アセトアミノフェンの臍帯血濃度を3分割すると、
最も少ない濃度と比較して、
最も多い濃度ではADHDと診断されるリスクは、
2.86倍(95%CI: 1.77から4.67)有意に増加していました。
自閉症スペクトラム障害についても、
同様に3.62倍(95%CI: 1.62から8.60)、
アセトアミノフェンのが代謝物が最も多い群で有意に増加していました。
2つの病気とも、
アセトアミノフェンの曝露量が多いほど、
そのリスクが増加するという関係が見られたのです。

今回のデータは薬剤の曝露量を、
臍帯血で確認している分信頼性の高いもので、
今後妊娠中のアセトアミノフェンの使用については、
その量を含め適切な使用のガイドライン作りが急務であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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