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心筋梗塞の危険因子の性差(UKバイオバンクの解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
急性心筋梗塞リスクの性差.jpg
2018年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
心筋梗塞のリスクの性差についての論文です。

多くの病気には性差、
すなわち性別によるその発症リスクの差が存在しています。
たとえばバセドウ病や橋本病などの甲状腺疾患は、
女性に多い病気として知られています。

心血管疾患の代表的病気の1つである心筋梗塞は、
年齢が50歳代より若い場合には、
女性より男性に多いことが知られています。
ただ、年齢が60歳以上になると、
男女差はあまり明確ではなくなります。

上記文献にある欧米のデータでは、
30から64歳では4から5倍男性に多く、
65から89歳ではそれが2倍程度に縮まると記載されています。

ただ、高血圧などの個々のリスク因子と、
心筋梗塞の性差との間に関連については、
まだあまり明確なことが分かっていません。

そうした点を検証する目的で、今回の研究では、
イギリスのUKバイオバンクという、
世界的に有名な医療情報のデータベースを活用して、
47万人を超える対象者の、
その後の心筋梗塞の新規発症と、
そのリスク因子の性差との関連を検証しています。

その結果、
平均で7年を超える経過観察期間中に、
5081名が心筋梗塞を発症し、女性はそのうちの28.8%でした。
その罹患率は女性では年間1万人当り7.76人で、
男性では24.35人でした。

一般的な心筋梗塞のリスク因子のうち、
高血圧、喫煙、肥満、糖尿病は、
男女ともにその発症と関連していましたが、
年齢が高くなるほどその影響は小さくなっていました。

女性においては、
収縮期血圧の上昇と高血圧、
喫煙と糖尿病は、
いずれも男性より大きな影響を、
その発症に与えていました。

つまり、心筋梗塞は女性より男性に多く発症することは、
間違いがありませんが、
高血圧と喫煙、そして糖尿病というリスクが、
その発症に与える影響は、
実は男性より女性の方が大きいということが分かったのです。

この結果は従来のデータと異なる部分があり、
生活改善の効果について、
男女で異なる可能性があるという知見は、
今後の患者指導などの変更に繋がるものになるかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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