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脳卒中は生活改善でどれだけ予防出来るのか?(UKバイオバンクの解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談などに都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
脳卒中と生活習慣.jpg
2018年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
脳卒中の遺伝的リスクと環境要因との関連を検証した論文です。

脳卒中のような心血管疾患は、
遺伝的な体質と生活習慣などの環境要因が、
複合的に関係して発症すると考えられています。

遺伝的な部分については大規模なゲノム解析により、
90種類くらいの1塩基変異が、
脳卒中の発症リスクと関連している、
ということが分かっています。

また、喫煙や高血圧、食事や運動などの生活習慣が、
脳卒中のリスクと一定の関連のあることが、
これも多くの疫学データからほぼ明らかになっています。

それでは、
この遺伝的な体質のリスクと、
生活習慣や治療などで改善可能な因子との間には、
どのような関係があるのでしょうか?

たとえば、禁煙によるその後の影響にも、
遺伝的な素因のあるなしで違いがあるのでしょうか?

そうした点についての疫学的な検証は、
これまであまり行われていませんでした。

そこで今回の研究では、
イギリスの大規模な臨床データとして有名な、
UKバイオバンクの医療データを活用して、
この問題の検証を行っています。

対象は登録時に40から73歳の306473名で、
脳卒中の発症に関連する90種類の点遺伝子多型(SNP)を解析して、
遺伝的な高リスクと低リスクをランク付けし、
健康な生活習慣としては、
非喫煙、健康な食事、運動習慣、体重の適正管理の4つを、
これも良好な生活習慣と、不良な生活習慣にランク付けして、
脳卒中の発症との関連を比較しています。

中間値で7.1年の観察期間中に、
2077件の脳卒中(虚血性梗塞1541件、脳内出血287件、くも膜下出血249件)
が発症していて、
遺伝的なリスクを3分割した時に、
低リスクと比較して高リスク群では、
脳卒中の発症リスクは35%(95%CI:1.21から1.50)
有意に増加していました。
また、好ましい生活習慣を3から4つ維持している群と比較して、
0から1つしか実践していない群では、
脳卒中の発症リスクは66%(95%Ci: 1.45から1.89)
こちらも有意に増加していました。
そして、この遺伝的リスクと生活習慣の差によるリスクは、
互いに関連はなく独立したリスクであることも確認されました。

つまり、生活改善による脳卒中の予防効果は、
その人の遺伝的な素因に関わらず、
同じように有効である、
ということになります。

今後は遺伝的なリスク因子を調整することも、
不可能ではなくなるかも知れませんが、
現状はその効果の確実な4つの生活習慣について、
改善するのが脳卒中予防のためには、
最善の道であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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ピストン

脳卒中予防には生活習慣が大きく影響しているのですね。
退院しても今までの習慣を急に改善できなかったり、または、極端に気にしすぎる生活になってしまった人もいました。過度のストレスにならないように適度に健康的な生活を送っていきたいものです。
勉強になります。ありがとうございました。
by ピストン (2018-11-15 10:50) 

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