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ビタミンCの風邪予防効果(風邪予防のエビデンス①) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
風邪の予防のエビデンス.jpg
今年のJournal of Evidence-Based Complementary & Alternative Medicine誌に掲載された、
風邪の予防に使用されるサプリメントなどの効果を、
まとめて解析した総説の論文です。

やや代替医療やサプリメントに傾斜した内容なのですが、
文献の引用やまとめなどは、
しっかりされていると思います。

ここから、
数回に分けて風邪予防のエビデンスを考えます。

今日はよく議論になるビタミンCについての風邪予防効果です。

ビタミンCが風邪予防に効果的だというのは、
理論物理学者で分子生物学者のノーベル賞受賞者ポーリング博士が、
1970年代に広めたものです。
その代表的な文献の1つがこちらです。
ポーリング博士のビタミンC.jpg
1971年のProc. Nat. Acad. Sci. USA誌の論文ですが、
それまでの4つの偽薬を使用した介入試験の結果をまとめ、
ビタミンCが風邪に無効という命題が、
統計的に否定されるという手法で、
その効果を証明したものです。

ビタミンCの効果については、
1日1000㎎の継続的な使用により、
風邪の発症は45%予防され、
その罹患率は63%低下したとされています。

この時点での科学的な検証としては、
これは決しておかしなものではないのですが、
引用されている介入試験は、
プロのスキーヤーを対象としたもの以外は、
例数も少なく、
内容も不充分であったことは確かです。

その後多くの介入試験がより大規模に行われました。

それをまとめて検証したのがコクランレビューで、
2013年にアップデートされたものがよく引用されています。

それによると、
1日200㎎以上のビタミンCを継続的に使用することにより、
偽薬と比較して、
風邪の罹患率は3%低下する傾向を示しました。
(95%CI; 0.94から1.00)
これは要するにほぼ効果はないという結果です。
ただ、マラソンランナーやスキーヤーなどを対象としたデータに限ると、
風邪の罹患率は52%有意に低下していました。
(95%Ci; 0.35から0.64)
つまり、こうした対象群にはかなりの有効性がある、
ということが分かります。

またビタミンCの常時摂取により、
風邪の症状の持続期間は成人では8%短縮し
(95%CI;0.88から0.97)、
小児では14%有意に短縮しています。
(95%CI;0.79から0.93)
特に小児で1日1000㎎から2000㎎という大量を摂取したケースでは、
その持続期間は18%の短縮を認め、
重症度も低下しています。
(95%Ci; 0.70から0.93)

ただ、風邪になってからの治療目的での使用については、
はっきり有効という結果になってはいません。
中には1日4000㎎の使用と比較して、
8000㎎の使用で風邪の期間と重症度が有意に短縮した、
というような報告もあるのですが、
量も大量でかなり特殊な結果です。

ただ、短期効果を期待するには、
かなり大量を使用しないと意味がない、
ということはあるのかも知れません。

ではこちらをご覧下さい。
風邪予防の指針.jpg
最初の文献に引用されている、
2011年の風邪予防のレビューです。

これは2011年のコクランレビューを主なネタ元にしているのですが、
基本的には2013年のものと違いはありません。
若干数字が変わっていますが、
結論は同じです。

子供の風邪罹病期間短縮効果は、
平均の風邪症状が7から10日持続するとすると、
それを1.5から2日短縮する効果があるとしています。

仮にビタミンCに風邪予防効果があるとして、
そのメカニズムはどうなのか、
ということになりますが、
これまでの知見で言われていることは、
ビタミンCの持つ抗酸化作用が、
免疫の活性化に繋がっているのではないか、
と言う点と、
好中球や単球といった白血球の、
機能を高めるのではないか、
と言う点が報告はされています。

以上をまとめると、
ビタミンCによる風邪の予防効果とされるものは、
少なくとも最初にポーリング博士が言われていたほどには、
効果のないことは確かですが、
かと言って、
一部の方が声高に言われているように、
「全く役に立たない」
というのも言い過ぎという気がします。

治療効果としては、
あまり有効でないことは間違いがありませんが、
継続的にビタミンCを摂ることにより、
風邪に少しかかりにくくなり、
かかっても軽く済む、
という点には一定の期待が持てます。
この場合の使用量は、
200㎎以下では意味がなく、
概ね1000㎎の摂取が妥当と考えられます。

安全に使用が継続出来るビタミンCの量がどのくらいかというのは、
これも明確な結論が出ていませんが、
確実に悪いとされるのは10000㎎以上ですから、
かなりの安全域があることは事実です。
ただ、なりやすい体質の人は尿路結石になったり、
下痢をしたりすることはありますから、
このくらいが妥当ではないかと思います。

その使用効果は特に小児と、
カナダのウインタースポーツをされている方で、
高いという報告があるのですが、
それが明確に意味のあることかどうかは、
何とも言えません。
スポーツや軍隊など、
心身のストレスに強くさらされている状況では、
より抗酸化物質の必要性が高まる、
という推測は可能ですが、
それが証明されている訳ではありません。

毎日の摂取にメリットがあるかどうかも微妙ですが、
寒い時期で風邪を引きたくないと思われる方は、
そうした時期のみビタミンCを継続することは、
悪くない判断のように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コメント 3

Kenrin

いつも興味深く拝見させていただいております。御著書も2冊、拝読させていただきました。昨年の暮、突如心臓病(僧帽弁閉鎖不全)を指摘され、手術を受けることになりました。先生がもし、手術を受けるとしたら、開胸、MICSどちらを選ばれますか?お教えいただければ幸いです。
by Kenrin (2017-01-13 22:49) 

fujiki

kenrinさんへ
基本的には適応があるという判断であれば、
低侵襲のMICSの方が良いと思いますが、
実績のある施設を選ばれた方が良いかも知れません。

by fujiki (2017-01-14 06:29) 

Kenrin

貴重なご意見、ありがとうございます。
by Kenrin (2017-01-14 14:18) 

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