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喘息のお子さんに対する解熱剤の安全性について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

台風が関東上陸とのことで、
朝から雨風が強くなっています。
受診予定の方は充分お気を付け下さい。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
エセトアミノフェンの喘息に対する安全性.jpg
今月のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
小児の発熱ではもっぱら使用される、
アセトアミノフェンという解熱鎮痛剤の安全性についての論文です。

乳幼児期のお子さんの発熱に対しては、
原則として一切解熱剤は使用しない、
という意見と、
アセトアミノフェンであればつらい症状の緩和に、
適切に使用するのは問題はない、
という意見があります。

アセトアミノフェンの安全性は、
概ね問題はないものと考えられていました。

しかし、2000年のThroax誌に、
アセトアミノフェンの安全生に、
警鐘を鳴らすような論文が掲載されました。
それがこちらです。
アセトアミノフェンによる喘息への影響.jpg
これは成人でアセトアミノフェンを頻回に使用していると、
そうでない人より喘息の患者や蓄膿の患者が多く、
かつ喘息の急性増悪などの頻度も、
アセトアミノフェンの頻回使用者で有意に多かった、
という結果になっています。
ケースコントロール研究という手法による臨床データの解析です。

気道に分布するグルタチオンという抗酸化物質があり、
アセトアミノフェンはそれを枯渇させる作用があるので、
その影響により気道の炎症が誘発されたのではないか、
というのがこの論文の著者らの見解でした。

その後観察研究において、
小児の喘息患者さんでも、
同様の喘息の悪化が認められるという報告があり、
喘息のお子さんへのアセトアミノフェンの使用は、
慎重に考えるべきという流れになりました。

ただ、ランダム化比較試験のような厳密な試験は、
これまで行われたことはないので、
こうした結果は確定的なものとまでは言えませんでした。

今回の研究では、
比較的軽症の気管支喘息のお子さんに対して、
発熱などの時に、
アセトアミノフェンを使用する場合と、
イブプロフェンを使用する場合を、
くじ引きで分け、
薬の違いが喘息の予後に与える影響を、
48週間に渡って観察しています。

対象は生後12から59ヶ月の軽症持続型の喘息の患者さん、
トータル300名で、
18箇所のアメリカの医療機関で登録されています。
本人家族や主治医にも分からないように、
発熱や疼痛時の頓用の処方として、
くじ引きで選択された一方ではアセトアミノフェンを、
もう一方はイブプロフェンを、
ほぼ同等の効果の得られる使用量で使用し、
観察期間中の喘息の急性増悪の頻度を比較します。

その結果…

トータルな頓服薬の使用回数の中央値は5.5回で、
両群で差はなく、
観察期間中の全身的にステロイドを使用するような喘息の悪化回数は、
アセトアミノフェン群で平均0.81回、
イブプロフェン群で平均0.87回と、
全く差は認めませんでした。

つまり、適切な範囲の使用であれば、
4年程度の観察期間において、
イブプロフェンの使用とアセトアミノフェンの使用との間に、
喘息の悪化の差はなく、
この試験では未治療(偽薬)という群は設定されていませんが、
その喘息増悪の頻度は、
これまでの同様の臨床試験での結果と差はなく、
明らかにアセトアミノフェンが、
喘息の経過に影響を与える、
という根拠は認められませんでした。

今回の研究はかなり限定的なもので、
これをもってアセトアミノフェンが安全、
というように言い切れるものではありませんが、
適切な範囲の対処療法としては、
特にアセトアミノフェンを特別視したり、
喘息の患者さんだからと言って、
その使用を控えるような必要性は、
現時点ではないように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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